
小売、旅行、宿泊、飲食などインバウンドに関わる業界17団体は、消費税免税制度に関する共同提言書を取りまとめ、加藤勝信財務大臣・中野洋昌国土交通大臣をはじめ、政府および各党の国会議員に提出した。
この提言書では、観光立国戦略は日本経済の成長および国際競争力の向上に不可欠であり、外国人旅行者数・消費額いずれの視点からも「ショッピングツーリズム」の推進が重要と位置づけた。その推進の要となる免税制度は堅持すべきであるとして、制度廃止の意見に対する懸念と見解を提示している。
具体的には、外国人旅行者の訪日目的の2位となっているのがショッピングであり、インバウンド消費の約3割を占めること、消費税免税による売上が約 2.0 兆円となる試算を提示。そして、現行の免税制度が中小事業者も活用できる有効なインバウンド対策であり、地方の免税店が地域経済の活性化に貢献しているとした。
また、外国人旅行者にとって免税制度の有無が訪問先の国を選定する際に大きく影響し、消費税免税制度を廃止すれば国際競争力を大きく毀損することになるとした。2026年11月からは「リファンド方式」に移行することが決まっており、不正利用の減少と免税売上データの戦略的活用が期待されている点も提示した。
なお、今回の共同提言に参画している17団体は、全国免税店協会、日本小売業協会、日本百貨店協会、ジャパンショッピングツーリズム協会、全国スーパーマーケット協会、日本観光振興協会、日本スーパーマーケット協会、全国旅行業協会、日本ショッピングセンター協会、日本旅行業協会、日本チェーンドラッグストア協会、日本ホテル協会、日本専門店協会、日本旅館協会、日本飲食団体連合会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会、UAゼンセン流通部門。
免税制度の廃止で政府の歳入にマイナス影響との推計も
あわせて、ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)など小売業関連7団体が2025年7月に実施した、免税制度の廃止が訪日観光に与える影響を検証するアンケート調査の結果についても公表した。
その結果によると、免税制度の廃止は、訪日外国人客数および1人あたりの消費額にマイナスの影響を与え、訪日外国人客による消費総額の1兆4304億円減少につながり、これに伴う税収の減少額は3003億円と算出した。
仮に制度廃止によって2000億円の消費税収増があったとしても、歳入全体では1003億円の減少となり、免税制度の廃止は政府の歳入にマイナスの影響を与えると推計した。
オーバーツーリズム対策などの財源確保を目的として免税制度廃止を求める意見や報道がある中、JSTOは、免税制度を維持しショッピングツーリズムを振興することが観光立国政策における課題の解決にも寄与すると主張している。