海外トレードショーで「マグロ解体ショー」、鮨で日本の魅力をアピール

小野アムスデン道子の観光J活コラム(3)

官民協同でインバウンドを掘り起こせ

大阪観光局とターキッシュエアラインズの事例

 

英国のWTM、ベルリンのITBと並び欧州3大旅行博のひとつ、スペインのマドリッドで開催されるFITUR。そのJAPANパビリオンに今年初めて参加した大阪観光局。欧州におけるBtoBを拡大する機会として何かインパクトのあることを、ということでタッグを組んだのは、同じくスペインからのインバウンド増加を目指すターキッシュエアラインズ(トルコ航空TK)だった。今回は、双方へのインタビューを通じて大好評だったそのPR内容と官民協同の事例を追う。

一見意外な組み合わせの大阪とターキッシュエアラインズ

 官民結ぶwin winの狙い

大阪府、市の共通戦略である「大阪都市魅力創造戦略」の重点的取り組みとして、大阪観光局が設置されたのが2013年4月。初代局長として迎えられたのは香港政府観光局日本・韓国地区局長として18年のキャリアを持つ加納國雄氏だ。今度は、大阪を「ASIAN GATEWAY(アジアの玄関口)」にすべく観光戦略を練るなか「欧州でのBtoB拡大を目指し、2014年1月にFITURに参加することになったが、ただチラシを配布して応対をするのは普通のこと。もっとこの機会を活かすのに効果的なことをしたいと考えた」と言う。

そこで着目したのが、ユネスコ無形文化遺産に和食が登録され、欧州でも人気のある鮨、それをインパクトある形で見せられるマグロの解体ショーだった。大阪で鮨チェーンとして店舗も数多い大起水産が協力することになった。しかし、解体ショーを披露する場所も必要なうえ、すし職人などのスタッフも現地に行かねばならない。そこで、そこに助け舟を出したのがターキッシュエアラインズ(TK)だ。

現在、関西国際空港から欧州への直行便があるのは、アムステルダム、パリ、ローマ、フランクフルト、ヘルシンキのみ。マドリッドは、日本からの直行便がない。TKは、イスタンブールからヨーロッパ94都市に就航しており、スペインには6都市へ週70 便を運航している。TK大阪支社はスペインのTKオフィスとクロスマーケティングを過去3年以上続けており、TKスペインも年2回ペースで来日して、日本からスペインのプロモーションにも協力していたという。

一方で、欧州その他のTK支社では、アウトよりインバウンドのシェアが高く、日本でももっとインバウンド需要を増やしたいという狙いがあった。 ターキッシュエアラインズ大阪支社旅客事業部部長である堀直美氏は「スペインからのインバウンドがここ数年伸びてきており、弊社としても後押ししたいと思っていたところに、大阪観光局よりマグロ解体ショーのアイデアをいただき、ご協力することになった」と、大阪との役割分担が出来たことを明かす。TKセミナーとして日本のアピールをする中に、加納局長のスピーチと共にショーを組みこむことになり、話題性もあって200 名近くのメディアやスペインの旅行会社が集まった。

大きなマグロを目の前で解体するというインパクトもさることながら、マグロのカルパッチョなど生で魚を食べる習慣があるスペイン人も含め、新鮮なマグロの切り身で作って出した鮨は大受けだったという。日本の食と同時に大阪をアピール、TKはキャリアとしてスペインや欧州からのディスティネーションとして日本を多いにアピールできるというwin winの成果を得た。

前出の加納局長は「鮨、和食、日本というアピールは、その他の旅行博でも可能性があると思っている。また、キャリアとの繋がりの他にも、地域が連携して周遊型のトラベルをもっとアピールするなどの工夫も考えている。また、官民協同ということでは吉本興業と組んで4月12日に大阪で開催のJapan Girls Expoも日本初の試み」とそのアイデアはまだまだ広がっている。一地域や公の組織だけでは仕掛けられないことも工夫次第という事例が今後も見られそうだ。

  • 文/小野アムスデン道子
  • インタビュー協力・写真提供/大阪観光局、ターキッシュエアラインズ

【観光J活コラムとは】

地方の観光政策に耳を傾け、エリア観光を掘り起こし、アジアからだけではない訪日旅行のアピールを図るなど、“観光で日本を元気にする活動(アクション)を探る”題して“観光J活コラム”。

小野アムスデン道子

小野アムスデン道子

トラベルジャーナリスト、観光J活コラムニスト。世界的に著名な英語のガイドブック『ロンリープラネット』日本語版の立ち上げから編集に携わり、旅の楽しみ方を発信するトラベルジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなど数多い海外旅行取材を通して、観光の魅力を発信することが日本の活力を生むと“観光J活コラムニスト”としての活動を開始。新たな日本の観光地に焦点を当て、国内外にアピールしている。日本旅行作家協会会員。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…