英トーマス・クック破綻、その後の顛末を追ってみた、ブランド買収から航空事業・店舗・ホテルの行方まで【外電】

フランス・パリのトーマス・クック店舗(AP通信)

帝国が崩壊すると、その”おこぼれ”を拾おうとする人たちが集まるのは世の常だ。2019年9月に破綻したトーマス・クックも同じこと。ライバル企業にとっては、トーマス・クックが何十年にもわたって蓄えてきた資産を手に入れる千載一遇のチャンスにもなっている。

トーマス・クックはもう存在しないが、長い時間をかけて築いてきたブランドは、それぞれ新しい「家」を見つけようとしている。ヨーロッパの旅行会社、あるいは遠く離れた場所にある旅行会社でさえ、有利な立場を得ようと競い合っているのが現状だ。

以下は、これまでに新しく決まった取得先の内訳だ。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

トーマス・クック(ブランド名)

トーマス・クックが破綻しても、そのブランド力は健在。トーマス・クックの株主で支援入札の失敗でも中心的な存在となった中国の復星観光グループは、旧トーマス・クックのホテルブランド「Casa Cook」と「Cook’s Club」とともにトーマス・クックのブランド名を1440億米ドルで購入することを決めた。

実はこの額は、トーマス・クックを存続させるために必要だった額よりも少ない。復星は、同社のFolidayエコシステムの中にトーマス・クック・ブランドを取り入れる計画。復星観光グループ会長のQian Jiannong氏は「この買収に合わせて、さらに事業を拡大させる。新たに手に入れたトーマス・クック・ブランドは、現在のビジネスと相乗効果を生み出すだろう」と語っている。

しかし、復星はすべてのトーマス・クック・ブランドを手に入れることはできなさそうだ。トーマス・クック・グループの傘下ながら独立した経営を行ってきたトーマス・クック・インディアは、トーマス・クック・ブランドを200万米ドルで買収し、インド、スリランカ、モーリシャスでそのビジネスを展開すると発表した。

同社によると、トーマス・クックのブランド名を使用することで、3カ国への新たな参入者を防ぐのが目的だという。狙いは言うまでもなく復星だ。

トーマス・クック・ノーザン・ヨーロッパや Ving はノルディック・レジャー・トラベル・グループに

2019年10月、ノルディック・チョイス・ホテルのオーナーは、投資会社2社とともに、トーマス・クック・ノーザン・ヨーロッパを唐突に買収した。買収額は公表されていない。

この買収には、現地ツアーオペレーターのVing(ノルウェーとスウェーデン)、Globetrotter(スウェーデン)、Spies(デンマーク)、Tjäreborg(フィンランド)、さらに前トーマス・クック・エアラインズ・スカンジナビアのサンクラス・エアラインズが含まれるほか、ホテルブランドのSunwing Family ResortsとSunprime Hotels も加わる。

北欧でのトーマス・クックは、2007年にMyTravelによって買収されて以降、自己完結型の事業を展開し、本家のトーマス・クックとは区別されていた。また、定期便を中心に運航されていたトーマス・クック・グループの他の航空会社とは異なり、トーマス・クック・エアラインズ・スカンジナビアは主に、ツアーオペレーターの顧客向けにチャーター便を運航していた。

コンドル航空

トーマス・クックの破綻後も生き残ったビッグブランドのひとつがドイツのコンドル航空。破綻後、同航空は、イギリスの本家から所有権を切り離すために、保護手続きと言われるドイツの支払不能法の一部を活用した。

EUがドイツ政府の4億2000万米ドルにおよぶ貸付を承認したことで、同航空は運航を継続。現在、将来の入札者となりうるルフトハンザとともに買い手を探しているところだ。

コンドル航空はすでに、昔のトーマス・クックのハートマーク・ロゴを自社ロゴと取り替えている。

空港の発着枠

ドイツ政府とは異なり、イギリス政府は貸付によるトーマス・クック救済は行わなかった。これにより、イギリスのトーマス・クック・エアラインズはビジネス継続が困難になった。財務報告上、同航空は利益を挙げていたが(そのうちどれくらいを親会社に頼っていたかを推察するのは難しいが)、多くの従業員が失職。労働組合は怒りをあらわにした。

