HIS子会社のGoTo不正、HIS経営陣が語った見解と今後、調査委員会がまとめた2社の旅行取引の実態と背景

エイチ・アイ・エス(HIS)連結子会社2社(ミキ・ツーリストとジャパンホリデートラベル)のGoToトラベル不正受給疑惑は、HISが設置した調査委員会の調査で事実と認定された。

調査委員会は、両者の問題の根幹が異なることを指摘。ミキ・ツーリストの旅行取引では、同社と外部のホテル運営会社(JHAT)が共謀してGoTo給付金を不正に受給し、折半しようとしたことが、組織的に計画されたと説明した。一方、ジャパンホリデートラベルの不正受給はJHATが主体となって計画したもので、ジャパンホリデートラベルの関与は極めて従属的だったと説明した。

問題となった両社の取引内容と調査委員会、およびHISの見解をまとめた。

ミキ・ツーリストの事案

【契約内容】

ミキ・ツーリストは2020年10月、JHATとホテル客室の買取契約を締結。客室20室(1室4名定員)60泊分を計8160万円(1室1泊6万8000円)で契約し、ミキ・ツーリストはGoTo割引適用後の代金5304万円(旅行代金総額の65%)をJHATに支払った。ミキ・ツーリストはJHATから、地域共通クーポン1224万円分(旅行代金総額の15%)を受領した。

この客室買取契約でのGoTo事業の給付金額は、旅行代金の割引額(総額の35%)にあたる2856万円と地域共通クーポン1224万円をあわせ、4080万円になる。(調査委員会では、JHATに給付金が全額交付されたかは把握していない)

しかし、同契約で実際に宿泊がされたのは、延べ4800泊中114泊のみで、支給要件を満たしていなかった。

【取引の実態】

ミキ・ツーリストは本契約に至った理由を、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにあわせてJHATと締結していた客室買取契約のキャンセルに対する対価を、JHATから要求されたためと説明した。しかし、調査委員会はその説明を退け、GoToの給付金を折半する目的で共謀して契約したものと認定した。

調査委員会は調査を続けるなかで、両者の間にJHATがミキ・ツーリストに6354万円を支払う「協賛金契約」が結ばれていたことを突き止めた。この協賛金契約は、JHATのホテルをミキ・ツーリストが欧州やアジアで販売促進する目的で締結したもの。締結時期は、客室買取金額と同じ2020年10月だ。この契約も、締結から1年経つ現在も履行がされておらず、実体のない契約だった。

協賛金契約と客室買取契約、GoTo関連の給付金等をあわせた両社の収入と支出の差額は、ミキ・ツーリストは1920万円、JHATは2160万円で、それぞれ近い金額の収入を得ることが判明した。調査委員会は、今回のミキ・ツーリストとJHATの契約は、申請によって得た給付金を両社で折半する(給付金の不正受給)目的で締結されたものと認制せざるを得ないと結論付けた。

ジャパンホリデートラベルの事案

【契約内容】

ジャパンホリデートラベルでは、GoToトラベル事業に登録後、給付枠8億7610億円が付与されていた。今回の不正受給は、この給付枠でおこなわれたものだ。

対象の旅行取引は、法人企業4社に対する受注型企画旅行での研修付き宿泊契約。1人1泊4万円で、4社計5万5053人泊。販売総額は22億210万円に及んだ。法人企業4社はそれぞれジャパンホリデートラベルに、GoTo割引後の旅行代金を支払った(4社計14億3137万円)。

この受注型企画旅行に対するGoTo事業の給付額は、7億7074万円になる。しかし、ジャパンホリデートラベルが受け取った給付金は、10月分と11月分の計3億1249万円のみで、12月分で見込まれていた4億5824万円は未支給となっている。一方で、地域共通クーポンは3億3000万円分(概算)の支給を受け、JHATと宿泊施設に送付した(その先の行方は不明)。旅行割引と地域共通クーポンの合計6億4249万円が、ジャパンホリデートラベルの取引で発生した不正受給額だ。

また、受注型企画旅行の仕入れとして、JHATと客室買取契約を締結。ジャパンホリデートラベルは、ホテル仕入れ代金として1559万円(10月分のみ)を支払っていた。研修付き宿泊旅行であるため、研修の教材提供会社とも研修業務委託契約を締結。教材費用として、15億791万円(10月分と11月、12月の一部)を支払った。

なお、今回の受注型企画旅行で実際に宿泊した人数は、各社が名簿に記載した人数の半数以下(S社:109名/200名、P社:299名/699名、T社:29名/70名、A社は回答なし)だった。相当数の人数の宿泊実態がなく、支給要件を満たしていない。これは、2021年10月にGoToトラベル事務局からの指摘を受け、ジャパンホリデートラベルが法人4社に調査を依頼し、判明したという。

【取引の実態】

当該旅行契約は、JHATの社長が2020年10月、ジャパンホリデートラベルの社長に提案して実現したもの。JHATが法人企業4社を紹介し、JHATの運営ホテルでの研修付き宿泊を受注型企画旅行で実施することが提案された。

