
米商務省旅行観光局(NTTO)のデータによると、大西洋横断路線の航空運賃がパンデミック前の水準まで下落している。米国の国境管理やトランプ大統領の政策をめぐる懸念から、欧州から米国への旅行者が減少していることを示す結果となった。この傾向は、繁忙期である夏休み期間以降も続く可能性がある。
米国商務省国家旅行観光局の暫定データによると、5月の国外から米国への旅行者数は前年同月比2.8%減少。西欧からの旅行者数は4.4%減少。特にデンマークは20%減、ドイツは19%減、フランスは9%減となった。
航空データ分析のOAGによると、今後も予約の減少は続き、7月の米国への旅行予約総数は前年同月比13%減となっているという。
北大西洋路線での需要減退傾向は、エールフランス-KLMやルフトハンザ航空など欧州の航空会社にとって痛手だ。人件費や原油価格の高騰に加えて、アジア発着路線の運航時間やコストが増加している。
航空データ分析シリウムによると、第1四半期の米国発欧州行き50路線以上のエコノミークラス往復航空運賃は前年同期比で平均7%下落。アトランタ/ロンドン線の運賃は55%も下落した。
ルフトハンザ航空のカーステン・シュポアCEOは、夏季の好調な需要の後、第3四半期は需要が弱まると予想。米国の消費者はバーゲンセールを狙い、間際予約が増えていることから、欧州からの需要減少が旅行価格の低下につながっているとの見方もある。エールフランス-KLMのベン・スミスCEOは、大西洋横断路線の需要が「若干減少」しており、座席を埋めるために運賃を大幅に引き下げることを明らかにした。
OTAホッパー(Hopper)によると、今夏、米国発欧州行きの往復航空券の価格は前年比で10%下落。1航空券あたり平均817ドル(約11万8000円)という運賃は、パンデミック前の2019年夏の価格と同水準だ。
ルフトハンザ航空と米国のユナイテッド航空は、欧州行きの米国人旅行者の需要増加が、欧州からの旅行者の減少を相殺していると認めている。ユナイテッド航空は、第1四半期の欧州発の国際線予約が6%減となっている。
デルタ航空の長距離国際線需要の80%が米国発だという。ホッパーによると、5月中旬時点で、今夏、米国から海外への国際便予約は4.3%増加しているという。
※ドル円換算は1ドル145円でトラベルボイス編集部が算出
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。