欧州市場の訪日トレンドを聞いてきた、ドイツ人旅行者の消費額が世界1位に、JNTOフランクフルト臼井所長が語る市場変化

世界最大級の観光産業見本市「ITBベルリン」で、日本政府観光局(JNTO)は訪日インバウンド旅行の欧州市場、とりわけドイツ市場の動向について説明した。訪日旅行の回復とともに市場構造にも変化が見られている。旅行支出の増加や旅行者層の若年化、体験型観光への関心の高まりなどが顕著になっているという。JNTOフランクフルト事務所長の臼井さやか氏に、その動向を聞いてきた。

※写真:ITBベルリン会場のJNTOブース

ITBは、ホテルをはじめ、DMOやDMC、鉄道会社などの「セラー」と、旅行を販売している各国の旅行会社などの「バイヤー」による、BtoBの商談を中心とする国際観光産業見本市。来場者の構成にも特徴がある。今回は、ドイツやドイツ語圏のほか、イタリアやオランダ、トルコ、ベルギー、さらにポーランドやブルガリア、ルーマニアなど東欧地域の参加も目立ったという。

また、臼井氏は、ドイツの旅行会社について、すでに訪日旅行の取り扱い経験を持つ企業が多く、既存の取引関係を維持する動きが強いと指摘する。一方で、新たな需要への対応として、DMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)を探す動きも出ている。臼井氏は「ドイツのバイヤーは既存のDMCとのネットワークを継続するケースが多い。しかし、個人旅行を含めた訪日ニーズが増えてきているため、ツアーオペレーターが抱えるDMCだけでは拾いきれない案件について、新たなDMCを探す動きも見られる」と話した。

ドイツ市場の訪日旅行者、旅行支出は世界1位

訪日旅行の実績では、ドイツ市場の成長が顕著だ。臼井氏によると、訪日ドイツ人旅行者数は2019年比で大きく伸びている。「2019年比では8割以上伸びている」と語る。特徴的なのが旅行支出の高さだ。観光庁によると、2025年はドイツ人旅行者の1人当たり旅行支出は全市場の中で首位となった。「観光庁のデータでは、ドイツ人1人当たり旅行支出は約39万円という水準で、我々としても非常に驚いた」という。

平均滞在日数はおよそ18日と長期型で、支出構造にも特徴がある。特に宿泊費の割合が高く、全体の約46%を占める。また、これまで比較的少なかった買い物支出も増加傾向にある。臼井氏は「日本に対する情報理解の深まりや円安など、さまざまな要因が影響している可能性がある」と説明した。

夏季の旅行需要も強く、7月から9月の平均旅行支出は約43万円に達した。長期休暇制度の影響もあり、家族旅行が増えた可能性もあるという。

JNTOフランクフルト事務所長の臼井さやか氏

訪日旅行者の若年化、20〜30代が過半に

旅行者層の変化も見逃せない。臼井氏によると、訪日ドイツ人の年齢構成は近年大きく変化している。「以前は40代以上が比較的多かった。2024年、2025年は、ともに20代、30代が50%以上を占めるようになった」と説明する。

若年層の増加は、訪日旅行の位置づけの変化も示している。臼井氏は「日本が単なるバケットリスト(いつかは訪れてみたい旅先の願望リスト)だけではなくなってきているのではないか」と指摘する。かつては人生で一度訪れる特別な旅行先という位置づけだった日本が、より身近な旅行先として選ばれるようになりつつある可能性があるという。

体験型観光への関心拡大、自然・地域観光に注目

欧州市場では、体験型観光への関心も高まっている。ドイツ市場も同様で、日本各地での自然体験プログラムなどへの問い合わせが増えており、例えば、長野県で実施されている野生動物観察などの自然体験ツアーが人気という。

また、訪問先の多様化も進んでいる。四国や瀬戸内地域など、従来は訪問者数が多くなかった地域への関心が高まりつつある。臼井氏は「四国では、しまなみ海道や巡礼、瀬戸内の島々などへの問い合わせが増えている」と語る。

さらに、ドイツ市場では沖縄や北海道など自然資源を活かした地域も人気が高い。フランクフルト事務所でも、ここ数年は日本各地の自然やアウトドア体験のコンテンツを発信し、認知度向上に注力してきたということもあり、沖縄への宿泊者数については欧州の中でドイツ人が最も多いという。

JNTOとしては、欧州の旅行会社が興味を持つ地域と、日本側で欧州市場に積極的な地域とのマッチング、人気の訪問先からのアクセス情報が分かりやすく提供されていることが今後の重要なポイントだと考えている。臼井氏は「ツアーオペレーターが関心を持つ地域と、日本側でドイツ市場に注力している地域がつながることが大切」と述べ、継続的な関係構築の重要性を強調した。

ITBベルリンの日本ブースは商談重視、BtoB機能を最優先

ITBベルリンにおける日本ブースの設計でも、BtoB商談の機能が最優先されていた。

臼井氏は「一番大事にしているのは共同出展者が商談しやすい環境を作ること。BtoBの場なので、装飾よりも商談スペースを重視している」と説明する。

会場では各出展者の商談スペースを確保するとともに、中央部にはフリーの商談エリアを設置。来場者が入りやすい動線設計にも配慮した。装飾面では日本らしさを意識しつつ、全国各地の体験型観光を紹介する映像を流し、地域の多様な魅力を伝えた。

欧州市場における訪日旅行は、量的回復だけでなく質的変化も進んでいる。高付加価値旅行や体験型観光、地方分散など、日本の観光戦略とも親和性の高い動きが見え始めている。

取材・文: 鶴本浩司

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

注目企業 セレクトSPONSORED

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…