今、観光マーケターが取り組むべきことは? 「JAL」「じゃらん」「ゆこゆこ」の事例から「観光業界の特有の課題」まで聞いてきた

トラベルボイスLIVE特別版:開催レポート

トラベルボイスは「観光業界におけるデジタルマーケティングの活性化」をテーマにトラベルボイスLIVEを開催した。マーケティングオートメーション(MA)の専門企業チーターデジタル社と共催で行ったもの。イベントでは、実際にデジタルテクノロジーを活用して成果を挙げている観光関連の企業を招き、「いま観光マーケターが取り組むべきこと」について議論を深めた。

マーケティングテクノロジーの進化によって、観光業界でも顧客にリーチする方法は飛躍的に高度化し、その効果も確実に現れている。イベントで語られた具体的な事例をレポートする。

デジタルマーケティングは、導入前に目的を明確に

基調講演では、トラベルボイス編集長・山岡薫がモデレーターを務め、チーターデジタルの北村伊弘氏とシニア層から圧倒的に支持されているOTAゆこゆこホールディングスの小堺秀真氏が登壇。デジタルマーケティングの最新トレンドや活用事例が紹介された。

チーターデジタルの北村氏は、最新のトレンドとして、さまざまなツールからのデータを統合してマーケティングの業務を効率化し、営業や販売とデータを共有する「マーケティングオートメーション(MA)」を紹介した。MAは、行動ターゲティングやビッグデータなど、マーケティングへのデータ活用の機運の高まりと共に発達し、クラウド化が進むことで選択肢も広がり、この市場は2017年にメールなどのレガシー手段の市場を超えたという。

MA活用の本質は、「さまざまなデータを統合させること」、「メールやLINEなどコミュニケーションチャネルを統合させること」、そして、「コミュニケーションの中身として、販促だけではなく全ての会話を統合させること」と強調した。

(左から)小堺氏、北村氏、トラベルボイス山岡

ゆこゆこの小堺氏は、同社が実際に取り組んでいるマーケティングの3つの方針について説明。まず、タビマエからタビアトまでの一気通貫のデータ蓄積に務めることで顧客理解を進めていると紹介し、「予約の情報だけでは、顧客の趣向を掴むことは不可能。予約前のモチベーションの段階の情報も必要」と明かした。

また、デジタルとリアルの融合では、顧客一人ひとりをさまざまなアクションをベースとしたデジタルと、対面接客などのリアルとを合わせ、シームレスなコミュニケーションを目指しているという。

さらに、顧客の「価値」の可視化と創造では、統合データベースをもとに必要な情報や最適なプランを最適なタイミングで提供し、顧客に対して価値を明瞭にすることが重要であることを強調した。

そのような方針のもと、マーケティング基盤を整備するなかで、小堺氏は「いろいろなツールを入れても意味がない。『目的を達成するため』にツールを導入することが大前提」であるうえで、「ゆこゆこらしさ」を創造するためにはコンテンツの生成など「デジタルだけでなく、手動もカギになる」とした。

同社が顧客に配信するメールマガジンは、予約完了から宿泊前日まで定期的にさまざまなタイミングで送信するが、その開封率は81.8%と高い。さらに、宿泊施設チェックアウト直後には、「手書き」のメッセージを加えることで87%にまで上がり、CTR(クリック率)も42.4%になったという。

小堺氏は「顧客に寄り添ったことを実践することで効果が上がる」と強調。ゆこゆこでは、閲覧履歴から顧客一人ひとりのデータを取得し、件名をパーソナライズ化し、趣向に合わせてリアルタイムにレコメンドする宿泊施設をメールマガジンで配信している。これにより、「開封率」のKPIは通常の最大3.9倍、「CTR」のKPIは通常の最大4.5倍になったと明かした。

ゆこゆこの実例をもとに、北村氏は「まず要件定義をしっかりすることが大事。達成すべき目的が何であるかを定めることが効果にもつながる」と話すとともに、日本はMAが遅れているとし、これを実践するためには「社内でのリーダーシップが必要」と強調した。

じゃらんが進めるパーソナライズCRMとは

リクルートライフスタイル木戸秋氏

リクルートライフスタイルの木戸秋圭太氏と宮本薫氏は、同社が実践するCRM(Customer Relationship Management)について紹介。「じゃらんnet」で実践しているカスタマー目線でのパーソナライズについて説明した。木戸秋氏は、CRMの役割について、「LTV(Life Time Value)最大化のためにカスタマーごとに施策を変えること」とし、そのためにはパーソナライズが必要だと強調した。

パーソナライズの考え方として3つの重点を指摘。まず、カスタマーIDごとにデータを分析してニーズを把握することが必要とし、カスタマーIDと、それぞれの閲覧、アンケート回答、予約のデータを紐づけ、その因果関係を分析。フリー回答もセグメントごとにテキスト解析する。

