グーグルの「タビナカ」事業がこっそりスタート、その中身とインパクトとは?【外電】

騒々しいファンファーレなど必要ない。生き残れるかどうかの瀬戸際にあるトラベル関連各社が多くある一方、余裕たっぷりのグーグルは、旅行広告に逆風が吹くなかでも、イノベーションと新商品開発が進行中だ。

フライトやホテルに続き、このほどツアー&アクティビティの分野でも新しい広告ビジネスが動き出した。独禁法規制当局の介入がない限り、そのインパクトがもたらす影響力は計り知れない。

現時点では、まだ対象ユーザーを限定した形ではあるが、ビアター、ゲットユアガイド、チケッツなどが手掛けるタビナカ商品の広告がグーグルで始まっている。このテスト段階のレイアウト仕様を見ると、グーグルの検索結果ページの上部に、広告枠のボックスが表示されている。他の有料広告や、通常の検索結果よりも上の位置だ。一度に表示されるのは、ユーザーの検索内容に合ったツアー5本で、それぞれの提供会社名が併記されている。

無期限のコンテンツ利用許諾

以下に示したのは、グーグルが新たに展開する「Things to do(体験できること)」の広告ユニットの一例。ここでは、ドイツのベルリンで体験できることを検索したユーザーに対して、ゲットユアガイドとビアターの様々なツアーが提示されている。ナビゲーションの一部始終は不明だが、最終的にユーザーは、どちらかの予約画面へと誘導される。

ベルリンを対象にした検索例

この記事を執筆しているスキフトの理解では、この広告に参加したい事業者は、グーグルとの間で、長期間のライセンス契約を結び、自社のツアーや体験などのコンテンツをグーグルが利用することを許諾する必要がある。これが難しい場合、同広告枠への参加は不可。グーグル検索から自社ウェブサイトへ誘導できたかもしれないユーザーはあきらめるしかない。

つまり、事業者側の選択肢は2つ。圧倒的な影響力を持つ検索エンジンのページ上位に広告を掲載してもらい、自社サイトへの集客増を図るために、グーグルがコンテンツを使用するのを許可する。あるいは、置いてきぼりをくらうかだ。

全面的なパートナー、それとも補完役?

ツアー&アクティビティ事業者の一部からは、自らの立場について、要は、グーグルが新しくツアー&アクティビティ関連の事業を展開する上での補完役との見方もある。

ユーザーはグーグルによって誘導されて、ビアターやゲットユアガイド他の予約ページにやってくる。利用者にとって使い勝手は悪くない。事業者側にも、見ているだけだった人が予約客になるメリットが期待できる。だが探していた内容が見つからなければ、ユーザーはおそらくグーグルの検索ページまで戻ってしまい、別のオプションを物色するだろう。サプライヤーのサイト内で探し続ける可能性は低い。ナビゲーションの導線が、そのように設計されているからだ。

例えば「アムステルダムで体験できること」を検索した場合、表示される広告ユニットは以下のようになる。その下は、同じ内容を「パリ」で検索した場合のスクリーンショットだ。

アムステルダムを対象にした検索例

パリを対象にした検索例

グーグルが今回、ツアー&アクティビティ分野で導入した表示枠では、同社への広告出稿プラットフォームを競合他社の無料リンクよりも優先して掲載している。まだテスト段階なので、これから変更もあり得るが、前述の事例から分かる通り、グーグルでは、他の有料広告リンクよりも、この新広告枠を優先的に扱っている。

一方、ホテル向けにグーグルが設定したワンボックス枠では、格付けの星、料金、ホテルの画像、地図が併記され、通常の検索結果(旅行各社へのリンクなど)より上に掲載されるが、有料広告よりは下の位置になる。ワンボックスの場合、最初のクリック分は課金されないが、誘導される先には、無料リンクと有料(広告)リンクが入り混じったグーグル支配下の世界が広がっている。

グーグルに今回の「体験」に特化した広告展開についてコメントを求めると、「当社では常に、広告出稿企業とユーザーのために、より有益な手法を探している。ただ現時点では、特に発表できる事案はない」(広報担当者)との回答だった。

