世界の富裕層が求める宿泊体験とは? 最高級ホテル連合トップに「デジタル戦略」から「脱OTA」まで聞いてきた

フランスを拠点に世界の独立系最高級ホテルが名を連ねるホテル連合のルレ・エ・シャトー。パリとニースを結ぶ国道7号線上にある8軒のオーベルジュのオーナーたちが結んだパートナーシップからスタートした組織は、現在では世界60カ国で580軒のホテルやレストランがメンバーとして名を連ね、欧米の富裕層から高い評価を得ている。

その同組織フィリップ・ゴンベール会長が、先ごろ来日。世界の富裕層を知り尽くした会長に、富裕層旅行者へのアプローチの鍵やテクノロジーとヒューマンタッチの融合について聞いた。

米国ではBtoB契約条件に、“OTAと取引がないこと”も

ルレ・エ・シャトーにとって最大の市場は米国だ。米国では富裕層というニッチマーケットに特化した旅行会社が多数あり、こういった旅行会社経由でルレ・エ・シャトーのメンバーホテルに予約が入るケースが多い。ルレ・エ・シャトーが米国内で行われる商談会などに参加すると、来場する旅行会社の担当者からは「OTAとの取引の有無を問われることがあり、『ない』と答えると商談が始まるケースもある」(ゴンベール会長)という。

これらの旅行会社の顧客は、価格をほとんど気にせず価値のあるものに対価を支払うことを惜しまず、OTAで誰もが泊まれるホテルではないところに価値を見出す真の富裕層が多いからだ。

単価の高いルレ・エ・シャトーに送客すれば、それだけ多くのコミッションが旅行会社に入ることもあり、ゴンベール会長は「富裕層というニッチマーケットに特化した旅行会社とつながりを深め、お客様、旅行会社、ルレ・エ・シャトーのメンバーの全てにメリットとなる関係を築きたい」と語っている。

デジタル全盛の時代にあって、一見すると逆行しているように映るが、真の富裕層市場を狙うには、“脱OTA”や“ニッチマーケットへの特化”など、誘客のポイントが違うことを示している。

テクノロジー駆使も宿泊客には見せない信念

富裕層市場をターゲットとするビジネスに長い間携わってきたゴンベール会長は、「20〜30年前と比べると予約方法が変わってきた。全てではないがオンライン経由も確実に増えている」と近年の変化を実感。そのため、今では9カ国語に対応したスマートフォン用アプリを作るほどデジタルマーケティングに注力している。これらのデジタル関連技術は「進歩に送れないよう、ルレ・エ・シャトーでも取り入れていくべきもの」(ゴンベール会長)として、今後も投資を続けていく考えだ。

直近のデジタル強化策として、2019年を「デジタル戦略の年」と位置づけ、加盟ホテルごとにオンライン上でのプロモーションを展開する予定。しかしゴンベール会長は、「このプロモーションはディスカウント(価格訴求)を意味するものではない。各ホテルの特徴や周辺での体験などを全面に出すことで、ルレ・エ・シャトーのブランド価値を理解してもらう」と強調する。

では、ゲストを接客する現場での対応はどうか?

ゴンベール会長自身が経営するのは、フランスのシャトーホテル。その性格上、宿泊客の多くが非日常の雰囲気を期待していることもあり、最新のテクノロジーを取り入れても接客の現場で宿泊客にはできるだけその存在を見られないよう配慮しているのだという。

世界の富裕層は日本に来てくれるのか?

ここ数年、年間の訪日外国人旅行者数は過去最高を更新し続けている。一方で、滞在中の消費額が大きい富裕層の割合が少ないことも指摘されている。その一因として挙げられているのが、「富裕層向け宿泊施設が少ないこと」である。

しかしゴンベール会長はこの状況を「日本のインバウンドの急速な成長に起因する一時的な現象」と見ており、いずれこの状況は改善に向かうと悲観的には捉えていない。これから、需要にあわせて増えていくだろうとみている。

ルレ・エ・シャトーは日本にもメンバーが20軒(うち9軒はレストランのみ)あり、いずれも「料理や温泉など日本独自のものがあり、世界の富裕層を満足させるだけのハイレベルなサービスを提供している」と胸を張る。ルレ・エ・シャトーは日本への旅行に関心の高い富裕層は多いと見ているため、「5年以内にホテルだけであと10軒は増やしたい」(ゴンベール会長)と意気込んだ。

ゴンベール会長の言葉には、日本への富裕者層の誘客にヒントが詰まっている。

聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫

記事:高原暢彦

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。