世界の観光産業で起きている「質的転換」、民泊(STR)、法人旅行、富裕層旅行の3つの市場の現在地 ―フォーカスライト

2026年、世界の観光産業ではデジタルによる「質の変容」が鮮明だ。民泊を含む短期宿泊レンタル(STR/Short Term Rental)では、AIを駆使したホストのプロ化が加速し、法人旅行では規約の厳格化とAIによる自律化が並行。ラグジュアリー層はデジタル利便性と人間による専門性の融合を求めている。米観光調査会社フォーカスライトの最新レポート「トラベル・フォワード」が示す、テクノロジーと専門性が交差する最新の市場動向と3つのセグメントの現在地を読み解いた。

各セグメントに関する調査から浮かび上がる共通点の一つは、ツールとしてのデジタル活用がますます重要になっていることだ。しかし、求めているものは、ユーザー層によって異なる。これを探り出して提供できるパーソナライゼーション機能と、高い専門性を持つプロフェッショナル人材、どちらも欠かせない時代が到来している。

デジタル活用でプロ化が進むSTR

民泊を含むSTR市場では、デジタル技術の応用力が成長のカギになりそうだ。フォーカスライトの推計ではオンライン経由の世界のSTR予約額が1900億ドル(2025年予測値/約29兆4500億円)に迫る。施設管理システムやAIツール活用など、プロフェッショナル化が競争力アップに欠かせない時代になりつつある。

フォーカスライトが米国を対象に実施した調査では、STRホストの59%が施設マネージャーを雇い、74%がPMS(施設管理システム)を利用。さらに71%がすでにAIを価格設定、メッセージング、分析などに活用していると回答した。STRを掲載しているマーケットプレイスは平均2.9か所で、過去の調査より増加している。エアビーアンドビー(Airbnb)、バーボ(Vrbo)など仲介サイトを利用しているホストは全体の80%(2024年実績)を占めた。

同時に、自社サイト経由での直接予約に力を入れる動きも広がっており、具体的にはSEO(検索エンジン最適化)、ソーシャルメディア活用、インセンティブ提供などが挙がった。STR予約全体に占める直販シェアは35%(同)となっている。

一方、STR利用者は、観光目的の旅行者全体の24%を占め、そのうち6割以上が「ワーケーション」目的でSTRに滞在したこともあると回答。平均滞在日数はホテル(5.5泊)より長く6.2泊。STR予約時にホテルと比較検討した人は82%。最もよく使う予約チャネルはエアビーアンドビーのような「STRマーケットプレイス」(61%)、次いで「OTA」(12%)となり、両者の差はまだ大きい。

地域別のSTR総予約額推移:フォーカスライトより法人旅行に変革もたらすAI

法人旅行市場では、管理と自律、コンプライアンスと利便性の最適バランスを目指す模索が進んでいる。フォーカスライトによる調査によると、2025年、米国のトラベルマネジメント市場はわずかに縮小し、前年比1%減の1410億ドル(約21兆8550億円)。大企業の慎重姿勢が主な要因という。とはいえ、中小企業や会議・イベント需要は活況を呈し、法人旅行全体では微増を見込む。2026年は、トラベルマネジメント市場も約3%増のプラス成長に戻ると予測している。

米国の出張者の約63%は、トラベルマネジメント契約にもとづく出張規約の管理下にあり、「最近、出張規約を厳格化した」企業は4分の1を占めた。一方で、業務渡航での予約額のうち20%近くは、コーポレート契約相手ではないサプライヤー(ホテル、航空会社)などに流れたことも明らかになり、利便性、価格の安さ、ロイヤリティ・プログラムのポイントなどが理由に挙がった。

また、大きな変革をもたらしつつあるのはAIで、すでに出張者の半分以上はAIを利用している。

富裕層「わがままな探求者」が求める2つのこと

ラグジュアリー旅行市場の特徴は、消費額の大きさ、旅行頻度の高さ、そして旅行にとても高い期待値を持つ人々であることだ。

この「わがままな探求者」が全体に占めるシェアはわずかだが、ロイヤリティや商品戦略において非常に重要な顧客セグメントでもある。この層が求めているのは、プレミアムな体験と信頼できるエキスパート、ハイレベルのパーソナライゼーション。同時に、探求心や承認欲求を満たすことも必要になる。

フォーカスライトが実施した米国の調査では、旅のプランニング情報源として、「サプライヤーへの問い合わせ」(44%)や「旅行会社などプロのアドバイス」(39%)を、「OTA」(39%)以上、あるいは同等に活用している。この傾向は、それ以外の旅行者層とは真逆となった。なお、最も多かったのは、どちらの旅行者層でも「友人や家族のおすすめ」で5割以上だった。

旅行計画時の情報源:フォーカスライトより予約チャネルで最も利用が多かったのは「OTA利用」(ホテル39%、航空券35%)だったが、ホテルの予約では、次いで「旅行代理店への問い合わせ・訪問」(17%)、「サプライヤーに問い合わせ」(15%)、航空券では「サプライヤーに問い合わせ」(29%)、「旅行代理店への問い合わせ・訪問」が続き、旅行に対する強い思い入れや、特定の企業へのエンゲージメントの高さが推察される。

テクノロジーやロイヤリティ・プログラムへの関心も高く、旅行プランニングに役立ち、自分に合うおすすめ情報やリワードを提供するツールは活用しているようだ。こうした調査結果から、人間によるインサイトと便利なデジタル機能、どちらも提供できることが、ラグジュアリー旅行者層にアピールしたいプログラムやプラットフォームに欠かせない2つのポイントだと言える。

※ドル円換算は1ドル155円でトラベルボイス編集部が算出

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスライト(Phocuswright)」から届いた英語レポート(トラベル・ガード社が協賛)を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Travel Forward Data, Insights & Trends for 2026


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