観光地の「交通空白」をどう解消するか? 交流で消費を生む移動と、DMOが担うライドシェアの実践を聞いた

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ツーリズムEXPOジャパン2026のツーリズム・プロフェッショナル・セミナーでは、「交通空白」の解消に向けた取り組みについて意見が交わされた。観光客向けの二次交通に課題を抱える地域と、課題解決につながるソリューションを提供する事業者が、具体的な課題認識や取組事例を紹介。将来に向けた課題解決のヒントを共有した。

登壇者は、行政から観光庁参事官(外客受入担当)の今井盾介氏と野沢温泉村観光産業課長の富井健一氏、DMOからは野沢温泉マウンテンリゾート観光局モビリティ担当の染矢明愛氏、事業者としてうさぎ企画代表の森田創氏。計量計画研究所理事の牧村和彦氏がモデレーターを務めた。

「移動」をエンタメ化、消費を生む:うさぎ企画の交流型モビリティ

地域活性化の支援事業などをおこなう、うさぎ企画代表の森田創氏は「交流により移動量を倍増させ、増えた乗客を地域課題解決の担い手に変える」という独自の哲学に基づく静岡県内での取り組みを紹介した。

2026年8月から三島市・長泉町で実装された交流型オンデマンド交通「SPICEBOX」では、マイカーを持たない首都圏からの移住者などの日常の足として機能。運転手と乗客、乗客と停留所を管理する店主との交流を徹底的に磨いた結果、1日平均50人以上が利用し、利用者の移動回数が平均で4割増加した。「用がなくても運転手と話したい」というシニア層のリピーターを多く生み出している。

また、焼津市で3年間実証をおこなった「つなモビ」では、時速20キロ未満で走るグリーンスローモビリティを活用。港や駅を結ぶだけでなく、停留所で「鰹節作り講座」などのイベントを開催し、移動自体をアトラクション化させた。結果として利用者の6割を市外からの観光客が占め、運賃とは別に1人当たり4700円以上の地元消費を生み出した。

既存の交通事業者との競合について森田氏は、「移動回数自体が1.4倍に増え、既存バスの利用者も増加したというデータ(エビデンス)を示すことが重要」と指摘。また、スピードの遅いモビリティを活用することで「浅草の人力車にタクシーが目くじらを立てないように、競争の範疇外で独自の価値を見出すことが共存のコツ」と語った。

観光需要が住民の足を奪う課題に挑む:野沢温泉村のライドシェア実証

人口約3000人の長野県・野沢温泉村では、冬の4カ月間に約40万人の観光客が押し寄せる。野沢温泉村観光産業課長の富井健一氏は「インバウンドの急増により路線バスが大混雑し、地域住民が乗車できないという問題が発生していた」と深刻な背景を説明した。

この課題に対し、野沢温泉マウンテンリゾート観光局(DMO)が主体となり、冬期限定の「公共ライドシェア」を導入した。モビリティ担当の染矢明愛氏によれば、1年目は温泉街のみの小規模スタートだったが、2年目(2025年12月~2026年3月)は隣接する飯山市の飯山駅まで区間を延伸し、Uberアプリも導入。マイカーを活用した自家用車ドライバー40人が登録し、4カ月間で計約2700回の運行実績を上げた。

この取り組みの最大の成果は「データの収集」だ。利用者の国籍割合や需要予測が可視化され、DMOのCRM戦略にも直結する貴重なデータが得られたという。また、ドライバーのペルソナも把握できた点も収穫だったと明かした。

一方で、悪天候時や夜間の需要変動に対応するダイナミックプライシングの調整、ドライバーの最低時給保証と収益性のバランス、近隣エリア(北信エリア)での人材シェアリングの構築などが今後の課題として浮き彫りになった。

富井氏は行政の立場から「現場に近いDMOがライドシェアを推進し、行政がそれを後押しする形が非常にうまく回っている。今後は観光客だけでなく、村民の福祉目的の足としても馴染ませていくビジョンを描くことが行政の大きな仕事」と話した。

(左から)野沢温泉マウンテンリゾート観光局の染矢氏、野沢温泉村の富井氏、うさぎ企画の森田氏、観光庁の今井氏

二次交通を「未来へつなげる」ために必要なこと

地域の足を維持するための「大義名分」について、うさぎ企画の森田氏は「運賃収入だけでなく、乗り物があることによる経済波及効果(消費額の増加など)が運行コストを上回ることを『見える化』し、議会や地域に示し続けることが継続の鍵になる」と強調した。

また、野沢温泉マウンテンリゾート観光局の染矢氏は、ライドシェアについて、「福祉からどのように観光交通に寄せていき、それが日本版ライドシェアではなく、さまざまな主体が関われる枠組みでシームレスにできると、いろいろな地域にも広がりやすくなるのでは」との考えを示した。

観光庁参事官(外客受入担当)の今井盾介氏は、国交省として3年間を「交通空白解消の集中期間」と位置づけ、全国で259件の新たなチャレンジを支援している現状を紹介。「自治体、DMO、民間企業のネットワーク構築が最重要。また、成功事例だけでなく、失敗や苦労話のノウハウを蓄積し共有していくことが他地域への横展開に繋がる」と述べた。さらに、交通アクセス確保が結果として観光消費の拡大に直結するとし、国としての継続的なサポートに取り組む姿勢を示した。

最後にモデレーターの牧村和彦氏は、「二次交通=オンデマンドやライドシェアと思われがちだが、徒歩、シェアサイクル、ベロタクシー、トゥクトゥク、水陸両用車など、多様で『顔が見える楽しい交通』の選択肢を広げていく視点も忘れてはならない」と締めくくり、地域ごとの特性に合わせた「ベストミックス」を探求する重要性を共有した。

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