LGBTQ+のビジネス渡航をサポートする5つのステップ、対応する出張規定がある世界の企業は9%【外電】

ご存じだろうか? 世界のLGBTQ+の旅行者のうち95%は、業務渡航の際、安全のために自分の性的指向を隠したことがあるという。

こうしたショッキングな統計数字の背景には、一部の国における法律や世論だけでなく、出張する社員に対するサポート体制の不備もありそうだ。LGBTQ+の出張者に対する配慮は、まだ不十分な企業が多い。出張規定の中で、こうした出張者についての規定を定めている企業は、全体のわずか9%にとどまる。

LGBTQ+の旅行者が海外出張で遭遇する悩みは、他の旅行者とは異なる場合もある。同性婚を認めていない国は多い上、LGBTQ+の関係性は犯罪だとする国が70カ国以上もある。多様な人々を理解し、その出張をサポートするために、業務渡航の管理者が考えるべき5段階のステップについて考えてみた。

※LGBTQ+とは、レスビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシャル(B)、トランスジェンダー(T)にクイア(Queer)またはクエスチョニング(Questioning)の頭文字Qを加えた単語。「+」はそれ以外にも多様なセクシュアリティがあることを示唆しており、マイノリティ(性的少数者)を表すだけでなく、自分がLGBTのいずれに当てはまるかわからない人やLGBTに入らない人も含めた表現だ。

1. 出張前にやるべきこと

まず、渡航先の現地事情が完全に把握できるように、最新かつ有用な情報を手元に揃えておこう。

LGBTQ+に対する考え方は、世界各地で大きく異なるため、雇用者側は、様々な場合を想定して、注意義務の規約を整えておく必要がある。

訪問先の法律を確認するのはもちろんだが、状況は複雑であることにも留意しよう。どこの国でも、法律には独特のニュアンスがあり、問題ないと現地で受け止められていることには、同じ国内であっでも地域差が非常に大きいこともある。

シンガポールにように、法律は存在するが実際に適用されることはなく、もはや問題視されていない国がある一方、エジプトのように、ホモセクシュアルを禁じる法律はないが、世間一般の良識を理由に、ゲイの男性が罰せられかねない国もある。

2. 出張の準備

会社の業務目的での出張では、社員一人一人が自分は保護下にあると安心して過ごせることが絶対条件だ。

出張前には、十分な時間的余裕をもって出張者に情報提供し、渡航先で関わりがある現地法について認識を促す。

注意義務を履行するために欠かせないのが、インクルーシブ教育、出張前のアドバイスや問題意識だ。出張中に起きるかもしれない事態とその対処方法、緊急時の連絡先について、出張者本人に教育する。

企業側は、すべての社員を対象に、こうした注意義務について周知徹底する必要がある。なぜなら、誰がLGBTQ+なのか質問することはできないし、こうした情報を開示しない社員がいるかもしれないからだ。

だからこそ、社員の多様性や公平性について、断固たる方針があるかは重要だ。性的指向や性自認に関係なく、すべての出張者に対して注意義務を改善しようと雇用側が動くことができる。

3. 出張中

適切なテクノロジーにアクセスできる状態を確保することで、旅行中いつでも、出張者の現在位置を素早く特定したり、連絡を取ったりできる。

具体的には、位置情報テクノロジーの活用(GPS機能や旅程管理機能など)になるだろう。社員に緊急時の連絡番号を渡したり、直接、メッセージできるツールを提供したりすれば、管理者と出張者が簡単にコミュニケーションできる。

出張者には、チェックインを日常業務の一部として習慣化してもらおう。無事であることが確認できる上、メンタルヘルスなどを含め、より広い意味で、出張者に何か問題が起きていないか把握するのに役立つ。

4. 出張の後で

出張から戻った後も、まだ出張者へのケアは続く。

アンケート調査などで出張後に評価をしてもらい、貴重なデータやフィードバックを集めることは、注意義務の規約内容を精査し、改善するのに役立つ。

人事部とも連携し、何かプライバシーに関する問題があれば対処できるようにする。雇用側が果たすべき社員に対する注意義務は、法律の改正に伴い、常に進化を続けていくものだ。

同様に、社会的評価にも移り変わりがあり、法律とは異なる場合もあるだろう。自社の出張規約を年に一度は見直し、今の法律に抵触していないか、使用している言葉や表現は時代に合った適切なものかチェックしよう。例えば、「彼/彼女」のような性別を限定した言いまわしは避け、別の中立的な表現に置き換えよう。

5. 長期的に取り組む

LGBTQ+の出張者サポートは、広義には、企業のインクルーシブ施策の一環として捉えるべきで、上級管理職の積極的な関与が必要だ。

インクルーシブで誰にでも公平な職場環境は、現代社会にふさわしい先進的な企業であることの証だ。逆に、こうした職場が実現できていないと、才能豊かな人材の獲得や維持には打撃となり、会社の評判にも傷がつきかねない。

LGBTQ+の権利団体、ストーンウォールでは、独自に算出した「職場の公平性インデックス」による英国のトップ100社ランキングを毎年、作成している。このインデックスでは、組織によるインクルーシブな職場作り、公平性に向けた取り組みの発信、LGBTロールモデル育成などの手法を調査している。

もし社員が出張先で、性的指向や自身のアイデンティティを理由に有罪とみなされる事態が起きれば、企業が負う注意義務は、さらに複雑化することになる。

雇用主は、社員一人一人を守るためには何が最善策なのか、その際、どうしたら社員に疎外感を与えることがないか、よく考える必要がある。出張先の国や地域の価値観を尊重しつつ、同時に、出張する社員個人の価値観を犠牲にすることがないよう取り組むことが求められている。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Travel with pride - 5 steps to supporting LGBTQ+ business travelers

著者:スザンヌ・サンジョベーゼ(Suzanne Sangiovese)氏

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