中国の旅行会社に聞いた日本のMICE、顧客で異なる訪問先選びの条件 -IME2014より

2014年12月9日、10日に開催された「国際ミーティングエキスポ(IME)2014」。定着した感の強い日本国内・海外のMICE振興イベントだが、今年はイベントにあわせて日本政府観光局(JNTO)が海外から旅行会社を招聘した。重点市場のうち、中国やタイ、マレーシアなどアジアに置く6か国の海外事務所を通して現地の有力旅行会社から25名が来日し、IMEの視察と訪日MICE誘致を目的とした視察ツアーを実施した。

この視察で海外のMICEキーパーソンの目を引いたものは何かーー?今回は中国・上海から来日した特徴の異なる2社にその感想をインタビューしてみた。各市場の特性や旅行会社の持つ顧客層によって感じることは異なることが如実にわかる好対照の意見がきかれたが、真剣に答えてくれた2社の意見は参考になるところが大きい。


▼大手旅行会社の場合

知名度のある場所がMICE訪問地の条件

上海锦江旅游有限公司のWu Wei Rong氏

上海の視察団が訪れたのは島根県。まず話を聞いたのは、上海锦江旅游有限公司のWu Wei Rong氏(写真右)。上海では10本の指に入る大手旅行会社だ。今回、視察したコースは初めての訪問で、「素晴らしいところだった」と好印象。足立美術館や出雲大社など、日本らしい見どころのある観光地があるのに加え、「湖があり海も近く、風光明媚の土地で物産も豊富。“安来節”など土地ならではの芸能も面白い」と、地方ならではの魅力を感じてもらえたようだ。会議場などMICEに必要なファシリティも、日本はほとんどの拠点に整っているという認識もある。

それでは、ぜひ顧客に訪問を紹介してもらえるか、と期待したところ、Rong氏は「すぐには難しい」との意見だ。「日本でMICEをするなら、東京や大阪、そして北海道、沖縄があるのに、なぜ“島根”でするのかが、お客様は分からない」というのがその理由だという。

「上海の人がMICEに求めるのは、開催地の知名度。人々に良く知られている都市での希望が強い。一般の人が良く旅行をするようになり、いいところだと知られるようになったら可能性が高い」と話す。つまり、行く人にとっては期待感・安心感が強く、周囲の人にも羨望される、そんな知名度のある都市が好まれるのだろう。

もちろんRong氏は、今回のコースでのMICE開催のポテンシャルを感じている。そこで「まずは一般向けのツアーを増やしてはどうか。それにはクルーズが効果的だと思う」と提案。上海を定点に日本へも九州にタッチするクルーズが増えており、福岡など九州各地の知名度も高まっているという。地方への誘客を期待できるクルーズ誘致は、そこからさらに大きなマーケット誘致の可能性にも繋がりそうだ。


▼中堅旅行会社の場合

リピーター、上級者が喜ぶのは“本当の日本”

上海東湖國際旅行社の王晴明部長

一方、上海東湖國際旅行社は、グループ規模はそこまで大きくないが、旅行に慣れた質を求める顧客を多く扱う。参加した王晴明部長(写真右)は5年ほど前に鳥取と組み合わせたインセンティブツアーを実施したことがあり、今回が2回目の島根訪問だという。

そんな王氏は「じっくり案内してもらって興味深かった。特に足立美術館は素晴らしく、庭園が印象的だった。中国も庭園が有名で関心のある人が多く、比較ができるので見どころのひとつになる」と、観光地に対する具体的な手ごたえを感じたようだ。

さらに好印象だったのは「島根は日本の中でも“田舎”と思われているが、日本へ2、3回旅行をしているようなリピーターには田舎を案内した方が、のんびりとした昔ながらの本当の日本を見てもらえる」という王氏の信念に合致したこと。

これまでも東北など日本の地方へ行くツアーを組んでおり、顧客はそんな王氏の目利きを信用している。震災後に実施した福島へのツアーでお客様にも喜ばれたという。今、日本でのスキー旅行といえば北海道が人気だが、王氏にとっては「北海道より草津や長野の方が魅力的」に映るのだそうだ。

そして、王氏はさらに日本に顧客を連れてくることは「とても安心感がある」と強調する。他国で発生する手配漏れや対応でのトラブルが極端に少ないのが理由だ。これは、日本の観光業界として誇りに思っていいことだろう。

ただし、王氏が悩むのはルーティング。上海からの航空路では地方都市よりも東京や大阪に入る方が価格的に安くなるし、ショッピングの魅力を加えることができる。島根の場合は福岡が価格と距離的に利便性が高いが、そこと島根、大阪を結ぶ旅程をどう作るかもポイントになるという。


▼日本の旅行で欠かせないショッピング

旅行通の2人が感じた課題と購入したもの

MICE担当者として各国を訪れる2人が、旅行中に日本で購入した品物は何か?Rongさんは女性ということもあり、やはり化粧品が筆頭に上がった。一方、訪日経験の豊富な王氏は食料品が多かったという。ただし、課題も指摘する。10月の免税制度改正で対象品目が増えたものの、島根では遅い時間まで営業する店舗や、中国人旅行者に人気の家電製品を置く店舗が少なかった。また、銀聯カード対応店舗が少なかったという。

王氏は、「大きな家電量販店が地方にないのは大きな問題」と声を大きくした。せっかく魅力ある地方を訪れても、旅行者がお土産に購入したいのはやはり日本製の炊飯器や水筒。中国人旅行者が日本旅行に期待するものとしてショッピングは欠かせないが、地方での品ぞろえや営業体制にはどうしても限度がある。観光地としての知名度の向上とともにショッピングで楽しんでもらうための工夫も、地方がMICEを受け入れのために必要な取り組みになると言えそうだ。


フェアウェルパーティーではJNTO理事の山崎 道徳氏が挨拶

今回の招聘事業は、中国のオーガナイザーにバラエティー豊かなプログラムを顧客に提案してもらい、訪日インセンティブ旅行の多様化を図ることを目的におこなわれたもの。訪日MICEのなかでもインセンティブ旅行の需要が高いアジア諸国から中国(上海、北京)、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、韓国の6市場から訪日インセンティブ旅行を取り扱う現地旅行会社、企業のプランナーを招請した。

JNTOは、日本全国からMICE分野に関心の高い自治体、コンベンションビューロー、関係業者が集まるIMEを活用し、海外の旅行会社やMICEプランナーに新しい情報や訪問先を紹介した。そして、IME視察の前後では、JNTOのインセンティブ旅行促進プログラムの協賛都市の中から1~2都市の視察と商談会の実施した。

今回のインタビューは日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)とJNTOが共催したIME2014のフェアウェルパーティーで聞いたもの。出展者や海外からの参加者などが、イベントの成功を祝った。

参考記事>>>

(トラベルボイス編集部:山岡薫)

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