インバウンド戦略の定説は本当か? リピーターと地方滞在の実態、今後の打ち手がわかる最新レポートを解説(PR)

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訪日客数が4000万人の大台に達し、新たなフェーズに入ったインバウンド市場。国が掲げる2030年の大目標「訪日客数6000万人・観光消費額15兆円」に向けて、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの平林知高氏は「今後も本当に盤石な市場なのか、検証する必要がある」と、警鐘を鳴らす。

平林氏は、観光庁の「インバウンド消費動向調査」の個票データをベースに多角的に分析。最新レポート「持続可能なインバウンド市場の構築に向けて~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~」を発表した。

インバウンドが国や地域に貢献する持続可能な市場となるために、地域や事業者がすべきことは何か。クロス分析で捉えた実態と、持つべき戦略的な視点を聞いた。

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マクロの数字に潜む構造的リスク

平林氏が今回のレポートを作成した背景には、今後のインバウンド市場の成長に向け、3つの大きな問題意識があった。「リピート化と地方分散の実態」「訪日観光消費と為替の影響」「統計・調査手法のあり方」だ。「訪日客数が4000万人を超え、『観光立国推進基本計画』が更新された今こそ、実態を把握し、今後もこの市場を維持できるのか、検証が必要だ」と、平林氏は説明する。

新たな観光立国推進基本計画では、2030年の目標に、リピーター4000万人の獲得と地方部での宿泊1.3億人泊が追加された。6000万人達成時のリピーター割合は65%強になる計算だ。すでに2025年のリピーター比率は約65%に達しており、この比率を維持して6000万人へと拡大できれば、目標は達成される。

ただし、リピート化は対人ビジネスの施策として一般的だが、訪日旅行は移動距離やコストの面で前提が異なる。また、地方分散は従来から重要テーマであるが、十分に進んでいないのが現状だ。平林氏は「リピート化を推進すれば、本当に地方分散や消費拡大につながるのか」と疑問を投げかける。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング ストラテジックインパクトパートナー 平林知高氏また、訪日旅行者の観光消費額も2025年に9兆円超(2024年比15.8%増)となり、着実に増加しているかに見えるが、平林氏は円安による押し上げ効果を指摘。「訪日客の実際のお金の使い方を確認すべき」と話す。国内企業が適正とする為替レートの中央値は1ドル約135円(東京商工リサーチ調べ)で、2025年の平均レート(1ドル約150円)とは15円の開きがある。平林氏は、為替レートが適正レートの水準に戻った場合、単純計算で約9500億円分のインバウンド消費が消失すると試算する。

勢いのある表面の数字だけでは、実態を見誤る。好況の背景にある市場構造を把握することが、これからのインバウンド戦略には不可欠だ。

訪日客の消費額。全体では伸びているのに、現地通貨建てで一人当たりの消費単価を見ると微増~低下で推移している

戦略に必要な「市場ポートフォリオ」の視点

では、どのように市場構造を把握し、戦略を立てるべきか。平林氏が推奨するのは、市場を細分化して捉える市場ポートフォリオの視点だ。レポートでは、日本への訪問回数を基盤に、国・地域や年齢、消費額をかけあわせたミクロ分析によって、各市場の意外な実像が浮き彫りになる。

例えば、「リピート化が地方分散につながる」という通説については、今回の調査でも全体的にはその傾向が見られた。しかし、データを市場ごとに深掘りすると、成熟した東アジアの3国・地域(韓国・台湾・香港)では、訪問回数に応じて地方訪問率が向上するものの、東南アジアや欧米豪では初訪問時と2回目以降の地方訪問率に大きな違いがない。

ただし、欧米豪はリピーターほど地方部での平均宿泊数が長く、4回目以降の訪問では、豪州や英国は5泊強。フランスは9泊強で、三大都市圏と同規模の泊数まで拡大する。さらに消費額でみると、英国は訪問回数が増えるほど高額になり、高級な宿泊施設を好む傾向が見て取れる。一方のフランスは4回目以降の消費額は減少。宿泊はエコノミーに抑えて「娯楽等サービス費用」を増やし、タビナカ体験を重視している。欧米豪とひとくくりにしがちな市場でも、これだけ違いが見えてくる。

さらに平林氏は、新たな訪日客を生み出す初訪問者の比率も重視する。東アジアでは、中国が4割弱の初訪問率を維持しているが、韓国、台湾、香港は1割前後まで落ち込む。初めての訪問者が減れば、将来的に市場が縮小に向かうのは確実だ。現在は、アニメなどのソフトパワーで若年層のリピーターを引き付けているが、中国が国家戦略で訪中インバウンドを強化し、韓国へのビザ免除を打ち出している中、アジア域内での競争を意識する必要がある。