同航空が運航を停止したことで、空港の発着枠に空きが出ることになり、トーマス・クック最大のライバル2社がその獲得に名乗りを上げた。成長著しいJet2もそのひとつ。同航空はマンチェスター空港、バーミンガム空港、スタンステッド空港の発着枠を購入した。購入額は明らかにされていない。一方、近頃自社パッケージツアーブランドを再度立ち上げたイージージェットは、ロンドン・ガトウィック空港とブリストル空港の発着枠獲得のために4700万米ドルを投じた。

旅行会社

イギリスでは、家族経営のHays Travelがトーマス・クック系列の555店舗を引き取るというニュースが注目を浴びた。11月21日時点で、Haysは450店舗を再開。2330人の旧トーマス・クック従業員と永久雇用契約を結んだ。

ヨーロッパの他の場所でも、旧トーマス・クック系代理店を引き取る動きが出ている。トーマス・クックは世界で約2800店舗を展開していた。オンライントラベル全盛の現在でさえ、店舗への関心は薄れていない。

ドイツでは、店舗モデルは今でも信じられないほど人気があり、多くのトーマス・クックの資産が引き継がれた。約4000社の代理店を抱えるRTKグループは、同社Holiday Landのフランチャイズネットワーク拡大のためにトーマス・クックのブランドとシステムを購入。また、RTKは、トーマス・クックから、Alphaグループの株式の50%を引き継ぎ、それを新しいツアーオペレーターパートナーであるSchauinsland Travelに売却した。現在、RTKの筆頭株主はエジプトの大富豪Samih Sawiris氏。

また、ドイツのデパートチェーンのGaleria Karstadt Kaufhofは、106の旧トーマス・クック代理店とECプラットフォームのGolden Gateを引き継いだ。

Anex Tourism Groupは、ツアーオペレーターのBucher Reisenと Öger Toursを手に入れた。トーマス・クックの破綻前、Anex創設者のNeset Kockar氏は、かなりの株式を保有し、自社のビジネス再構築プランにつぎ込もうと目論んでいた。この目論見は失敗するが、結果的にAnexのヨーロッパの旅行産業における役割はより大きくなったようだ。

フランスでは、トーマス・クックの遺産は複数の買い手によって分配された。入札者がコンソーシアムを組むことで、179の入札対象社のうち149社が売却され、地元紙TourMagによると、そのなかにはSalaün Holidays, Karavel-Promovacances、Navitoursが含まれている。

驚くべきことに、トーマス・クックが2008年にクラブメッドから購入したツアーオペレーターJet Toursには買い手が見つからなかった。

ベルギーでは、ツアーオペレーターのWamos GroupがNeckermannブランドの91店舗のうち62店舗を購入。195人の雇用を守った。

その他には?

ドイツでツアーオペレーターとホテル経営を行っているAldianaは、スイスの投資会社LMEY Investmentsがトーマス・クック株式を買い取った後、新しい株主となった。

ドイツのツアーオペレーターDer Touristikは、ドイツ、オーストリア、スイスでは有名なホテルブランドSentidoの経営を引き継いだ。同社CEOのIngo Burmester氏は「我々の目的は、まずSentidoの経営を安定させること。新しいホテルの建設も視野に入れている。関心のあるホテリエに対して、我々のドアはいつでも開いている」とコメントしている。

ハンガリーでは、Gergely Szugyが地元で事業を展開していたNeckermann Magyarorszagを買収。チェコでの事業については、買い手が見つからず、そのまま閉鎖された。

トーマス・クックの最大のライバルではTUIグループは、トーマス・クックのオランダでのブランドNeckermann とVrij Uitを買収。さらに、オランダでのドメインネームと顧客データベースも手に入れた。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:How Thomas Cook’s European Businesses Are Now Divvied Up Among Rivals

著者:Patrick Whyte氏

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