過去の記録を次々更新しながら成長を続ける訪日インバウンド市場。2030年には延べ宿泊者数の35%以上を訪日客が占めるようになるという予測もある。これからの宿泊施設には、国内客が大半を占めていた時代とは異なる施策が必要だ。
どのような視点でインバウンドを獲得する準備を進めればよいのか? 宿泊施設向けITソリューションを国内に留まらず、海外にも積極展開し、世界のホテル流通のトレンドやテクノロジーに精通するトリプラ(tripla)代表取締役CEOの高橋和久氏に、その打ち手と同社の新サービス、プラットフォームの活用法を聞いた。
多通貨決済の重要性、予約の“ラストワンマイル”を万全に
国内の宿泊者数に占める海外からの宿泊客のシェアが拡大するなか、宿泊施設が収益性を確保するためには、自社公式サイトからの予約獲得が欠かせない。
訪日客から予約を獲得する打ち手として、まず、高橋氏があげるのは「多通貨決済」への対応だ。多通貨決済とは、訪日客の自国通貨建てで提示し、決済をできるようにすること。2024年春から、同社が提供している予約エンジン「tripla Book」に、その機能を搭載した。サイト訪問者のIPアドレスやクレジットカードの番号から居住国を探知し、宿泊施設の公式サイトで表示・決済する通貨を相手国にあわせる仕組みだ。
高橋氏は、この機能の開発に数年以上をかけたといい、その重要性を強調する。宿泊施設の予約システムと連携した多通貨決済サービスを提供できるのは、現在、日本のホスピタリティIT事業者では「トリプラのみ」と自負している。
高橋氏は、グローバルOTAにとって多通貨対応は標準装備であると指摘しつつ「グローバル勢が当たり前に提供している機能やサービスを、宿泊施設の公式サイトでも提供できるようサポートしていく」と話す。
トリプラ(tripla)代表取締役CEO 高橋和久氏また、同社では訪日客が宿泊施設の公式サイトで詳細情報を見ても、予約はグローバルOTA経由でおこなう傾向に着目。その動向と背景を分析していくなかで、決済時の通貨の問題が浮かび上がった。
それは、クレジットカード不正利用の増加に伴う、対策強化の影響だ。例えば、米国発行のカードで高額な円建て決済をおこなうと、カード会社が不正利用を疑い、決済が承認されないケースが増えている。
多通貨決済は、こうした問題の解決に役立つ。高橋氏によると、外貨建て決済で宿泊予約を受け付けるようにするだけで決済承認率は格段に改善。「弊社クライアントの場合、(円建て決済では)50%ぐらいだった承認率が85%ぐらいまで上昇した」。多通貨決済に対応した公式サイトは予約数が7割増になったことになり、予約拡大には必須の対応といえる。
なお、トリプラではクレジットカードの不正利用対策にも取り組んでいる。AIを活用し、ルールベースで感知することで、過去の発生件数と比べて9割超の不正を削減できるようになったという(2024年3月時との比較)。
トリプラが取り組む不正予約対策。決済失敗による離脱防止と売り上げ向上につながる
中間層が増加する市場への対応を
決済と同様に、インバウンド集客に欠かせないのが多言語対応だ。tripla Bookや問い合わせ対応のチャットボット「tripla Bot」では、英語以外にも韓国、中国簡体字・繁体字、タイ、インドネシア、アラビア語など計8言語に対応。キーワード検索に最適化したクリエイティブ、SEO効果アップを狙うためのメタ・ディスクリプション(ページの内容を示す要約文)も、同8言語で作成できる。
一般的に、人が海外旅行に出かけるようになるのは、年収2万ドルを超えたあたりといわれている。ちょうど今、この壁を越える中間層が増えているのが東南アジアだ。高橋氏は「1回目の海外旅行は近場になるが、その次に行きたい国ナンバーワンは日本。自社施設について、タイ語やインドネシア語でアピールできるように対策するべきタイミングだ」と話す。
トリプラ(tripla)代表取締役CEO 高橋和久氏
リピーター獲得につながる集客サービス
一方で、宿泊施設にとって、自社公式サイトだけですべてのインバウンド集客に対応するのは現実的ではない。