一方、地方での滞在が期待される欧米豪だが、年齢層は初訪問でも50代以上のシニア層が中心だ。今の主要客層の高齢化を見据えたアクティビティの拡充とともに、若い世代へのアプローチの設計が求められる。

平林氏は「国籍や回数、年齢層によって、ポテンシャルが変わる。地域や事業者のアセットに応じ、国・地域ごとではなく、ミクロ視点でターゲットに刺さる施策を考えなければ、取り組みは空振りする」と指摘。さらに「欧米豪は重要だが、最大かつ、地政学的にも重要な東アジア市場を捉えなければ、6000万人達成に向けて厳しくなる」と危機感を示す。

東アジアの来訪回数別の年齢構成。リピーターに30代以下の比較的若い層も多いが、持続させるには“新陳代謝”が不可欠⇒最新レポートをダウンロード(EY Japanサイトへ)

地域のアセットの見極めと、宿泊を核としたエリア連携

では、レポートで示された市場分析を踏まえ、地域や事業者はどのように戦略や施策に落とし込んでいけばよいか。平林氏は、2つの具体的なアプローチを提言する。共通するのは、単なる“誘致”から、自分たちの地域に来て、どう消費してもらうかという“観光地経営”への転換だ。

ひとつは、自地域や自社のアセットを見極め、独自の価値を演出すること。平林氏は、体験商品の開発(コト消費)に注力する地域が多いことから、日本政府観光局(JNTO)が特定テーマ旅行に設定した「ガストロノミーツーリズム」を例に、こうアドバイスする。

「地元のモノをオリジナルな価値として演出することが大切。地域の特性にあうターゲットを見定め、単に食事を提供するのではなく、食器や工芸品など食事にまつわる文化を含めて持ち帰ってもらう取り組みが、正しい方向性だ。そうすることで、わざわざ足を延ばして体験したくなる、唯一無二の商品になる」。

もうひとつは、エリア連携による誘致だ。観光消費を拡大する最大の要素は滞在時間を増やす「宿泊」だが、物理的に宿泊機能が弱い地域はある。

「そうであるならば、近隣の宿泊エリアと連動し、消費額を高めるアライアンスを組む。デスティネーションは単一の市町村や事業者では回らない。エリア的な発想でそれぞれの価値をいかし、経済効果を生む形を作ることが地方分散にもつながる」と説明する。

ひとくくりにしがちの欧米豪だが、国ごとに見ると違いが鮮明⇒最新レポートをダウンロード(EY Japanサイトへ)

カギはマーケティングの高度化

インバウンド市場が持続的に成長し、地域がその恩恵を受けるためには「マーケティングの高度化が不可欠」と平林氏はいう。

属性分析やペルソナ設定などは一般的になってきたが、6000万人への拡大とその先の持続的な成長を見据えるフェーズでは、さらに解像度を上げたアプローチが必要だ。そのためにも「データ整備は過渡期を迎えつつある」と平林氏は話す。

観光庁が、個々の訪日客にアンケートベースで実施してきた「インバウンド消費動向調査」について、平林氏は「市場の立ち上がり期には有意義だが、人間の曖昧な記憶に頼る調査手法だけでは、高度な戦略立案のデータとして限界がある」と指摘する。海外の先進DMOでは、クレジットカードの決済データをトランザクションベースで把握して施策にいかす取り組みが始まっていることも紹介し、「日本も詳細な分析が可能な統計・調査へのシフトが不可欠」との考えを示す。

6000万人に向かい、持続可能なインバウンド市場を構築するためには、戦略の指標となる統計・調査も新たなフェーズに転換するタイミングにある逆に、こうしたデータがなく、マーケティングの高度化ができなければ、訪日客が増えても地域に不利益が生じかねない。「オーバーツーリズムといわれる現象は、マーケティングの失敗」というのが、平林氏の持論だ。データで市場を捉え、施策をチューニングしていくことが、健全な観光の成長に欠かせない。平林氏は「レポートの分析結果は、すでに過去のもの。現在の姿ではないことも忘れてはならない」と付け加える。

平林氏のレポートは、持続可能な観光市場の構築に向け、多角的に市場の実態を読み解いた、いわばこれからの観光経営の羅針盤だ。地域の“宝”を見い出し、持続的な経済価値へと転換していく材料として、また、現在地を客観的に見つめ、戦略をチューニングする材料としても、ぜひダウンロードして活用してほしい。

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最新レポート:「持続可能なインバウンド市場の構築に向けて~地方分散、リピート化の視点から何をすべきかを考える~」

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記事:トラベルボイス企画部

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