オーバーツーリズムで今年訪れるのを「避けるべき場所」と指定された米国タホ湖、観光収入か環境保全か、観光関係者に広がる波紋

カルフォルニア州とネバダ州にまたがるタホ湖は、米トラベルガイド「Foders(フォーダーズ)」からオーバーツーリズムによる環境への有害な影響があるとして「今年は訪れるのを避けるべき場所(Foders’ No List 2023)」に指定された。現地の観光関係者の間では困惑が広がっている。現地の反応をAP通信がレポートしている。

フォーダーズは、2022年11月に「タホ湖には人の問題がある」と指摘。それ以降、自動車での入域者に税金あるいは手数料の課金を検討すべきとの声も上がり始めた。一方で、地元企業や観光関係者は、旅行者に対して、人の少ない場所を選び、ハイシーズン以外に訪れるようにとの呼びかけを始める。

それは、年間50億ドル(約7000億円)という観光収入を維持しながら、環境やコミュニティへの影響を軽減する取り組みだ。タホ湖盆地はヨセミテ国立公園の3分の1の広さながら、毎年ヨセミテの約3倍となる1500万人が訪れる。

タホ湖観光局のキャロル・チャップリンCEOは、「それほどオーバーツーリズムだとは思っていなかったため、フォーダーズの評価は少しショックだった。ただ、観光マーケティングを抜け出し、観光マネジメントに本格的に取り組むべきだということは分かっている」と話す。

環境保全を優先する観光管理計画

今月、「タホ湖管理プラン」が発表された。この143ページに及ぶ計画は、「持続可能な環境の保全」を優先するもので、政府機関、環境保護団体、企業、民間団体などが策定に携わった。具体的な行動内容は十分ではないが、駐車場問題、大気汚染、交通渋滞などの緩和をうたい、予約方法、時間指定の入場、受け入れ人数の制限など、他の観光地で実施されている措置の必要性にも触れている。

この計画書に法的拘束力はない。非営利団体タホ基金のエミリー・ベリーCEOは、「タホ湖は国立公園ではないためゲートもない。旅行者に対して門を閉ざすことはしない」と話すが、それだけに対応は難しい。

湖の北東約30キロにあるネバダ州リノのワショー郡委員会のアレクシス・ヒル委員長は、渋滞は極めて重大な課題になっているとし、「流域内の車両を制限し、公共交通機関の利用を奨励するために、利用者料金または通行料金を導入する時期が来ている」と話している。10年前であれば、このようなアイデアは即座に却下されていただろう。

しかし、2つの州の5つの郡、規制当局、沿岸警備隊、米国森林局を含むさまざまな管轄権が関係しているため、旅行者への課金は容易ではない。それでも、ヒル氏は「もはや私たちは持続不可能な地点まで達してしまっているのではないか」と警鐘を鳴し、「フォーダーズの評価は地域にとっていいことではない。が、旅行者を管理するシステムが必要なことも確かだ」と続けた。

地元の人たちは、運転免許証ら取得する際、タホ湖盆地内を運転するために年間50ドル(約7000円)を払って許可ステッカーを購入しなければならない。たとえ1年に1度しか訪れないとしても、旅行者にも同様の措置が必要ではないかとする地元の声もある。

交通渋滞、スーパーマーケットの混雑、住宅費の高騰などの理由で、タホ湖から去ってしまった住民も出てきているという。

※ドル円換算は1ドル140円でトラベルボイス編集部が算出

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