2026年、ラグジュアリーホテルはどこへ向かうのか? 日本で今年開業する注目の7軒から読む「格式」から「体験」への転換【コラム】

2026年が幕を開けました。ホテル業界にとって、今年は外資系ラグジュアリーブランドが日本の文化や地域性を改めて掘り下げる一年になりそうです。2025年12月に改装オープンした「パーク ハイアット 東京」が象徴するように、ラグジュアリーの潮流は「格式」から「体験」へ、大きく舵を切っています。その流れの中で、この一年に国内で開業を迎える新ホテルは、いずれも“日本らしさの再編集”をテーマに掲げています。

ここでは、まず、2026年開業予定の外資系ホテルの中から、筆者が注目する7件を紹介します。相変わらず欧米ブランドが中心である一方、シンガポール本拠が2ブランド入っていることが出色です(図参照)。そして、後半では2026年のラグジュアリーホテル市場を見通します。

2026年開業予定のホテル

1. カペラ京都 ―花街に息づく文化を世界へ翻訳

シンガポール発のラグジュアリーブランド「カペラホテルズ&リゾーツ」が、日本初進出として京都・宮川町に今春開業します。花街という“生きた文化遺産”の中に佇むこのホテルは、隈研吾氏がデザイン監修を担当。全89室のうち多くがスイート仕様で、一部には温泉を引いた客室も備えます。

カペラの哲学は「文化と人をつなぐ体験」。宿泊客は伝統芸能や茶道の個人セッションなどを通じて、京都の精神文化に触れることができます。欧米ブランドが“日本風”を取り入れるのではなく、アジア発ブランドが“日本文化そのものを共鳴させる”点に、新しい時代のラグジュアリーが見えます。

カペラ京都:ホテル公式サイトより

2. バンヤンツリー芦ノ湖 ―温泉×ウェルネスの新地平

同じくシンガポール資本の「バンヤンツリーグループ」が、芦ノ湖畔に日本初の旗艦ブランド「バンヤンツリー」ブランドで開業します。公式発表では「2026年開業予定」。箱根の自然に抱かれた敷地で、全室ヴィラタイプのプライベート空間とスパトリートメントを融合させます。

バンヤンツリーはアジア圏で「ウェルネスの代名詞」とされるブランドです。温泉文化と東洋的ヒーリングを結びつけ、日本のリゾートを国際的ウェルネスデスティネーションへと引き上げる狙いが感じられます。詳細の発表については、限定的ですが、公式情報は一貫しており、開業が近づくにつれて注目を集めることになるでしょう。

3. コンラッド名古屋 ―中京圏に誕生する都市型ラグジュアリー

ヒルトンの最上位ブランド「コンラッド」が、名古屋・栄地区の複合再開発「中日ビル」内に登場します。約170室の客室に加え、宴会場や屋上バー、スパを備えた都市型のラグジュアリーホテルとなります。

名古屋は東京、大阪に次ぐ大都市圏にもかかわらず、これまで高級外資ブランドの進出が少なかった地域です。ビジネスと観光の双方を取り込むポテンシャルを持つこの地に、国際的なブランドが定着することは、地方都市の宿泊市場に新たな基準をもたらすでしょう。2026年夏の開業を予定しています。

4. ヒルトン高山リゾート ―鉄道と観光をつなぐ新モデル

同じくヒルトングループの新プロジェクトが、岐阜県・飛騨高山に誕生します。JR東海グループと共同開発による「ヒルトン高山リゾート」は、温泉やスパを備えたリゾート型ホテルで、開業は2026年秋を予定しています。

北アルプスの玄関口として、欧米の長期旅行者やインバウンド周遊ルートにおける“中継地”となることを狙います。鉄道事業者との協業により、アクセス・宿泊・観光をワンストップで体験できるのが特徴です。地方創生型ラグジュアリーの新たなテンプレートとして、大きな関心を集めています。

ヒルトン高山リゾート:報道資料より

5. ハイアット セントリック 札幌 ―北海道の新たな拠点型ホテル

ハイアットが展開するライフスタイルブランド「ハイアット セントリック」が、札幌駅北口の複合開発「アーバンネット札幌リンクタワー」内に2026年中の開業を予定しています。

都市の中心でありながら自然や食文化へのアクセスが良い札幌は、四季を通じた観光需要が安定しています。ハイアット セントリックは“街を遊ぶための拠点”というブランドコンセプトのもと、ローカルガストロノミーやアートイベントと連携し、滞在型観光のハブとしての役割を果たす見込みです。

6. ライムリゾート妙高 ―Mギャラリーコレクション ―地方型ウェルネスの新潮流

アコーホテルズ傘下のブティックブランド「Mギャラリーコレクション」が、新潟県妙高市の既存施設「ライムリゾート妙高」をリブランド。公式発表によると、開業は2026年冬を予定しています。

雪国の自然と温泉を生かしたウェルネスリトリートとして、38室の小規模ホテルに生まれ変わります。アコーは地方都市でのブランド展開を加速しており、この妙高は“スモールラグジュアリー×地方再生”という文脈で注目されています。

アコーはまた、長野県「斑尾高原ホテル」も同様にMギャラリーコレクションにリブランドし、2027年に開業予定です。

7. フォーシーズンズホテル丸の内東京 ―ミニマルラグジュアリーの再出発

東京・丸の内のフォーシーズンズホテルは、2026年3月の全面改装による再開業を予定しています。わずか57室の小規模ホテルながら、ラグジュアリーホスピタリティの“密度”を競う存在として再設計されます。

新しいデザインは「アーバンリゾート」を意識し、レストランやスパも刷新。2025年末に改装オープンしたパーク ハイアット 東京と並び、“再生する名門”として注目度が高い案件です。東京のラグジュアリー市場が、量から質へと再編される流れを象徴します。

フォーシーズンズホテル丸の内東京:報道資料より

2026年のラグジュアリーホテル市場を読む

これらの新規・改装案件から見えてくるのは、外資系ブランドが単に「日本へ進出する」のではなく、「日本の文脈を世界に発信する」段階へ入ったということです。

カペラ京都やバンヤンツリー芦ノ湖のように、アジア資本が日本文化を再解釈する動きは、欧米ラグジュアリーにはない柔軟性を示しています。一方で、ヒルトン高山やハイアット セントリック札幌のように、地方都市や新市場に焦点を当てるブランドも増えました。これまで外資が敬遠してきたエリアに、確実な需要が生まれているのです。

また、フォーシーズンズ丸の内のように、既存ホテルの再生も大きなテーマです。パーク ハイアット東京の改装を皮切りに、老舗ブランドが改めて「現代のラグジュアリーとは何か」を問い直す時期に入っています。これは単なるリニューアルではなく、“体験デザイン”の再構築といえるでしょう。

2026年は、日本のホテル市場におけるラグジュアリーの意味がもう一段深まる年になりそうです。

山川清弘(やまかわ きよひろ)

山川清弘(やまかわ きよひろ)

東洋経済新報社編集委員。早稲田大学政治経済学部卒業。東洋経済で記者としてエンタテインメント、放送、銀行、旅行・ホテルなどを担当。「会社四季報」副編集長などを経て、現在は「会社四季報オンライン」編集部。著書に「1泊10万円でも泊まりたい ラグジュアリーホテル 至高の非日常」(東洋経済)、「ホテル御三家」(幻冬舎新書)など。

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