来春、日本で23ホテルを一斉開業する世界大手「アコー」、アジア部門CEOが語る日本市場への期待とは?

世界大手ホテルグループ「アコー」は、大和リゾートから運営を受託する形で、全国各地で「グランドメルキュール」と「メルキュール」23軒を2024年4月1日に一斉開業する。アコーのアジア・プレミアム、ミッドスケールエコノミー部門CEOのガース・シモンズ氏は、トラベルボイスの単独インタビューで「一斉開業はチャレンジングなことだが、オーナーである大和リゾートとの密接な連携で、着実に進めていく」と話し、開業に向けて自信を示した。

すでに海外から予約を受け付け

来春、上級ブランド「グランドメルキュール」は日本初上陸で12軒が開業。すでに8軒を展開するミッドスケールブランドの「メルキュール」は新たに11軒が加わる。どちらも地域の特性を重視するコンセプトを掲げている。

世界で「グランドメルキュール」は12カ国で約60軒、「メルキュール」は60カ国以上900軒を超え、アコーグループを代表するブランドとなっているが、日本国内での知名度はまだ高くないのが実情だ。

シモンズ氏は、その点を認めたうえで「大和リゾートと協業していくメリット」を強調。また、今年11月に行われた発表イベントについて触れ、「多くの旅行会社やメディアに集まってもらい、大きな反響があった」と手応えを示した。

発表後、11月6日から23軒の予約を開始。すでに多くの予約を受けているという。特に海外でアコーブランドの知名度は高いだけに、「以前の大和リゾートのホテルには泊まったことがないオーストラリアやインドネシアなどの訪日客からの予約も受けている」と明かす。

インタビューはプルマンと東京田町で行った。世界から注目される日本、地域の魅力を訴求

「日本のインバウンド市場の未来は明るい」とシモンズ氏。パンデミック後、日本の国境開放は他国よりも遅れたが、需要の回復は「非常に早い」との認識を示す。国内のアコーホテルの稼働率も2019年を若干下回る程度まで回復しているという。

シモンズ氏は「仕事でアジア各地を訪れるが、すべての国で次に行きたい国として日本があがる。世界で日本は最も旅行に行きたい国になっている」と話したうえで、特にアジアでは中間層の人口が増え、可処分所得も上がるため、海外旅行需要、特に訪日需要はさらに高まるのではないかと見通した。

「グランドメルキュール」と「メルキュール」では、その成長が期待されるインバウンドと日本人の国内旅行に向けて、新たに「#はなれ旅」プロジェクトを展開する。各地域の自治体との連携で、その地域の魅力をコンテンツ化し、新しい旅のスタイルとして訴求していく。

「旅行者は地域のユニークな体験を求めている。特に外国人にとって日本は世界にどこにもない体験ができるところ。日本の地域には多様性がある。同じ国内でも札幌と大阪はまるで違う都市だ」とシモンズ氏。日本の地方の良さ、本物の日本を伝えていくことで、地域の持続可能性にも貢献していく考えを示した。

グランドメルキュール八ヶ岳リゾート&スパ(報道資料より)

多国籍化するスタッフ、直販重視の姿勢も

また、持続可能な成長に向けて課題の一つと見られている人材不足について、シモンズ氏はアコーホテルの現状を説明した。アジアを見ると、その状況は国によって異なり、「タイやインドネシアでは改善してきたが、ベトナムではまだ課題として残っている」という。

日本については、外国人の採用を積極的に進めており、従業員は多国籍化していると明かす。超高齢化社会が進む今後について、シモンズ氏は「日本の労働ビザの環境次第だが、外国人も含めて、より柔軟な労働環境が生まれるのではないか」との考えを示した。

このほか、シモンズ氏は流通チャネルについても言及。OTAなど多様な流通チャネルを大切にするが、「顧客と直接つながることができる」ことから、直販を重視していると明かす。

その鍵となるのがアコーのロイヤルティプログラム「ALL – Accor Live Limitless」。日本でも会員の拡大を進めていく。2022年にはJALマイレージバンクとのポイントおよびマイルの相互交換を開始するなど、その取り組みを強化している。

ALL – Accor Live Limitlessでは、特別価格を含め様々な特典を提供している。今夏には、昨夏につつぎ、フランスの人気サッカーチーム「パリ・サン=ジェルマン」が来日した際、日本国内のエリート会員を招待したイベントを実施。選手とのミート&グリートのほか、プライベートルームでの食事付き試合観戦など特別な機会を提供した。

世界中でペントアップ需要が高まった2023年。2024年についても「引き続き『旅行に出かけたい』という需要は高いだろう」とシモンズ氏。特に回復が他の地域よりも遅れているアジアの復活への期待は大きい。

そのなかで、課題として日本を含めた国際線の復便と中国のアウトバウンド市場の回復を挙げた。

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