MetaのAIエージェント「Muse(ミューズ)」が2026年9月8日(現地時間)に公開された。旅行の予約を含むさまざまなタスクをユーザーに代わって実行する機能が提供されている。
航空券予約機能の一部は、旅行会社や企業が自社サービスに航空券の検索・予約機能を組み込めるAPI基盤を提供する英国のトラベルテック企業「Duffel(デュフェル)」によって実現した。DuffelはNDCやGDS、LCCを通じて300社以上の航空会社の航空券を取り扱っている。
ユーザーがMuseに旅行の計画を依頼すると、Duffelが選択肢を提示し、予約の実行や変更をおこな。Duffelのスティーブ・ドーミンCEOは、観光産業ニュース「フォーカスワイヤ」に対して、「現時点での連携機能は航空券予約に限られているが、将来的には宿泊施設の予約にも対応する予定」と明かした。
ただし、ユーザーはMuseを利用しつつ、航空会社のサイトで直接予約をおこなうことも可能だ。「なぜDuffel経由で予約するのか」とMuseに尋ねてみると、Museは「通常、その方がスムーズな手順だから」と回答した。一方で、航空会社のウェブサイトでの予約を希望する場合、Museは内蔵ブラウザ上で予約手続きを進め、ログインや承認が必要な段階でユーザーに操作を受け渡す。また、Museは乗客に代わってマイレージプログラムなどの会員情報を入力することも可能となっている。
具体的な予約方法は?
フォーカスワイヤが、Museに対してアトランタ発ロンドン行きの直行便の選択肢をすべて提示するよう依頼してみたところ、MuseはDuffelの在庫情報と航空会社サイトからの選択肢の両方を抽出して表示した。Duffel経由のルートを利用する場合、情報はDuffelに引き渡される。
ドーミン氏は「取引が実行されると、ユーザーによる予約の確定を経て、Duffelの旅行会社機能を通じて発券される。その後の予約サポートも当社が提供する」と話す。
Museによると、予約後の手荷物や座席の追加、乗客名などの変更については、航空会社を通じて手続きを行う必要がある。当日の変更についても同様に、航空会社への連絡が必要だという。
Duffel経由で予約する場合、支払いはStripe Linkウォレットの仕組みを利用して行われる。ユーザーが支払いを承認すると、Stripe Linkが「使い捨てのバーチャルカード」を生成し、航空会社に提供する形となる。
また、支払い時にユーザーが操作を引き継ぎ、航空会社の支払いページで自身のカード情報を直接入力することもできる。Museは、Duffelを介さず航空会社のウェブサイトで直接予約を行う場合、Apple Pay、Google Pay、PayPal、Shop Payなどの決済手段にも対応できるとしている。
Duffelはフライト状況を監視し、欠航などの情報をユーザーに通知するほか、Muse内でのセルフサービス機能も提供している。セルフサービスで解決できない問題については、24時間年中無休で対応するDuffelの担当者に引き継がれる。
ただし、運賃規定や予約に関する制限事項については、Meta(メタ)が管轄。ドーミン氏は「それらはすべて、MetaのチームとMuseによって処理される。ユーザーが予約の全工程を通じて、自分が何を予約しようとしているのかを常に確認し、その内容を十分に理解できるように、安全策が講じられている」と説明した。
Museは、米国のユーザー向けにiOS、Android、およびウェブサイト(muse.ai)で提供されており、まもなく同社のAIグラスとも連携する予定だ。Metaは、Museを無料(利用制限あり)で利用できることも明らかにしている。無料枠の上限に達した後は、有料サブスクリプションにアップグレードするか、無料枠がリセットされるのを待つことになる。
真の革命となり得るのか?
ドーミン氏によると、自社でOTAになることなく旅行関連サービスを追加したいと考えているMetaにとって、Duffelは魅力的な存在になっているという。Duffelは複数国で旅行会社機能を持ち、サプライヤーとの契約や決済、サポートなど、通常は旅行会社が担う業務を提供している。
Magpieの創業者兼CEOのクリスチャン・ワッツ氏は、「これはMetaとDuffelの双方にとって有益な関係だろう」と話し、「ある意味で、これこそが『エージェンティック・コマース(AIエージェントが主体となって行う商取引)』の理想的な形だと言えるだろう。Metaは、検索から予約、その後のサービス対応まで取引を支援できる専門企業と深く連携することで、エージェント側が管理しなければならないシステム統合の数を減らすことができるからだ」と説明した。
また、「真に高度なエージェンティック・コマース製品の先駆けとなる可能性がある。これまでとの大きな違いは、Museが単にフライトを推奨したり顧客を外部サイトへ誘導したりするだけでなく、リクエストを理解し、リアルタイムの選択肢を比較検討し、予約を完了させ、その後の管理まで支援できる可能性があるという点にある」と続けた。
一方、TravelierのCMOでありエンジェル投資家でもあるマリオ・ガビラ氏は「あらゆるパーソナルAIエージェントは、本質的に日常的なデジタルタスク全般を管理するようになるだろうから、MetaのMuseが他の競合他社に対して優位性を持っているとは思わない。勝者と敗者を分けるのは、リクエストされたタスクを忠実に実行すること、人間による監視を適切に維持すること、そして効率的なトークン消費を行うことにかかっていると予想している」と話す。
Metaが本当の強みを発揮できるのは、その巨大な顧客基盤と、決済処理プラットフォームStripeとの提携関係にあると言える。ガビラ氏も「MetaがStripeと提携し、使い捨てのバーチャルカードを活用するのは賢明な動きだ。これによって、セキュリティが適切に担保され、エージェントが高額な取引を行えるようになる。旅行業界において、これは極めて重要な点だ」と話す。
AI Hospitality AllianceおよびHospitality 2.0の創設者であるイラ・ヴォーク氏は「Museはホテル予約における空室状況や在庫情報との連携といった業界の課題解決にはつながっていない」と指摘し、「その問題を解決できているのは、今のところGoogleだけだ」と話す。
ワッツ氏は、Googleはおそらく特定の1社と連携して「完全なエージェント型(自律型)」のサービスを展開したいと考えているだろうが、多数のパートナーを抱えている以上、ある程度の中立性を保つ必要があると指摘した。
一方、ガビラ氏は、他の大手企業もMetaの動きに追随する可能性が高いと見ており、「GoogleやOpenAIがすぐに追随することは間違いないだろう」と指摘した。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:META LAUNCHES AI AGENT WITH TRAVEL BOOKING CAPABILITIES





