日本人旅行者のハワイへの旅行需要は回復基調を維持しながらも、円安や旅行価格の高騰を背景に、シニア層や富裕層を中心に動き、旅行形態も多様化が進んでいる。こうした環境下で、ハワイ州観光局(HTJ)は、2026年4月17、18日に現地でBtoB商談会「ジャパン・サミット(Japan Summit)2026」を開催した。日本市場の最新動向と今後の誘客戦略、同イベントへの期待について、ハワイ現地でHTJ代表の寺本竜太氏、局長の稲田正彦氏に聞いた。
※冒頭写真:視察ツアーでは、「ホクレア」を紹介するドキュメンタリー映画の上映会もおこなわれた。会場となったロイヤル・ハワイアン・センターで挨拶する稲田氏。
需要は堅調、シルバーウィークなど予約好調
日本からハワイへの旅行需要は、緩やかながらも着実に回復している。ハワイ州観光局本局(HTA)の統計によると、2025年の日本人渡航者数は73万1922人で、2024年の70万8233人から3.3%増加した。2026年1~2月では、消費総額が前年比3.8%増の1億5715万ドル、来訪者数も6.6%増の10万9108人といずれもプラス成長が続いている。
さらに、今年のゴールデンウィーク、9月のシルバーウィーク、年末年始の予約は、旅行会社や航空会社の早割などの販売が功を奏して好調に推移しているという。教育旅行や団体旅行も夏に向けて堅調に推移。中東情勢を受けて、安心・安全の観点から行き先を中東や欧州からハワイに変更する団体も発生している。
こうした動向を受けて、寺本氏は、「日本マーケットは、年々伸びている」と評価。2026年の見通しについては、前年比2.6%増の年間75万人を予測している。
ジャパン・サミットの意義、BtoBの価値再認識
2016年の開始以来、9回目となったジャパン・サミット。今年もハワイ旅行の促進に向けて、初日には現地サプライヤーと日本の旅行会社が商談会、2日目にはハワイの文化・歴史をテーマとした視察ツアーがおこなわれた。日本からは大手旅行会社をはじめ、OTAやウエディング企業など約19社100名が参加。現地からは約82社170名がホノルルの会場に集まった。商談会では、新たな旅行商品の造成と販売強化に向けて、活発な商談や交流、情報交換がおこなわれた。
ジャパン・サミットの商談会の様子。旅行会社がブースを構え、サプライヤーが訪問する形式
ジャパン・サミットの商談会の様子。時間ギリギリまで活発な商談が繰り広げられた
近年、日本人のハワイへの旅行は、個人旅行化が急速に進んでいる。しかし、稲田局長は、旅行会社の役割、ジャパン・サミットのようなBtoBの場の重要性は変わらないと話す。「旅行会社は、アクセルを踏める存在。商品造成や販売の仕掛けを一気に広げられる」と語り、その重要性を指摘する。
そして、日本人の海外旅行にとって、「ハワイは、“海外旅行の一丁目一番地”といわれる存在だ」と語り、日本の海外旅行市場が低迷する今、ハワイを起点に回復の流れをつくる意義を強調した。
ハワイの旅行者全体に占める日本人のシェアは、米国内市場に続く2位。日本人旅行者の総数は、コロナ前の約半数となっているものの、外国人市場ではトップだ。国際線直行便の到着者数でみると、2026年3月は全体15万2307人のうち日本発が9万4483人と62%を占める。また、現地にとって日本人が「上質な旅行者」であるという評価は変わっていない。
HTJでは、ジャパン・サミットを現地で継続しておこなう意義は大きいと考えている。日本の旅行会社や航空会社がハワイに対する投資を継続的におこなっていることへのコミットメントにハワイ側として応える意味がある。さらに、「日本に行く機会が少ないサプライヤーにとって、一堂に会して商談できる意味は大きい(稲田局長)」と、双方向の価値創出の場であることを説明した。
なお、ハワイ州では、近年、観光客・地域・自然が相互にポジティブに影響しあう再生型観光(Regenerative Tourism)を促進しているが、HTJでは多くの日本の旅行関係者がハワイを訪れていることをラジオなどでアピールしているという。地域住民に観光の重要性を理解してもらうための活動だ。
局長の稲田正彦氏(左)とHTJ代表の寺本竜太氏(右)
シニア・富裕層を軸に、新たな需要創出へ
HTJでは、今夏に向けて日本市場向けにシニア層をフックとしたプロモーションを展開していく方針だ。円安の影響で、「現在、動いているのはシニア層や富裕層が中心。今、一番動いている層に合わせてプロモーションを展開し、その層を起点に他の層にも広げていく(寺本氏)」。三世代旅行や富裕層ファミリーなど、次世代のリピーター創出につながることも視野に入れている。
このプロモーションは旅行会社と連携し、シニア向け商品の造成・販売と同時に展開し、業界一丸となって「観光局の独りよがりではない、同じベクトルで展開していく(寺本氏)」という。
また、教育旅行にも注力する。ハワイは地質学、天文学、多文化共生など学びのテーマが多く、修学旅行や研修旅行など教育旅行の拡大を目指す。寺本氏は「ハワイに触れることで、最終的に留学につながる人が増えれば州としてのKPIにも合致する」とし、長期的な人材交流の視点も示した。ほかにも、パワーカップルやリピーター、フラダンスの愛好家など、従来からのターゲット層にも積極的にプロモーションを展開していく。
夕食会では、ハワイ州観光局本局(HTA)のキャロライン・アンダーソン暫定局長が挨拶。プロモーションが「シニア層にあらためてハワイの魅力を再発見してもらうことを目的としている」と述べ、今回のサミットとも連動した戦略であることに言及
2027年のホクレアの日本寄港に向けて
今回のジャパン・サミットで、ハワイの伝統文化を象徴する存在として、HTJが日本の旅行会社にアピールしたのが伝統航海カヌー「ホクレア」。ホクレアは、コンパスやエンジンといった近代的な航海機器を一切使わず、星や風、波の動きなど自然の要素だけを頼りに航海する双胴カヌーだ。
1975年に建造されたホクレアは、ハワイ文化復興の象徴として誕生し、祖先が継承してきた航海術を再現することで、失われかけた文化とアイデンティティを取り戻す役割を担ってきた。1976年には伝統航海術によるタヒチ航海を成功させ、その後も数々の航海を通じて文化継承の象徴となっている。
視察では、ホクレア初航海50周年にちなんだ特別プログラムを体験。ハワイシンフォニーオーケストラのコンサートを鑑賞した
2007年には日本にも寄港し、ハワイと日本の歴史的なつながりや移民の記憶を再確認する機会となった。さらに、現在、環太平洋航海を続けており、2027年には再び日本寄港が予定されている。複数の寄港が予定されており、その港は夏前に決定し発表される予定だ。
視察ツアーでは、ホクレアのドキュメンタリー映画の上映や実際のクルーによる解説、ワークショップを通じて、ホクレアを軸にハワイ文化の本質に触れた。 HTJは、業界内での理解を促進することで、2027年のホクレアの日本寄港時に日本/ハワイの人的交流を活性化する企画につなげたい考えだ。また、ホクレアの活動が示す「自然との共生」や「文化継承」といった価値は、ハワイが掲げる再生型観光の考え方とも重なり、日本の旅行会社のスタッフにそのメッセージを発信する機会ともなった。
ビショップミュージアムのプラネタリウムでは、ホクレア日本人クルーの内野加奈子氏(左)とタミコ・ファネリアス氏(右) が解説




