旅行・観光ビジネスが広がりをみせた2014年、時代の変局を振り返る

千葉千枝子の観光ビジネス解説(21)

▼半世紀の節目、2014年は時代の変局あらわに

観光促進にオールジャパン元年

2014年も、まもなく暮れようとしている。日本人の渡航自由化や東海道新幹線の開業、1964年の東京五輪からちょうど半世紀、50年の節目の年に、時代の変局を感じとった人は少なくなかっただろう。

アウトバウンド一辺倒からインバウンド新時代へ。為替相場という行司は、進む円安でインバウンドに軍配を上げた。訪日外客が、経済活動のさまざまな場面で大きな存在感を示し始めている。少子高齢化で縮む国内旅行需要を、今後、訪日外客が底上げしていくことが予想される。


東京国立博物館をユニークベニューに前夜祭が行われたツーリズムEXPO2014 秋田竿灯が夜空を彩った

去る2014年9月、これまでの「JATA旅博」と「旅フェア日本」が統合して「ツーリズムEXPO ジャパン2014」と名称があらたまり、規模も拡大して開催され、成功をおさめたことは記憶にも新しい。オールジャパンで観光促進する、記念すべき初年であったといえよう。



▼旅行者の流れはますます多様に

ネット予約はスマホ対応に追われた1年

物流が多頻度小口配送で顧客のニーズをつかんだように、旅客の流れもますます多様性を帯びたのが印象的な1年であった。

すでに航空の世界では、ジャンボジェット機が退役して大量輸送時代に別れを告げているが、格安多頻度をめざすLCCのさらなる参入、具体的にはバニラエアの本格就航や春秋航空の国内線参入など、内際ともに利用者の選択肢の幅が広がった。また、スカイマークの誤算は羽田発着枠の争奪戦へと発展しそうな向きもあり、エアアジアの再上陸など今後も空から目が離せない。


単なる輸送手段ではなくなった日本の鉄道界。八戸線を走るTOHOKU EMOTION

鉄道はといえば、単なる輸送という日常から、非日常の観光列車が人気を博して列島各地を駆け抜けた。ななつ星in九州(JR九州)やTOHOKU EMOTION(JR東日本。いずれも運行開始は2013年)に引き続き、SL銀河(JR東日本)が話題をさらった。

マスといわれる大型客船、カジュアルクルーズへの注目も著しかった。プリンセスクルーズの横浜発着がスタート。寄港へのラブコールに、港湾整備も急ピッチで行われるようになった。

旅行商品においては、デフレ局面にみられた薄利多売から、多品種少量生産の高付加価値商品があらためて注目された年だった。日本で初のパッケージツアーであるジャルパックが50周年を迎えるなど、時代の節目を感じさせた。

一方でインターネット予約は、PC流入が、スマホ経由に逆転されるなど、日進月歩をさらしている。ウェブメディアもスマホ環境の対応に追われたのを、筆者も身を以って感じた。



▼外縁を広げる観光ビジネス

インバウンド消費・テーマパーク事業・IR関連に注目が

衆議院解散で棚上げとなったカジノだが、2014年11月27日東京ビッグサイトで開催された「日本型IR 統合型リゾート開発・投資シンポジウム2014」には大勢の聴衆が詰めかけた

2014年は、観光ビジネスが外縁を広げた1年でもあった。2020年東京五輪決定とインバウンドの急伸が後押しをした格好だ。例えば、流通業態のひとつであるアウトレットは、観光商業施設と呼ぶにふさわしい成熟をみせた。観光立地や交通要衝に戦略的に立地するアウトレットだが、2014年は増床が相次ぎ、免税店の申請やムスリム対応も加速した。

秋の免税制度改正で隆盛を極めたのは、ショッピングツーリズムである。百貨店やディスカウント店のみならず、地方の土産店やスーパーマーケット、商店街にまで商機をもたらした。

インバウンド消費のなかでも注目されたのは、ハラルである。認証団体が乱立するなどの問題もあったが、増大するムスリム市場に農水畜産業の現場も動きだしており、今後が期待される。

特筆すべきは、テーマパーク事業の可能性である。ハウステンボス(長崎・佐世保)をV字回復させたエイチ・アイ・エスが、今度はラグーナテンボス(愛知・蒲郡)を手がけると発表したのは夏のこと。テーマパークが、維持費過多の無用なハコモノという固定概念を拭い去り、新たな交流の拠点となりうることを知らしめた。

IR 統合型リゾート、すなわちカジノ法案は、立法化ならず越年となったが、大阪・夢洲をはじめ候補地が具体的に挙がるなど、水面下の動きの速さに驚いた人も多かったであろう。師走総選挙で新政権が発足したばかりの今、これからの行方を見守りたい。

▼東京五輪へカウントダウン

インバウンド一色の2014年を振り返る

世界から1000人の記者やエージェント関係者を招聘したタイ 政府。日本からも約100人が参加した(2014年7月25日撮影)

東京五輪までの残された時間に、新たなビジネスを模索する動きが絶えなかった2014年。インバウンドという業界用語が今では一般に使われるようになり、「インバウンド消費」は日経MJ2014年ヒット商品番付の東の横綱に選ばれた。長年、観光に従事したものであったら、これほどに感慨深いことはない。


だが、忘れてならないのはインとアウトの均衡である。特に地方路線は、日本からの送客が低ければ、五輪後、苦戦を強いられることが予想される。五輪会場が、東京以外にも選定されたことは喜ばしいことだ。より一層のアウトバウンド振興を行い、双方向のヒトの流れを活発化させないとならない。

クーデターで軍が政治を掌握したタイや、歴史問題で日本人観光客が激減した韓国で2014年、1000人規模のメガファムを実施したのが印象に濃い。観光立国を標榜する日本が、インバウンドを呼び込むためには、円安にも負けないアウトバウンドの有効な施策を打ち出すことが、官民ともに求められているのではなかろうか。

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