高橋氏は「初めて訪れる場所の宿探しは、自分に馴染みのあるOTAを使う人が多いだろう。だが一度、宿泊して気に入ったら、次回はその宿への直接予約を試すのではないか。インバウンドの新規客を増やしながら、2回目以降の宿泊客に公式サイト経由で予約してもらえる仕組みを作ることが重要だ」と話す。
そこで、トリプラが新たに開発したのが、2025年末にリリース予定のインバウンド集客サービス「tripla Nexus」(ネクサス)だ。
tripla Nexusは、訪日インバウンドの送客に強いアジアのローカルOTA上で、客室を販売できるようにするソリューション。サイトコントローラーとは異なり、宿泊施設はtripla Nexusの利用契約をすることで、tripla Nexusが連携しているローカルOTAから掲載したい先を選び、客室の販売が可能になる。
インバウンドの新規客を増やすためには、彼らに届くマーケティングが必要だ。宿泊施設のインバウンド対策は、日本に拠点を置くような大手グローバルOTAでの販売が定石だが、有効な販売施策を打ちにくいのが悩ましいところだった。グローバルOTAが仕入れた客室を各国OTAに卸した場合、ローカルOTAでの予約がグローバルOTAの予約として宿泊施設に入るケースが多いため、宿泊施設は宿泊客の予約の入り口がわからないからだ。
「予約元の国や事業者を把握できれば、宿泊施設が予約の流入動向を見ながら、各市場にあった内容のマーケティング施策をローカルOTA向けに打つこともできる。インバウンドの予約動向を見える化して新規客を取り込み、リピート化する基盤を提供できることがtripla Nexusの最大の価値だ」(高橋氏)。そうして獲得した宿泊客に、トリプラのCRM・マーケティングオートメーション「tripla Connect」などを活用し、次の訪日旅行での利用を促すフォローをしていく。
tripla Nexusが連携する海外ローカルOTAは、台湾のライオントラベルのほか、ezTravel、中国の美団(メイチュアン)、インドネシアのチケット・コムなどを予定。今後、アジア各地からの旅行者の増加が必至である中、宿泊施設が各地域のローカルOTAに直接掲載できることは大きなメリットになるはずだ。
tripla Nexusの初期費用や月額基本料はゼロ。成約した予約ごとの従量手数料は「競争力ある価格」に設定しており、「使わない理由が見つからない」(高橋氏)と自信を示す。
tripla Nexusは訪日インバウンドの顧客を獲得する入り口となる
生成AI時代の勝ち筋とは
ITプロダクト開発との両輪でトリプラが力を入れているのが、クライアント宿泊施設のサポートだ。国内ホテルから「もっとうまく活用したい」との声が出たことをきっかけに、宿泊施設が集客から宿泊予約管理まで、一気通貫で提供する各種ソリューションの機能を十分に活用できるよう、「カスタマー・サクセスチーム」を2年前に発足させた。これを機に、トリプラの各種ツールを複数利用する施設が飛躍的に増えた。
特に、tripla Connectの契約施設数は倍増。2017年から提供していたチャットボット「tripla Bot」契約数も、以前の1.3倍に増えている。「チャットボットがあったほうが、圧倒的に予約のコンバージョンが上がる。予約時の疑問をチャットボットですぐに解消して予約できるので、納得感が高くなる。予約客の面も広がっている」(高橋氏)。
今後の重点分野は、AI時代を迎えるなかで「自律型AIから見つけてもらえる宿泊施設サイト作りを支援する開発になる」と高橋氏。現時点では、ブッキング・ドットコムやエクスペディアなど、AI対策で先行しているグローバルOTAが優位にあるが、高橋氏は「勝機はある。なぜなら、公式サイトのほうがその宿泊施設の情報量は多いからだ」と力を込める。
すでにトリプラでは、単なるAI機能の追加ではなく、AIが最初から機能するようにプラットフォームを設計・開発してきた。今後も、宿泊施設の収益最大化を追求し、最新のトレンドとテクノロジーを先導する存在として取り組んでいく。
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対応サービス:
- tripla book
- tripla Nexus
問い合わせ:トリプラ問い合わせ&資料ダウンロードページ
記事:トラベルボイス企画部
