フランス・パリ市長らが日本人に「パリに来て」、テロ後の安全対策や観光施策など発表 -旅行業トップらと意見交換

パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏 (写真は記者会見より)

フランス・パリ市長のアンヌ・イダルゴ氏(写真)、イル・ド・フランス地方圏議会議長のヴァレリー・ペクレス氏らの来日にあわせ、フランス観光開発機構と日本旅行業協会(JATA)は日本の旅行業界との意見交換会を開催した。昨年末のテロ後、日本人観光客の減少が続く中、1日も早い回復を目指す行政トップの意向で実現した。

イダルゴ氏は「安全は最重要」とし、政府と協力しながらパリ市としても安全対策を強化したことを説明。観光地などに警察や軍の配備に加えて5600人の警備員を配置したほか、監視システムも強化。警戒人物を追跡するシステムも構築した。その上で「一番のメッセージはパリは人々であふれ、日常生活が戻っているということ。私自身も外食や観劇など外出を楽しんでいる。日本の皆さんにパリに来てほしい」と呼びかけた。


イル・ド・フランス地方圏議会議長のヴァレリー・ペクレス氏
(写真は記者会見より)

またペクレス氏は、現在も延長されているフランス政府の「緊急事態宣言」について、「この言葉に懸念する気持ちはわかるが、これは政府の用語。むしろ、安全管理のレベルが高い状態にあると伝えたい」とアピール。イル・ド・フランス地方圏でも空港や観光地の警備や治安対策を行なっており、特に交通面ではビデオ監視車両の導入予定など対策を強化しているという。こうした取り組みにより、観光客対象の軽犯罪も20%減少する効果があったことも明かした。


受入れ強化にも取り組む

取り組みは安全対策に留まらない。世界一の観光都市だが、旅行者の受け入れ体制の改善にも努める。「日本人観光客を重視するのは洗練された旅行者だから。迎える方も洗練したもてなしが必要」(ペクレス氏)との考えで、観光に携わる人々の研修を強化していくという。

また、観光地や交通などの案内表示も多言語化し、「観光客の母国語で迎え、情報を発信できるようにする」方針。パリ市では200人の外国語ボランティアを配置する予定であるほか、イル・ド・フランス地方圏では観光地やホテル、交通関連のオープンデータを集めた多言語アプリを提供する予定だ。

さらに、旅行者の出身地の習慣に適応したホテルやB&Bタイプの宿泊施設など、新たなホテル開発も検討。シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内を結ぶ新交通も、第三セクターで運営する計画があることも発表した。


フランス側からの「安心安全」の呼びかけを要望

IMG_3475日本側からの意見では、特に情報発信の要望が多く挙げられた。日本旅行業協会(JATA)副会長でワールド航空サービス代表取締役会長の菊間潤吾氏は、1月のフランス視察の団長として安全を確認したものの、「旅行会社が話しても商売だからと思われてしまう。今回、市長から直接『安心』のメッセージを伝えることは有効でありがたい」と、フランス側から伝えてもらう重要性を強調した。

これについては、「一時的で終わらず、恒常的な情報発信をお願いしたい。どのように観光客を守っているかなどが発信されれば、それをキャッチアップして伝えられる」(KNT-CTホールディングス執行役員・池畑孝治氏)、「日本ではテロ後の状況は伝わってこない。パリの風景や人々の魅力なども必要」(日本航空取締役専務執行役員旅客販売総括本部長・藤田直志氏)などの意見が続いた。

またミキ・ツーリスト取締役執行役員の今野淳子氏は、日本人に伝わりやすい情報発信のためにも、パリ市長の直轄で観光担当のスタッフを置くことを提案。同社の日本人スタッフをサポートとして送り、一緒に誘致をしていきたい考えを示した。「日本人は臆病だが、旅行先から温かな気持ちが伝わると心が動く」との考えからだ。

こうした要望を受け、イダルゴ氏は「それぞれの内容を研究し、行動に移していく」と語った。


日本人のパリ旅行の現状は

IMG_3491イダルゴ氏によると、2015年11月13日の同時多発テロ後2か月間の日本人旅行者数は、前年比22%減少。他の市場と比べて減少率が大きかったという。現在は回復傾向にあるが、その他の市場には及ばない。実はテロ後、フランス国内の旅行需要も減少したが、その後のキャンペーンの結果、現在はほぼ回復しているという。

日本側の発表でも、テロ後のキャンセルで大きな影響を受けていることが聞かれた。しかし、エイチ・アイ・エス(HIS)では2月6日から開始した「We Love Paris キャンペーン」の効果が出始めているようだ。

執行役員・波多野英夫氏によると、同社のパリ方面の送客は2016年1月、前年比3割程度に落ち込んだが、同キャンペーンで低価格の商品を販売したところ完売。新設定日を設けるほど集客が伸び、前年比では7割にまで戻ってきた。3月下旬以降にはエールフランスやフランス観光開発機構との大規模な広告展開を行ない、新商品も販売する予定。HISではこうしたキャンペーンに力を入れることで、業界全体でパリへの大きな集客ができるような取り組みにしたいと考えている。

なお、意見交換会には、フランス側は来日した11名と駐日フランス大使のティエリー・ダナ氏の計12名が参加。日本側はJATA会長の田川博己氏(JTB代表取締役会長)をはじめ旅行会社や航空会社、ホテルなどの代表ら21名が参加した。

取材:トラベルジャーナリスト 山田紀子

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