ソフトバンクとホテル客室の無料スマホ「handy」が資本提携、「旅行IoT」でビックデータ分析やタビナカ領域事業の拡大へ

ソフトバンクグループは、ホテル客室など旅行者にスマートフォンを無料で貸し出すhandy Japanに出資し、ソフトバンクの法人営業チーム3000名で全国のホテルや旅館などの宿泊施設に向け、セールスを開始する。両社は2018年7月2日に記者会見を開催し、資本業務提携を発表した。ソフトバンクがhandy Japanおよび同社の持株会社であるhandy Japan Holdings Company Limitedの第三者割当増資を引き受ける。出資額は非公表。

handyはホテル客室に備え付けの無料レンタルスマートフォンサービスで、世界82か国のホテル約4000軒・約65万室に導入。日本では2017年7月のサービス開始後、1年間ですでに国内ホテルの約3割にあたる1700軒・約24万室に導入しており、年間8600万人に対して直接のリーチポイントを持つという。

ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏は、会見で開口一番にhandyの1年間の実績に触れ、「これをソフトバンクが通信だけではなく、我々の技術とセールスパワーをもって一緒に展開すれば、1年で10倍くらいになる。それが協業を決めた理由」と述べ、全国シェアを取っていく方針を強調。ソフトバンクの法人営業チームが一気に営業推進していくことで「来年どうなるか楽しみ」と、その結果に自信を示した。

handy Japan最高経営責任者の勝瀬博則氏によると、これまで同社ではホテル客室の無料スマホレンタルに注力して推進してきたが、今後は従来の無料レンタルを含む「Hotel IoT」に加え、旅行者向けのタビナカ予約や旅行・宿泊商品販売、エンターテイメントコンテンツの販売といった「Travel Agent」、ホテル宿泊客に限定した広告やデータビジネスの「Media」の3つの領域で、旅行の総合プラットフォームとして展開することを発表。「タビマエからタビナカ、タビアトの新しい旅行のエコシステムを作る。旅行業界に革命を起こす」と、意気込む。

handyが提供する3つのサービス機能。プレゼンするhandy Japan勝瀬氏

ソフトバンク宮内氏も、この点がソフトバンクとして期待する分野であることを強調。IoT、AI、ロボティクスなど、ソフトバンクの注力分野との親和性が強く、上記3分野でソフトバンクのデジタル化したサービスをhandyに乗せていく。宮内氏は、handyを「無料スマホではなくIoTプラットフォーム」と表現した上で、「以前はスマホ、いまはIoTがビジネスそのものを変えており、どんな分野のビジネスも再定義が必要になる。そういう意味でhandyはホテルの宿泊体験とビジネスを再定義した素晴らしい人たち。それが特に弊社が出資と協業をしたいと思った理由」と、handyの今後の可能性をアピールした。

ソフトバンクの注力分野をhandyでも提供。プレゼンするソフトバンク宮内氏

今後、ソフトバンクでは顧客基盤と販売チャネルを活用し、販売代理店としてhandy事業を推進。同時に、handyのIoTで発生するビッグデータを分析し、新サービスの開発を行なっていく。まずはホテル「マイステイズ」に導入して、宿泊事業者と宿泊客の双方のニーズや導入効果の検証を行なう。

handyの3つのサービス領域でできること

勝瀬氏によると、「Hotel IoT」ではPMS(ホテル管理システム)と連動し、客室のスマートキー機能やルームコントロール、インダイニングシステムから、チェックイン/チェックアウト、宿泊精算業務の自動化などを提供する。

「Travel Agent」ではタビナカの商材や着地型旅行商品の販売も実施。宅配やサービスとの配車連携から、レストランやアクティビティの予約や交通・宿泊商品の販売などの販売を行なう。Handyとして、旅行のインフォメーションポータル「LUXOS」も設ける予定。一方、ソフトバンクもヤフージャパンなどの持つトラベル領域ともリンクさせる考え。

「Media」では、タビナカ関連の広告主からの情報配信やクーポン提供のほか、VRコンテンツのプラットフォームで、バーチャル体験コンテンツの配信やビデオオンデマンドコンテンツを提供。また、災害時の情報提供なども行なう。先日の大阪北部を中心とする地震の際には、関西エリアの端末に情報メッセージを配信し、配信したうちの半数が開封され、災害情報が掲載しているホームページに誘導できたという。

さらにhandy自体の機能として、無料通話や無料Wi-Fiだけでなく、無料デザリングも国内の全端末で提供。タビナカなど現地での支払いを不要にする決済サービスも用意することで、handyを介した予約や購入で発生する支払いはホテルの“部屋付け”のようなイメージで活用してもらえるとする。

ソフトバンクのプレゼン資料より

勝瀬氏は、これらの機能提供で、旅行者には新たな宿泊体験を提供すると同時に、宿泊事業者には業務効率化を実現。人手不足の状況下で、「本来、人のサービスを強化したかった部分に人のリソースを投下できるようになる」と話し、handyを通じて旅行とホスピタリティ産業のソリューションを提供し、観光立国を推進する存在になることをアピールした。

右から)ソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏、handy Japan Holdings Company Limited代表取締役社長のテレンス・クォック氏、handy Japan最高経営責任者の勝瀬博則氏

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