ラグジュアリーホテルの価値基準が変わりつつある。統合型ラグジュアリーホテル施設の設計を手がけるWATG社は、2026年に向けたホスピタリティ産業の5つのトレンドを整理した。
それは、個性的な飲食による差別化、科学的根拠に基づくウェルネス、子どもを起点としたファミリー設計、次世代超富裕層の価値観の変化、そしてサステナブルな再開発へのシフトだ。WATG社の分析から、次世代ラグジュアリーの設計思想が読み取れる。
1.個性的な飲食事業が差別化の要因に
1つ目のトレンドは、ホテル内での飲食事業だ。
2026年は、質の高い個性的な飲食コンセプトが、ホスピタリティ業界の様相を一変させると指摘している。多くのホテルがレストランやバーをホテル体験を豊かにする「第三の場所」として再考しており、飲食事業は、かつて収益を支える柱として機能していた段階から、他社との差別化の中核へと役割を変えている。
また、ラグジュアリー旅行者の60%は、優れたレストランを備えたホテルへの宿泊を優先し、魅力的なダイニングコンセプトを取り入れたホテルでは、肯定的なレビュー(クチコミ)が最大40%増加したという報告もあるという。
2.科学的根拠が求められるウェルネス
2つ目のトレンドは、科学的根拠に基づいたウェルネスだ。
ウェルネスは、贅沢から必需品へと進化し、今では直感な感覚だけでなく、科学的根拠が求められる領域となりつつある。ウェルネスは、客室内の備品やスパ提供に限らず、サービス設計やスタッフの動線、運営方針を含むホテル運営全体に組み込まれ、「心地いい滞在」の意味が再定義されている。
ウェルネス志向の旅行者は、1回の旅行あたりの平均支出額が40%以上多く、ウェルネスに軸としたホテルでは、客室平均単価(ADR)が20~35%高いとの報告もある。その効果は収益だけにとどまらず、宿泊者との感情的なつながりを生む。エビデンスに基づいたケアを実践するホテルは、ロイヤルティとリピーターを育む可能性があるとしている。
3.子ども向けのプログラムの充実
3つ目のトレンドは、子ども向けの設計。家族旅行のアイデアの約67%は、子どもに影響されており、56%の家族連れはキッズクラブのクオリティを基準にホテルを選択しているという。子ども向けのプログラムを充実させているホテルは、滞在期間の延長、付帯サービスの追加利用、リピーターの増加が報告されおり、ファミリーフレンドリーな設計は長期的にロイヤルカスタマーを獲得できる可能性があると指摘した。
また、ホテルの設計に、その土地の文化や景観のストーリーを取り入れることで、幅広い年齢層のゲストを取り込むと同時に、セグメンテーションによるエンゲージメントが高まるとした。
4.次世代超富裕層の価値観への対応
4つ目のトレンドは、ラグジュアリーの再定義だ。2025年半ばには純資産が3000万ドル(約47億円)を超える超富裕層(UHNW)は世界に51万人いると推計されており、この数は2030年までに31%増加すると予測されている。
今日の超富裕層は、規模や華やかさよりも、経験、目的、そして個人の価値観との整合性を重視し、目立たず、プライバシーが守られる環境を好む傾向が強い。次世代の超富裕層は、豪華で広い客室よりも、自らのアイデンティティやライフスタイルを反映した体験領域への投資を重視しており、ラグジュアリーの価値は広がる一方で、より選別的なものになっていると分析している。
5.サステナブルな再開発
5つ目のトレンドは、施設の新規開発から再開発へのシフトだ。
世界市場全体で建設コスト、資金調達、ESGへのプレッシャーが高まる中、ホテル開発業者や投資家は、新築から再開発への戦略に軸足を移している。そして、再開発は、次世代の需要に合わせて資産を再調整する機会となる言及している。
その中核となるのがサステナビリティだ。改修に最新の再生可能インフラやテクノロジーを統合的に導入することで、持続可能性の信頼性を高めるとともに、運用資産の利用要件が削減される。レガシー資産を現代的で文化に根ざしたホテルへと変貌させることで、開発者は価値を高め、CO2排出量を削減しつつ、未来の旅行者の変化するニーズに応えることができるとしている。
※ドル円換算は1ドル155円でトラベルボイス編集部が算出