また、「じゃらんnet」だけでなく、他事業のデータを集約して、横断的に紐付ける。さらに、どういったタイミングで需要が発生するかをパーソナライズするが、さまざまな施策を実施するとコミュニケーション過多になり、逆に顧客が離れていく可能性があるため、コミュニケーションを減らすというマイナスの視点も必要とした。

このほか、パーソナライズを実現するために必要なデータとして、属性のほかに、サイト閲覧、閲覧アイテム、アクションなどの行動情報、サイト別の閲覧エリアもサービス別の商圏などの地理情報、ポイント感度、高級志向、オーガニック好きなど嗜好情報を挙げ、さらに嗜好性については、位置情報データから顧客の日常的な行動を把握し、嗜好性を分類・予測することも進めているという。

リクルートライフスタイル宮本氏

宮本氏は、パーソナライズの実例を紹介。たとえば、顧客の記念日に合わせた旅行のレコメンドでは、じゃらん会員の属性データ、予約データ、閲覧データのほかに他事業の予約データを基に、記念日を予測したうえで、旅行提案をしたところ、それをしなかったグループと比べて約2倍の予約アクションが創出されたという。

また、メール配信量の最適化では、さまざまな学習データから、配信の相手、内容、時期をそれぞれ分析し、プラスとマイナスの影響を蓄積し、最適な配信量を予測しようとしている。さらに、より高度なパーソナライズには、Who、When、Whatに加えてどのようなチャネル/デバイスで配信するかのHowも重要だとしたうえで、「じゃらんでもHowはまだ改善の余地はある」との見解を示した。

JAL、ダイナミックメール施策でCTRもCVRもアップ

(左から)JAL大竹浩文氏、高山裕基氏、MovableInk 春日知沙氏、吉澤和之氏

ダイナミックメールコンテンツ・サービスを提供するMovableInk (ムーバブルインク)とそのクライアントである日本航空(JAL)とのパネルディスカッションでは、MovableInkの運用や効果について意見が交換された。

MovableInkとは、場所、時間、天気、気温、デバイスなどさまざまな状況の変化に応じてダイナミックにメール画像や内容を可変するもの。ツイッター、インスタグラムなどあらゆるチャネルと結合するという。JALは昨年当サービスを契約した。

JALは、ダイナミックメールの実例を報告。昨年実施した「プレミアムフライデー限定企画」では、販売締め切りを示すカウントダウンタイマーを設置したところ、CTRは54%アップ、CVR(コンバージョンレート)も8%アップした。また、グアム便増便の際に実施した販促では、チケット風のデザインでユーザーの名前を表示したところ、CTRは16%アップ、CVRは18%も上がったという。

JALの高山裕基氏は、今後やりたいこととして、「最安値運賃は状況に応じて変動するため、お客さまがメールを開封した時点での最安値を表示できないか」と明かした。また、メールマーケティングで大事なこととして、一歩先を行く価値を創ることを指摘。「ちょっと気の利いたメールで、お客さまに喜んでいただきたい」と主張した。

MA活用事例、ホテルのロイヤルティ会員獲得で効果

チーターデジタル是枝氏

「観光業界で導入されているマーケティングテクノロジー」というテーマで行われた事例講演では、チーターデジタルの是枝達彦氏が、マーケティングオートメーション(MA)による課題解決の実例を報告した。

是枝氏は、観光業界特有のマーケティング課題として、「客層が幅広くセグメントが難しい」「購買後のキャンセル率が高い」「データが多様化し、顧客の一元管理が困難」「在庫を持ち越せないため、タイムリーな情報配信が必要」の4点を挙げた。

そのうえで、数年前に同社のCCMP(Cross-Channel Marketing Platform)と呼ばれるMAを導入したハイアットを実例として紹介。ハイアットは、予約単価や予約頻度を上げるためロイヤルティプログラムの活性化と顧客体験を向上させるためのタイムリーなコミュニケーション設計に課題を持っていたという。

そのソリューションとして、ロイヤルティプログラム非会員に対してPreference Centerを設定。ホテルのWi-Fiに接続した時点で、希望の情報やコンテンツを選択するページを組み込んだ。

その回答からメールコミュニケーションの土台を作り、その後モチベーションの高いタイミングでロイヤルティプログラムへの招待メールをゲストの個人名を記入したうえで配信。

CCMPでは、メルマガなどの「一斉メール」、予約/変更/キャンセル、支払い明細などの「トランザクションメール」、Webアクションを基にして予約を促す「シナリオメール」をひとつのプラットフォームで完結することができる。また是枝氏は「チーターデジタルはプラットフォーム提供に加え、メッセージの配信設定、配信クリエイティブのテンプレート作成、レポートなど包括的にメールマーケティングを支援している」と強調した。

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