10年以上かけて作り上げてきたもの

ツアー&アクティビティ各社は、この分野が一つの事業領域として認められるようになるのを10年以上待っているというが、色々な意味で、すでに確立されている。

トリップアドバイザーがビアターを買収したのは2014年。ソフトバンクは数年前からゲットユアガイドやクルックに投資しており、両社とも、潤沢な資金を獲得した。エアビーアンドビーは「エクスペリエンス」事業を開始。さらに、この分野に特化したカンファレンス・ビジネスを手掛けるアライバル(Arival)も登場した。

しかしグーグルが「体験できること」の検索結果に大きく関与するようになれば、これまでとは格段に違うインパクトが幅広い範囲へ及ぶかもしれない。

独占禁止法に抵触する懸念も

欧州や米国では、主要OTAだけでなく、ツアー&アクティビティ予約サイトからも、グーグルの旅行業における動きに対し、独占禁止法に抵触する疑いが指摘されている。

ドイツ・ベルリンを拠点にバケーションレンタルの価格比較サービスを行っているHomeToGo社は先ごろ、グーグルの独占的なビジネス手法への苦情について、2019年3月時点で欧州委員会に正式に申し立てていたことを明らかにした。

「グーグルは、マーケットから大きなシェアを奪おうとしている。しかも無料で」と同社広報官は話す。「グーグルのやり方は、大規模で注目を集める広告スペースを、自社検索ページの有料枠の下に作り、そこからコストゼロでユーザーを誘導する。何もしなければ、競合他社のサイトへ向かったユーザーも、自社の商品ページへと導く。他の商品はユーザーの目に触れることすらない」。

ドイツの旅行会社から競争侵害を訴えられている件についてグーグルに問い合わせると、「オンラインでの情報収集には、様々な方法が揃うようになり、特に旅行については、専門サイトが数えきれないほどある。例えばトリップアドバイザー、カヤック、エクスペディアなどだ。グーグル検索では、探していたものにぴったりの内容をお届けし、世界中のユーザーの役に立つこと、そして旅行各社のサイトへ顧客を導くことを目標としている」(広報官)との説明があった。

グーグルがバケーションレンタルの検索結果で、優先的に表示するボックス枠と同じように、ツアー&アクティビティ事業者にとって、この新しい広告枠が深刻な懸念材料となることは間違いない。(ちなみにバケーションレンタルの優先表示枠については、まだ有料化していない)

さらにグーグルでは今夏、グーグル・トラベルのページにある「Explore(探索してみよう)」セクションの名称を「Things to do(体験してみよう)」に変更した。新しい呼称の方が、ツアーや現地体験アクティビティ、アトラクション施設、そのほか様々な内容をより的確に表現しているというわけだ。

少々ややこしいのだが、グーグルでは、ツアー&アクティビティ事業者向けの新しい検索広告枠では、出稿企業にクリック課金しているのに対し、この新しいタブ「Things to do」のページは、今のところ情報のみで予約機能はない。

あくまで「今のところ」の話だ。

バケーションレンタルのデザイン刷新

その他の最近のグーグルの動きでは、バケーションレンタルに関する機能が刷新された。これも特に告知などはしていない。2019年3月にバケーションレンタル機能が登場してから最近まで、ユーザーはまずホテルのセクションに入り、そこからバケーションレンタルのページへと切り替える仕組みだった。

つまりバケーションレンタルのページに直行できるタブはなかったのだが、つい最近、デスクトップ用とモバイル用の両方で変更が加えられ、バケーションレンタルのタブが新設された。パンデミック禍で、ホテルではなく、バケーションレンタルを探す人が急増している現状に対応したものだ。

※編集部注1:日本語の「グーグル・トラベル」サービスでは、現在「Things to do」は「観光スポット」、「Vacation Rental」は「民泊」という名称で提供されています。また、本記事で言及している検索結果は対象ユーザーを限定したテスト段階のものです。実際に検索しても同じ検索結果になるとは限りません。

※編集部注2:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Google Quietly Debuts Game-Changing Tours and Activities Advertising Product

著者:デニス・シャール(Dennis Schaal)、Skift

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