欧州で夜行列車専門の鉄道会社が登場、環境配慮で出張者がターゲット、短距離フライトは終焉か 【外電】

オランダのスタートアップ鉄道会社「ヨーロピアン・スリーパー(European Sleeper) 」は、2022年に夜行列車に特化した運行サービスを立ち上げる。現在の計画では、プラハを夕方出発し、ドレスデン、ベルリン、アムステルダムを経由し、翌朝にブリュッセルに到着。復路はブリュッセルを夕方に出発する。

ヨーロッパでは、環境に配慮したビジネス旅行の需要が高まっており、「飛び恥(飛行機で移動することは恥ずかしい行為)」という言葉に代表されるように、飛行機に変わる交通手段が注目されていることから、ビジネス化が可能と判断した。

同社共同設立者のクリス・エンゲルスマン氏は「ブリュッセルにあるさまざまなEU機関からの需要があると思う。公共機関だけでなく、民間企業も二酸化炭素排出の削減に向けて、『グリーントラベル』を模索している」と話す。

ヨーロピアン・スリーパーのパートナーであるチェコのRegiojet社はすでに、運行開始に向けて関係当局との調整を続けているところだ。

快適なベッド、ビジネス旅行者に合わせた運行頻度、夕方出発・早朝到着のスケジュールなどに対するニーズは高いと見られていることから、ヨーロピアン・スリーパーの市場参入は理にかなっていると言われている。

ヨーロッパの旅行業界では鉄道旅行が見直されており、以前よりも真剣に鉄道旅行を扱い始めている旅行代理店も多い。2018年には、Travelperkが鉄道旅行向けの新たなアプリを開発し、昨年の6月にはTripActionsが、B2B鉄道テクノロジー・ソリューションを提供するTrainline for Businessesと提携した。

シャトルフライトの終焉?

ヨーロピアン・スリーパーのような民間企業だけでなく、国営の鉄道会社も同様の動きを見せており、ドイツ、オーストリア、フランス、スイスの国営鉄道は、13都市を結ぶ新たなプロジェクトに計6億500万ドル(約662億円)を投資している。

エールフランス航空は、2時間半未満の路線では高速鉄道と競争することをやめ、フランス国鉄SNCFと協力し、相互運行とフライトとの接続を高める取り組みを進めている。同航空CEOのアンヌ・リゲル氏は、「環境への意識ますます高まっている。航空会社の優先順位として、もっと多くのやるべきことがでてきた」と話している。

同航空は、4月6日にフランス政府から総額47億ドル(約5140億円)の救済を受けたが、その代わりとして多くの短距離路線を放棄すると見られている。

KLMは、2019年に鉄道旅行を推進する「Fly Responsibly」を立ち上げ、ルフトハンザはドイツ鉄道と協力し、各空港と高速鉄道との接続性を高める取り組みを進めた。

課題は鉄道旅行の流通?

鉄道の課題のひとつは、航空ほど洗練された予約システムがないことだ。

ある専門家は「ヨーロピアン・スリーパーが成功するには、自社コンテンツを航空と高速鉄道とシームレスにつなげることが必要になってくる」との見解を示す。

Travelperkは、予約プラットフォームを立ち上げた時、1日に平均5万件の旅程オプションがあることを発見した。同社UIデザイナーのクリス・ロイ氏は「2時間以内の固定時間枠で検索する仕組に設計し直した。当初はそんなことになるとは思っても見なかった」と当時を振り返る。

ヨーロピアン・スリーパーは、停車駅がバックパッカー向けの都市であることから、ビジネス旅行よりもレジャー旅行で好まれるのではないかとの声もある。また、長距離の出張の機会は減り、日帰り出張が主流になるとの見方もある。

また、路線の課題もある。ヨーロピアン・スリーパーは、EUから離脱したイギリスを含め、もっと多くの都市を結ぶ必要がある。アムステルダム運輸当局のプロジェクト・マネージャーでもあるエンゲルスマン氏は「ユーロスターと接続するために、乗り継ぎチケットを検討したい」と話す。

このほか、飛行機のビジネスクラスでは豪華な機内食やWi-Fiサービスなどビジネス旅行者にとって魅力的なプロダクトが提供されているが、夜行列車にはどういったサービスが含まれるのかまだ明らかにされていない。鉄道はこれまで二流の交通手段とみなされてきた。

エンゲルスマン氏は、ヨーロピアン・スリーパーの立ち上げに向けて、今後BTMなどビジネス旅行専門の旅行会社から意見をもらい、車内サービスを考えていくとしている。

*ドル円換算は1ドル109円でトラベルボイスが算出

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:This European Sleeper Train Service Wants to Win Over Corporate Travelers

著者:マシュー・パーソンズ(Matthew Parsons)

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