韓国観光公社が開催した旅行業界向けの日韓観光交流イベントで、同公社トップおよび東京支社による最新の日本人旅行者の市場分析と誘致に向けた戦略が示された。2025年には訪韓日本人が過去最多を更新し、韓国旅行は「気軽に行ける日常的な海外旅行」へと変化している。その流れを踏まえ、同公社は2026年に日本人観光客450万人の誘致を掲げ、ターゲット別マーケティングと地方分散を軸とした戦略を展開する。
まず、韓国観光公社のパク・ソンヒョク社長(写真上)は、日韓観光交流の現状について「2025年は、韓国と日本の間で総合交流が非常に活発に行われた1年だった。往来人数は過去最多の1300万人を超え、そのうち韓国を訪れた日本人観光客は365万人で過去最多を更新した」と述べ、コロナ後の回復を超えた拡大局面にあることを強調した。
この成果について同氏は、日本の旅行業界が韓国への送客拡大に注力したことに謝意を示し、旅行業界との連携の重要性を改めて指摘した。
さらに市場の質的な変化について、「今では韓国は日本旅行者にとって単なる海外旅行先ではなく、いつでも思い立った時に気軽に出かけられる国内旅行以上に身近な旅先となっている」と述べ、韓国旅行の位置づけが大きく変わったとの認識を示した。
SNS上で日帰りや短期旅行のコンテンツが増加している点にも言及し、「韓国を1泊2日、さらには日帰りで楽しむ方法が次々と紹介されている」「若い女性だけでなく、男性やファミリー層が様々なテーマで韓国を旅する」と語り、旅行スタイルの多様化と裾野の拡大を指摘した。
そのうえで、同公社は2028年までに訪韓外国人数3000万人の誘致を掲げ、その中間目標として日本市場では2026年に前年比23%増の450万人を設定。「この目標を単なる宣言で終わらせず、具体的な成果へとつなげるため、日本の旅行業界の主要なプレイヤーと協力策の模索やパートナーシップの締結をおこなってきた」と述べ、具体的なアクションに着手していることを明らかにした。
韓国観光公社 ペク・ヘジン次長
韓国旅行の「日常化」と市場構造の変化
また、韓国観光公社東京支社のペク・ヘジン次長は、日本市場の詳細な分析結果と日本人観光客数の目標450万人に向けた戦略の全体像を提示した。
まず、市場分析では、日本人出国者の中での訪韓比率や訪日韓国人との比較を基にした結果として、「東京、大阪、福岡といった大規模国際空港を有する地域では、訪韓・訪日ともに需要が高い」と説明。また、需要を牽引するセグメントについて「20代、30代女性の個人旅行者が韓国観光を牽引している」とし、若年女性を中心とした個人旅行市場の重要性を強調した。
一方で、地方発の市場については、「韓国路線が限られている地域では、韓国への関心は高いものの、海外旅行全体の規模は比較的小さい傾向」があると分析。これを踏まえ、地域特性に応じた戦略が必要であるとした。
こうした分析から導き出された日本人誘客に向けた基本方針は2つ。第一に主要都市ではリピーター化による再訪促進、第二に地方では海外旅行需要そのものの拡大だ。
さらに、日本人訪韓客の90%以上が個人旅行者である点、訪問先が首都圏に集中し地方への訪問率が20%未満にとどまる点を課題として提示し、需要の質的転換の必要性を指摘した。
韓国観光公社の日本市場におけるマーケティング戦略
新規創出から地方分散へ、3段階マーケティング戦略
ペク氏は、今後の具体的なマーケティング戦略として、3段階のアプローチを提示した。
第一段階は新規需要の創出。「初めての韓国旅行キャンペーン」などを通じて未経験層を取り込み、海外旅行志向を韓国へ誘導する。
第二段階はリピーター化。コアターゲットである若年層を中心に再訪問を促進する。ここではLCCとの連携による供給拡大や、医療観光、クルーズなど高付加価値商品の強化をおこなう。
第三段階は地方分散。韓国の地方都市との連携を強化し、「小都市まち歩き30選」などのコンテンツ開発により、観光の質的向上を図る。
この戦略により、「新規需要の創出 → 再訪問 → 地方訪問」という循環を形成し、訪問格差の是正と持続的な市場拡大を目指す考えだ。
さらに東京支社としての重点施策として、以下の3点をあげた。
- 20代、30代女性の再訪問の習慣化
- アクティブシニアや団体客の地方誘導
- 未経験層のハードル低減
その実現手段としては、ターゲット別のコンテンツ提供をおこなう「韓国旅行キュレーション事業」、地方訪問促進プロジェクト、釜山を核とした誘致強化施策、小都市観光の提案、そして新規層向けキャンペーンなどが挙げられた。
SNS・AI・体験志向が変える訪韓マーケット
今回の発表では、観光市場の構造変化として、SNSやデジタル技術の影響も示された。
若年層を中心に、旅行の動機形成は検索からSNSへと移行し、インフルエンサーによる情報発信が意思決定に大きな影響を与えている。さらにAIの活用により、個人の嗜好に応じた旅行プラン生成が進み、従来のパッケージ型からパーソナライズ型への転換が進んでいる。
また、訪問エリアも明洞や江南といった従来の定番から、聖水(ソンス)や漢南洞(ハンナムドン)など新興エリアへと拡大しており、観光動線の多様化が進んでいる。
こうした変化を踏まえ、韓国観光公社は、現在よりもさらに「韓国旅行を国内旅行のように身近な存在にする」ことをキーワードに掲げた。航空ネットワークの充実と情報発信の強化により、「今日行く韓国」というコンセプトが現実の選択肢として広がりつつあるなか、ペク氏は、日常的な渡航の定着を目指す姿勢を示した。
日韓観光の関係は量的拡大の段階から、質的転換と持続的成長のフェーズへと移行している。その中で、日本市場は引き続き最重要市場の一つとして位置づけられている。
取材・文:鶴本浩司