旅行契約では、ジャパンホリデートラベルと顧客である法人4社をはじめ、仕入れ先のJHAT、研修教材提供会社とも契約が生じるが、いずれもJHATが契約締結をアレンジ。ジャパンホリデートラベルは法人4社や研修委託先等に面識することはなく、契約書のフォーマットもJHATが提供したものを利用したという。

調査委員会は今回の受注型企画旅行に関連する契約について、いずれもGoTo事業の給付申請のための実体のない契約であると認定せざるを得ないと結論付けた。

調査委員会の評価

調査委員長の荒竹純一氏(さくら共同法律事務所・弁護士)は、記者会見でミキ・ツーリストの不正受給はJHATとの共謀とみなす根拠について、「少なくともお互いに話しながらスキームを作っていると判断した。事実を承知しているやり取りが見られた」と説明。ジャパンホリデートラベルについてはJHATが主導的で、「従属的な関与しかなかった。宿泊しないことが前提のスキームである理解をしていなかった。金額的には規模が大きいが、悪質性はあまりない」とした。

調査では、資料や関係役員へのヒアリング等に加え、特に、関係者のPCやスマホなどを回収してコミュニケーションのデータを追ったデジタル・フォレンジングが有効だったという。

一方で荒竹氏は、ジャパンホリデートラベルに対し、「きわめて軽率」と指摘。「旅行のプロとして、多人数、長期にわたる研修目的の宿泊企画の合理性や実現可能性などに、注意や疑問を抱くべきだった。登録旅行事業者として、給付金の要件を満たさない申請をした事実は適切性でない。返還義務を含む責任は大いにある」と所感を述べた。

今回の受注型手配旅行では、旅行代金が1人1泊4万のうち、研修費が3万円弱を占めているが、その研修教材はEラーニングで、宿泊者がオンデマンドで視聴するようなものだという。記者会見の質疑応答ではその妥当性にも、参加したメディアから質問が多く上がった。調査委員であるHIS取締役上席執行役員最高財務責任者の矢田素史氏も「旅行代金に占める割合の不自然さは気付くべきだった」と考えを示した。

さらに荒竹氏は、一連の疑惑に関与するホテル運営会社JHATの社長が、元HIS社長であることの影響について、「かつての上司と部下の関係。また、やり手であったというニュアンスはやり取りを通じて感じている」と、以前の人間関係も影響したとの考えも示した。

調査委員長の荒竹氏。調査で判明した各疑惑の関係を図で示した(資料は記事下のリンクにあり)

現時点でHISの予約に影響なし、ミキ・ツーリストの再生を

HISは特にジャパンホリデートラベルに関して、取締役専務執行役員の中森達也氏と、取締役常務執行役員の織田正幸氏が役員を兼務しており、毎月、取締役会で業績報告を受けている。しかし、今回の不正受給に関する案件については「報告はなかった」(中森氏)。「国内ホテルを利用する場合、当社グループのホテルを優先しようと話をしていた。だから(JHATを利用した)報告をしなかったのではないか」(織田氏)という。

HISではジャパンホリデートラベルの案件は同社社長の独断で行なわれたとみており、「JHATとのビジネスで受注型企画旅行を社長の単独判断でしたのは適切性に欠く。代表取締役の執務執行を監督するとともに、責任のある役員の処分をしたい」(中森氏)と話した。代表取締役社長兼会長の澤田秀雄氏は、「中森と織田は役員なので、責任がないとは思っていない」とも述べた。

また、調査委員会は今回の不正受給にはJHAT社長の深い関与があるという結果を示したが、HIS役員とJHAT社長との現在の関係性について、澤田氏は「私がハウステンボスの社長をしていた間に、(JHAT社長が)HISの社長をしていた。私がHISに戻った時に社長を外した経緯がある。それ以降の話し合いや取引は一切ない」と否定。中森氏も織田氏も、JHAT社長がHISを離れてからの関係性がないことを強調した。澤田氏は、不正受給に元HIS社長であるJHAT社長が関与していることに「非常に問題だと思っている。当たり前だが、今後はJHATとの取引は一切しないし、関連子会社にもさせないと決めている」とも述べた。

今後、HISはミキ・ツーリストの社長を解任し、HISから役員を送り込む。「欧州の現地手配会社として必要だと、旅行業界から非常に言われている。継続できるように取り組む」(中森氏)考え。営業計画としては、現状、コロナで大きな打撃を受けているが、今後5年間で7割、8割まで回復させる方針。「営業回復と信頼回復が最大の仕事。それを履行した上で、しっかり再生させる」(織田氏)という。

澤田氏は今後の経営方針について、「コロナ禍で現状、海外がほぼゼロなので、国内に全力を注ぐ。国内旅行は昨年度も倍増しているが、コロナ明けには3倍、4倍に伸ばしたい。並行して新規ビジネスも育てていく」と述べた。今回の不正受給によるHISへの影響は、「現在、予約は毎日4000前後入っている。大きな影響は出ていないと思っている」(澤田氏)という。中森氏は、「HISはお客様のために旅行を通じてできるサービス提供に全力を尽くしたい」との考えも強調した。

右から)矢田氏、澤田氏、中森氏、織田氏

HIS 当社連結子会社における取引に関する調査委員会からの調査報告について(PDF:488KB)

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