観光庁、旅行会社の監督強化へ、通報窓口や毎年決算書提出など、てるみくらぶ破綻受け弁済制度の見直しも

観光庁は、てるみくらぶの経営破綻を踏まえ、再発防止と消費者保護を目的とした議論で方向性を取りまとめた。海外旅行を企画・募集する第1種旅行業者に対する監督を強化するもの。また、旅行会社破綻の際の弁済制度の水準を引き上げる。今月中を目途に弁済制度の具体的な数値水準を設定し、今回の方針をもとに早期の制度設計を目指す。

この方針は「新たな時代の旅行業法制に関する検討会」で有識者による議論が進められてきたもの。検討会では、(1)企業のガバナンスのあり方、(2) 旅行会社の倒産の際に被害者が受けられる弁済制度のあり方、の2つの大テーマを論点として議論が重ねられてきた。その中で新たに示された方向性は以下だ。

1. 経営ガバナンスの強化

経営の健全性確保 -観光庁による経営状態把握を強化、通報窓口も

旅行会社には、旅行業登録の更新時(5年毎)に行われる監査とともに、1年に1度の決算申告書と納税証明書などを観光庁に提出することを義務づけられる。観光庁は、提出された書類を公認会計士らが監査する体制を整え、必要に応じて日本旅行業協会(JATA)や全国旅行業協会(ANTA)が経営状況の調査を実施するという流れだ。

また、観光庁への登録更新時にも公認会計士などが提出書類と総勘定元帳などを突合せした結果を添付する手続きを導入する。観光庁としては、こうした制度が導入されることで悪質な経営や旅行販売などの抑止力になることに期待する。

さらに、第3者機関の通報窓口を新たに設置し、企業内部や他企業からの通報を受け付ける。窓口は、既存の業界団体などを軸に有識者や専門家などによって新たな組織を結成し、通報内容を精査する。

こうした制度のもとに観光庁が調査をできる体制を整え、悪質な経営や業者が発覚した場合には行政指導や業務改善命令などを行う。

ツアー広告の不適切表記についてガイドラインに追記

てるみくらぶが「現金一括キャンペーン」などで消費者の購買をあおる広告表示で販売を拡大していた経緯から、不適切な広告への対応も。観光庁は、JATAに対して「旅行広告・取引条件説明書面ガイドライン」に、今回のような広告が不適切であることを追記するよう要請する。また、消費者庁との連携で、このガイドラインの消費者に対する認知を挙げる取り組みを行う。

旅行業の「企業ガバナンスガイドライン」を策定

観光庁は、JATA/ANTAに対して新たに「企業ガバナンスガイドライン」を策定することを要請する。旅行業者の経営のあり方を示すもの。

ガイドラインでは、広告・パンフレットに対して前受け金の支払期間や利用目的を具体的に記載することを示すよう促す。てるみくらぶは、かなり先の予約まで前受け金として現金の支払いを旅行者に求めていた。それによって被害が拡大したこともあり、前受け金に対する議論がなされていた。

なお、ガイドラインには宿泊施設やランドオペレーターの支払いで遅延が生じないよう記載。てるみくらぶの案件では、破たん時の旅行者が現地のホテルに2重の支払いを求められていたことを受けて、見直しを促す方針だ。

2. 弁済制度のあり方見直し

弁済業務保証制度の水準引き上げへ

てるみくらぶの被害者数が異例の数にのぼったことにより、被害者への弁済が支払った旅行代金の1%にしかならなかった問題で、保証制度のありかたが検討されてきた。その結果、1種旅行業の弁済業務保証金制度の弁済金・補償金の水準が引き上げる方向性がきまった。

その水準については、一律でなく企業の売上規模毎に検討し、今月末には具体的な数値を見出す予定だ。その具体策によって、企業の任意加盟となるボンド保証制度のありかたも検討する。ボンド保証制度については、JATA/ANTAの会員向けの保証となるため、今回は意見をとりまとめるところまで。

保険商品は特約の設定に期待

旅行者個人を対象に、出発した旅行者が旅行業者の経営破綻などによって緊急に支出した場合の保険の新設なども検討されてきた。この保険自体の新設は難しいと判断されたが、特約の中で対処できないか、引き続き検討をすすめる。

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