ツアーグランプリ2025、国土交通大臣賞は「モンゴル乗馬ツアー」、旅行する意義を掘り下げた企画が多数

日本旅行業協会(JATA)は2025年7月2日、「ツアーグランプリ2025」の受賞者発表と表彰式を実施した。大賞となる国土交通大臣賞は、風の旅行社が企画・催行するモンゴルでの乗馬ツアー「未経験者から上級者までみんなで草原集合!!ほしのいえセレクト6日間」が受賞した。

ツアーグランプリは、旅行業の企画力とマーケティング力の向上、観光立国の施策に寄与することを目的に、新規性や事業性、業界貢献度の観点で選考。31回目の開催となった今回は、2024年4月~2025年3月末までに催行された国内・海外の企画旅行と、訪日旅行で実施された企画提案が対象で、応募総数147作品(国内旅行75作品、海外旅行56作品、・訪日旅行16作品)のなかから、全12作品を表彰した。

国土交通大臣賞を授与した「未経験者から上級者までみんなで草原集合!!ほしのいえセレクト6日間」は、モンゴルを熟知する乗馬クラブと連携し、レベル別の乗馬指導や柔軟なグループ編成をするなど、乗馬の未経験者から上級者まで安全性と快適性を最適化した点を評価。少人数制と収益性を両立させ、集客層の拡大とリピート率も高めており、ロングセラーの商品だという。

同社企画販売部の山田基広氏は、同ツアーの添乗から帰国したその足で表彰式に参加。25年以上、モンゴルと関わり、「この10年、添乗員として本ツアーに同行し、お客様の声を聴いてブラッシュアップを続けてきた。本当に自慢のツアーになっている」と自信を示した。今では、募集をすると全コースがほぼ定員になるほど、同社で1番人気のツアーだという。

国土交通大臣賞は、風の旅行社のモンゴルでの乗馬ツアーが受賞。左から2番目が山本氏。プレゼンターは国土交通省 観光庁 旅行振興参事官の根来恭子氏(左)

また、今年は国内・海外・訪日の各部門別の審査委員からの短評で「価格競争から価値競争の時代へ」(東洋大学客員教授・越智良典氏 )、「旅行先の多様化と旅行目的の進化が顕著。ツアー対象を明確に意識した企画が全体を底上げしている」(トラベルボイス鶴本浩司代表)、「近年のインバウンド市場における価値観の変化を反映。ターゲットごとのニーズ分析も丁寧」(日本海外ツアーオペレーター協会会長・大畑貴彦氏)との言及があった。全体的にこれからの旅行会社のツアーの方向性を示唆するような作品が多かったという。

例えば、個人では太刀打ちできない旅行会社の組織力にものを言わせた企画だけではなく、地域との共創や関係性を深めたり、テーマを掘り下げ、ターゲットを明確かつ細分化した企画や、旅行者自身が考え、関わるプロセスを重視した設定が多く、旅行をする意味に対する意識の高まりを反映した企画などが増えてきている。

英国の「InsideTravelGroupLimited」も訪日部門の審査員特別賞を受賞。地域の小規模ビジネスと連携した文化遺産の継承と地域経済の活性化の両立、環境配慮などの持続可能な観光のモデルケースとして高評価に

具体的には、国内旅行部門で観光庁長官賞を受賞したクラブツーリズムの「『船岡温泉』貸し切り見学!タイルマニアと行く華麗なるタイルの世界 in 京都・神戸2日間」は、細分化する趣味趣向に対応したテーマ旅行、旅行の開発が高く評価された。通常は見学できない場所として個人宅も特別な訪問先に含めるなど、「タイル」マニアの心を掴み、リピーターを獲得。第二弾、第三弾とシリーズ展開にも成功した。

また、訪日旅行部門で審査員特別賞を受賞したJTBグローバルマーケティング&トラベルのサンライズツアー「富士箱根 日帰りツアー」「京都1日ツアー」「京都&奈良1日ツアー」(各インドターリーランチ付き)は、訪日観光客の困りごとである食事に目を向けたもの。社員自らがインドに赴き、現地の文化への理解を深めるところから企画をスタートし、現地監修のもとに完成させた食事を、日帰りツアーや1日ツアーに付けた。ニーズに寄り添い、多様な価値観を持つ参加者のニーズに寄り添う商品作りで、売り上げ増加にも貢献したという。

全体講評で、ツアーグランプリ2025審査委員長を務めた本保芳明氏(国連世界観光機関駐日事務所前代表)は「今年の受賞作品に共通していたのは『深さ』『広がり』『つながり』の3つの言葉に要約される。地域や文化と丁寧につながること、そして旅行者の心と深くつながることの積み重ねが、観光が社会にもたらす価値を高めていくと再認識した。これは、旅行会社が旅行商品を造成し続ける原点だとも思う」と話し、来年のツアーブランプリでも新たな価値観に溢れた商品の応募があることに期待した。

ツーリズムアワードの後には、海外旅行ブームを牽引したジャーナリスト故・兼高かおるさんの業績を称える「兼高かおる賞」の第3回授賞式も開催。イラン出身で、8歳で来日後、俳優やタレントとして活躍するサヘル・ローズさんが受賞した。ローズさんは、難民キャンプや難民居住区への訪問をはじめ、世界を旅していることを明かしつつ、世界では国籍によって自由な海外旅行ができなくなっている現状があることを指摘。「報道に載らないような多くの国を旅し、現状を伝え、この賞に恥じないような歩みをしていきたい」と話した。

ツアーグランプリ2025受賞者

【国土交通大臣賞】

  • 風の旅行社:未経験者から上級者までみんなで草原集合!! ほしのいえセレクト乗馬6日間

【観光庁長官賞】

(国内旅行部門)

  • クラブツーリズム:「船岡温泉」貸切見学! タイルマニアと行く華麗なるタイルの世界 in京都・神戸2日間

(海外旅行部門)

  • ワールド航空サービス:ヒマラヤの禁断の王国・ムスタンへの旅

(訪日旅行部門)

  • 農協観光:日出ずる国、日本の農業と文化に触れる旅

【優秀賞】

(国内旅行部門)

  • 阪急交通社:福島県浜通りの今を知る 福島第一原子力発電所内部視察と福岡県浜通りホープツーリズム3日間

(海外旅行部門)

  • クラブツーリズム:5つの文化体験へ スリランカ7日間

(訪日旅行部門)

  • JR東日本びゅうツーリズム&セールス:台湾市場向け「TOHOKU EMOTION」貸切おもてなしツアー

【審査員特別賞】

(国内旅行部門)

  • ジャルパック:旅アカデミー日本離島クラス「これからの生き方を島から学ぶ」~島の未来への挑戦~

(海外旅行部門)

  • 阪急交通社:<かつての航海士たちが目指した>夢のアフリカ大陸大周遊35日間
  • グローバル:オーロラが舞う夜空へ夢飛行 極北のカナダ ユーコンの旅

(訪日旅行部門)

  • InsideTravelGroupLimited:Majestic Japan
  • JTBグローバルマーケティング&トラベル:サンライズツアー「富士箱根日帰りツアー」「京都1日ツアー」「京都&奈良1日ツアー」インドターリーランチ付き

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