米国の観光産業、バイデン氏の大統領選当確を歓迎、旅行業支援の姿勢を評価、刺激策を要望【外電】

写真:AP通信

コロナ禍の中、アメリカの旅行業界の経営者たちは、何ヶ月にもわたって、「リセット」「戦略の転換」「再始動」などといった言葉にしがみついてきた。彼らは、その言葉が現実になってくれるように願っていたが、ホワイトハウスには旅行業界の回復に向けた方向性が欠けていたため、危機からの本当の回復は程遠いと感じている。

しかし、第46代大統領にジョー・バイデン氏が、副大統領にカマラ・ハリス氏が就任することになったことで、アメリカだけでなく、世界の旅行業界のリーダーのあいだでは、将来の明るい見通しに期待が高まっている。

航空・旅行各社トップのコメントは?

4年前、ドナルド・トランプ氏が大統領が就任したときの熱狂は旅行業界にはなかった。トランプ氏は、移民で強硬な政策を進め、その後イスラム諸国からの入国を禁じるなどしたため、旅行業界は憂慮を深めた。

トリップアドバイザーのスティーブ・カウファーCEOは、トランプ氏の移民政策について発言をしてきたが、バイデンの勝利が確実となった日にツイッターで「民主主義の品位を取り戻してくれたことに感謝する」とつぶやいた。

エクスペディア・グループのピーター・カーンCEOは米・観光専門ニュースメディア「スキフト」に対して、「今回の結果から明らかになったのは、我々はイデオロギー的に分断された国に住んでいるということ。そして、議会も上院と下院でねじれるだろう。しかし、両党のリーダーが結束して、旅行業界やホスピタリティ業界などで苦境に陥っている人々やビジネスを助けてくれることに期待している。ハリス氏は、アメリカ初の女性副大統領であり、初めてのアフリカ系アメリカ人、初めての南アジア系アメリカ人の副大統領でもある。このことは、平等に向けた大切なステップであることは否定できないだろう」とコメントした。

カヤックのCEOでオープンテーブルの幹部も務めるスティーブ・ハフナー氏は、「他の人たちと同様に、選挙後政治が分裂しないことを願っている。新型コロナウイルス対策、景気刺激策、特に旅行業界や飲食業界への迅速な支援に期待している」と語った。

ユナイテッド航空のスコット・カービーCEOは、先週末にバイデン氏に祝辞を送ったことを明かした。「今後4年間、我々が協力して解決していかなければならない課題があるのは確かだが、我々はこの国の経済、そして環境の課題解決に向けてワシントンのリーダーたちと協力していくつもりだ。どの国にもアメリカと同様に多様性がある。私は、分断させるものよりも、団結させるものの方がはるかに多いと信じている」と述べている。

ホテル業界やアムトラックでもバイデン氏に大きな期待

バイデン氏に対する期待はホテル業界でも大きい。アメリカ最大級のホテル業界の労働組合「ユナイト・ヒア」は、大統領選で、激戦州のペンシルバニア州の57万5000戸を含めて、全米で300万戸を個別訪問し、バイデン氏への投票を呼びかけた。

アメリカン・ホテル&ロッジング協会(AHLA)のシップ・ロジャーCEOは、「AHLAは、バイデン次期大統領や議会とともに課題を解決していくことを楽しみにしている」との声明を出した。

しかし、来年1月に新大統領が誕生したとしても、新型コロナウイルス救済法案にあまり大きな期待はできないかもしれない。選挙前から、議会は分断され、そのために法案審議も行き詰まっていたが、それが選挙後も続くかもしれない。共和党が上院の多数を占めれば、本質的に状況は変わらない。

それでも、バイデン氏は、議会の承認がなくても、今後発表が予想される新型コロナウィルス・タスクフォースを含めて、いくつかの取り組みを公約として実行することは可能だ。国主導の検査プフログラム、安全対策の強化、労働者保護などは、行政措置として実施することができる。

バイデン氏は、自宅があるデラウェア州ウィルミントンからワシントンDCまで、アムトラック(全米を走る鉄道)で通勤していたことは有名な話だ。そのアムトラックも新型コロナウイルスによって大打撃を受けている。2020年4月の利用者数は前年比95%減。今でも状況はあまり変わらず、75%減に落ち込んでいる。アムトラックでは、2021年も前年比60%減で推移すると見ている。

アムトラックは、2020年3月に救済資金として10億1800万ドル(約1072億円)を受け取ったが、2021年にはさらに14億7500万ドル(約1550億円)の追加資金が必要になると訴え、これがなければ、さらに2400人の従業員を解雇せざるを得ないと警告している。

アムトラックでは、バイデン氏が環境政策を重視する姿勢を示していることから、同社ビル・フリンCEOは、「脱炭素社会に向けて我々の輸送ネットワークは不可欠」と訴えている。

一方、全米旅行協会のロジャー・ダウCEOもバイデン次期大統領を歓迎するとともに、旅行業界の苦境を改めて訴え、「パンデミックで最も影響を受けた旅行業界を支援するというバイデン氏の姿勢を称賛する。旅行業界はアメリカの失業全体の3分の1以上を占めており、旅行ビジネスを救済し、旅行需要を刺激する政策はアメリカの景気回復に不可欠だ。迅速で信頼性の高い検査を拡大することは、経済再開とって重要な要素になる」とコメントしている。

※ドル円換算は1ドル104円でトラベルボイスが算出

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Travel Execs Upbeat About Prospects Under a Biden-Harris White House

著者: トム・ローリー(Tom Lowry)、Skift

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