金融機関の会員向け旅行サイトに商機、米ホッパーのB2B部門、SMBC「Vトリップ」を支える戦略とは?

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旅行市場全体の成長が続く中、旅行B2B市場も大きく拡大している。その一角を担う米ホッパー・テクノロジー・ソリューションズ(HTS)がグローバルで最も力を入れるのは、金融機関のロイヤルティプログラム会員向けの旅行サイト運営だ。日本では2025年春から、三井住友(SMBC)カード会員向けの旅行サイト「Vトリップ」の運営をスタートした。HTSアジア太平洋・中東地区副社長で、SMBCとの提携協議にも携わってきたラファエル・ランファント氏(写真)に同社の戦略を聞いた。

画像:WiT Japanで旅行B2B市場の成長についてのセッションに登壇したHTSのラファエル・ランファント氏

金融の会員組織向け旅行サイト運営に強み

ホッパー(Hopper)の名前を有名にしたのは、航空券の価格予測データをもとに2019年に開始したプライスフリーズ(価格凍結)などの革新的なサービスだ。予約した航空券の価格が予約時より上昇すれば差額はホッパーが負担する(値下がりすれば安い価格を適用)という“価格凍結”は、ミレニアル世代やZ世代から支持され、ダウンロード数は米国の旅行系アプリで最多となるなど話題を集めた。

一方で、消費者向け事業は北米限定とする方針を決めており、世界全体ではビジネスの大部分をB2B事業が占める。米国外ではHTSによる三井住友カードとの連携のような金融機関の会員組織向け旅行サイトを中核事業としている。

HTSは、膨大な過去データを分析することで、フライト価格動向を予測する機能や、キャンセルや遅延発生など不測の事態に備えるフィンテック商品の数々を生み出してきた。さらに航空会社やホテルなど、旅行サプライヤーの直営サイト向けにも、それぞれのニーズに即したソリューションを“アラカルト”で提供している。

日本では、2025年から三井住友(SMBC)カード会員およびV会員向けの旅行サイト「Vトリップ」をHTSが運営しており、ホテル、フライト、レンタカー、ダイナミックパッケージなどの旅行商品に加えて、航空券の「価格変動通知」、キャンセル時に理由不問でフライト価格の8割を払い戻す「キャンセル安心オプション」なども提供している。

HTSで中東・アジア太平洋地域のパートナーシップ事業を担当し、2年前からSMBCとの協議にも携わってきたというランファント氏は、「SMBC側が海外のイノベーション事例にも詳しく、非常にはっきりしたビジョンを持っていたことが、早期の提携実現につながった」と振り返る。HTSはあくまで黒子であり、業績の詳細は明かせないとしつつ、「ポイントキャンペーンや特典プレゼントなどを展開しながら、会員数、パフォーマンス共に順調に伸ばしている」と話した。

航空会社向けの商品提供や業務サポートも拡大

HTSが本格的にB2B事業に進出したのは2021年、米国の金融機関、キャピタルワンとの提携だった。以来、同社の会員向け旅行プラットフォーム「キャピタルワン・トラベル」の予約件数を10倍以上に増やした実績を誇る。「旅行は、クレジットカードの裁量支出の中で最大を占めるカテゴリーで、ロイヤルティ戦略の中核だ。新規会員の獲得にも、会員維持にも重要で、国内外での利用額アップにもつながる。航空券やホテルが予約できるだけでなく、会員がポイントを貯めるときも使うときも、他にはない価値を届けられるかが差別化につながる」とランファント氏は話す。

また、旅行者が予約時に抱えるストレスや、旅行中に起きるトラブルへの不安を軽減するオプション・サービスを「適正な価格にして、市場性の高い商品にできることも、HTSの強みだ」と同氏は付け加えた。

HTSの金融系クライアントは、韓国のロッテカード、英国のロイズ銀行、カナダのロイヤル・バンク・オブ・カナダなど。ロイヤルティプログラムを持たない顧客企業には、その構築からサポートしているケースもある。最近は、旅行サイト上でキャンペーン展開したい旅行サプライヤーや地域DMO向けの広告プロモーション事業も手がけている。

一方、旅行サプライヤー向けのB2B展開では、付帯サービスの販売に力を入れる航空会社とのビジネス拡大が目立つ。「旅客当たり収益の増加に貢献できるのに加え、直販サイトのUX(顧客体験)改善により、航空会社の直販チャネルのリピート利用増にもつながっている」(ランファント氏)。

また、アジア太平洋でのクライアントは、ヴァージンオーストラリア航空、オマーン航空、サウジアラビアのサウディア、クウェートのジャジーラ航空など。2026年4月以降は、東欧最大のLCCであるウィズエア、米国のポーター航空やアヴェロ航空、カナダのウェストジェット航空と相次ぎ契約した。

HTSのラファエル・ランファント氏

政情不安で「安心オプション」の利用が急増

HTSが提供する商品のなかで、この春以降、利用が急増しているのが前述の「キャンセル安心オプション(Cancel for Any Reason)」、そして「フライトトラブル安心オプション(Premium Disruption Assistance)」だ。中東での紛争が勃発した後に、それぞれ90%増と120%増に急増したという。

「フライトトラブル安心オプション」とは、フライトが欠航または2時間以上、遅延した場合、HTSが追加料金なしで目的地まで別のフライトを再予約する有償サービスで、代替便の上限は30万円(2000ドル)。再予約できる代替便の選択肢に希望するフライトがない場合は、HTSが航空券代の全額を支払う。これを受けとりつつ、遅延便を利用することもできる。

「旅行者は、これまで以上に手厚い安心や保証、より柔軟な対応を求めている。どのオプション対応もアプリ経由で自動化しており、担当者と電話で話すこともできるが、利用者の98%は自動サービスで対応できている」(ランファント氏)

フレキシビリティを適正価格で提供

2025年秋からは、予約確定後に発生するカスタマーサービス業務を支援する機能「HTSアシスト」の提供もスタートした。「もともとHTSが社内業務で使っていたものを、B2B向けに商品化した。過去10年間で蓄積した何百万件もの顧客とのやりとり、会話を分析し、エージェント型AIに学習させた」(同氏)。サプライヤーのバックエンドのシステムと接続しながら、キャンセルや再予約、アップセルのオプション提案など、予約後に発生するタスクに対処し、パートナー各社の業務負担を軽減している。

ランファント氏は旅行業務を取り巻く課題として、「同じ情報を何度もあちこちに伝えなければならない、単調な繰り返し作業が多い。AIはこれを効率化し、シンプルにするのが得意なので、そこから着手した」と話す。

今後の商品開発でも、これまで同様、膨大なデータのアーカイブが原動力になる。「我々はデータサイエンスの専門家。データを活用して、旅行の困りごとを解消するサービスを作りだす力こそが、ホッパーのDNA」とランファント氏。「引き続き、フレキシビリティのロジックを土台に据えつつ、旅行業界における新しい活用方法や、新しい販売チャネル開拓の可能性、より柔軟なキャンセルポリシーや価格設定のあり方を追求し、パートナーと一緒に成長を目指す」と強調した。

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