Airbnb(エアビーアンドビー)が欧米で人気の理由、日本で本格始動する田邊代表にビジネス展開を聞いた

個人宅の空き部屋を貸したい人と宿泊先を探す旅行者を結ぶ“CtoC”のマッチングサイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」。日本国内では旅館業法や宅地建物取引業法などの法的な議論があるが、欧米ではすでに一定の支持を獲得している。

そんな同社が2014年5月に日本法人を立ち上げた。欧米での成功をもとに、次なる成長を求めて日本を含むアジア4市場を強化するという。このほどAirbnb Japan代表に就任した田邉泰之氏に、ビジネスの概要と日本での展開について聞いた。



▼マーケティング活動なしで月間100万人利用に成長

平均年収が高いユーザー、マスでない限られた市場

エアビーアンドビーのサイトトップページより

旅行の宿泊先の概念を変えたAirbnb。スタートから5年で、物件数は世界190か国地域の80万軒、ユーザー数は全世界で年間1700万人、月間の利用人数100万人に成長。年間の利用者数が100万人になったのは4年目のことで、この1年間は前年比3倍の伸びで推移した。昨年まで、顧客拡大を目的とするマーケティングは行なっておらず、「ここまで普及したのは、ホストのローカルなおもてなしと、ユーザーの強い伝播力にある」と田邉氏はいう。

何がユーザーを惹きつけるのかーー?欧米では、バケーション期などに空きとなる部屋や家を貸し出す習慣がライフスタイルとして定着している。田邉氏は、こうした個人宅での宿泊だけでなく、宿泊先での“体験”を目的とするユーザーが多いことを指摘する。「実はホームステイや民泊など、昔からあった現地の楽しみ方の一つ。潜在的にあった需要ですが、オンラインで海外でも簡単に貸し借りができるようになり、身近になったのです」。

田邉氏もAirbnbを利用し、島根県の隠岐では地元の漁師の案内でとっておきの場所で釣りを楽しみ、和歌山県の高野山の宿坊では仏像や仏具に囲まれたなかでおつとめをして、僧侶の話を聞いた。「旅先で地元の人に現地のことを教えてもらえると満足度が上がります」と、「旅行+生活」の魅力を語る。

ただし、そのニーズはマスではなく、ビジネスは限られたマーケット向けのサービスだという。主要客層は「旅のヘビーリピーターで他の国・地域の文化に強い関心があり、人と広くコミュニケーションをするのが好き」で「平均年収が高い」人。彼らのクチコミで火がつき、ニューヨークを中心に欧米で拡張した。


▼交通や食事、様々な周辺ビジネスとの連携を模索

「地域経済への貢献」目指し、日本の地域にコンタクト開始

サイトには日本各地の個人宅の登録が。祭りや紅葉などピークシーズンへの利用の提案も。

日本では現在、全国各地を訪問し、Airbnbの理解促進に力を入れている。Airbnbではビジネスの目的の一つに、「地域経済への貢献」を掲げているからだ。これまで訪れた隠岐や高野山、飛騨高山など多様な地域で話をしたところ、地域活性化といってもそれぞれニーズが異なることが分かった。「Airbnbとして貢献できることは模索中」だが、具体的な話が出始めた地域もいくつかある。

例えば、限界集落の多い新潟県の魚沼では、田畑を受け継ぐIターンに繋がることも期待している。そのため、ユーザー向けの農業体験や就業セミナーを現地側が用意するなどの案も生まれた。また、都内の自治体では、ホスト向けの地域研修ツアーも検討。地域の魅力を伝播力の強い旅行者に伝えてもらうことで、全世界への魅力発信に繫げようというものだ。

田邉氏によると、第3者機関がシドニーで調査したところ、登録物件は都心部の周辺に多いため、観光客があまり行かない郊外に年間220億円規模の効果があると試算された。滞在日数が多いため、一人当たりの投下額が高くなる。海外では鍵屋や交通サービスなど、周辺ビジネスが発生している地域もあるという。

日本においても「Win×Winな関係が作れるパートナーシップができれば」と意欲的。すでにCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)とツアー造成で連携しているが、さらに業界を問わず、地域やメーカー、交通や食事などのサービス提供者など、幅広い視野で可能性を模索したい考えだ。「Airbnbはプラットフォームなので周辺ビジネスは地域のもの」と強調し、例えば地域とは、寺社や自然など同じテーマを持つ地域同士の連携も思案している。


▼Airbnbの根幹は“シェアリングエコノミー”

世界に広がる共有する概念、日本でも慎重な導入を

災害時、被災者に宿泊先を提供する個人をつなぐ支援も。手数料免除で行っている。

Airbnbの根幹は、個人宅の空き部屋を共有するシェアリングエコノミーだ。しかし、旅行者向けの宿泊で行なうことに関して、日本では「脱法」など批判的なニュアンスで語られることもある。

これについて田邉氏に聞いたところ、「日本だけの問題ではありませんでした。シェアリングエコノミーに関しては世界的にも“CtoC”のビジネスモデルがなかったため、“グレー”なところが多かったのです」という。

しかし、世界の潮流は変化している。田邊氏は、韓国・ソウルで市長が全面的に推進し、「シェアリングエコノミー協会」(Airbnbも加入)した例や、フランスで2014年3月に新たな法律が制定され、住居の貸し出しが可能となったことなどをあげた。アムステルダムやハンブルグではホームシェアリングが合法化、イギリスでも法解釈の見直し検討が発表されている。

「2050年には96億人という、急速な人口の増加で世界中の資源が不足すると予想される中、モノを所有ではなく共有しようとの考えで始まったシェアリングエコノミーは今、避けて通れないほど広まってきています」。しかし、「だから日本でも推進してほしい」というのではなく、「慎重な導入が必要」と田邉氏。何よりも、安全性を担保することが重要だという。


相互評価の一例。

そのため、Airbnbでは独自の仕組みを構築している。その一つが相互評価制度。ユーザーもホストも互いの感想をサイト上に公開し、評価の高い順に優先的に表示する。「利用者の相互の良心、強く言うとコミュニティポリーシングによる独自のエコシステムになっています」といい、大きなトラブルは発生していないという。






▼インバウンドで真価発揮

宿泊施設と個人宅の併用で相乗効果も

田邊氏

Airbnbの日本展開で、最も期待できるのはインバウンドの増加だ。「今、日本のページには驚くほどの(海外からの)アクセス数が集まっていますが、ニーズに対する物件数が絶対的に足りない状況」と、海外からの関心度の高さを明かす。

さらに、主要マーケットである欧米人の旅行期間は2~3週間が主流のため、「Airbnbを見て日本への旅行を決めたとしても、全ての宿泊をAirbnbで利用するとは思えません。移動しながらホテルや旅館にも必ず宿泊します」と、インバウンドで既存企業との相乗効果も狙えると強調する。

2020年の東京オリンピックに向けては、「訪日客数が2000万人に倍増するとき、一般の人々の心情的な受入面も課題だと聞いています」。こういう面でも、「地域を旅する外国人旅行者に少しずつ慣れて、おもてなしの練習ができればいいのでは」と、訪日客を迎える気構えが醸成するとの期待を示す。

日本、韓国、シンガポール、中国を主軸とするアジア進出は、Airbnbが今年、全世界で展開する4大戦略の重要な柱だ。本部からの指示は、1万人の普通のファンではなく、100人でも本当に好きなコアなファンを広めること。

田邊氏は自身のミッションをこう語る。「丁寧に案内をして、正しい理解の上の利用促進が私の役割。日本がこのユニークなプラットフォームで、安全に経済効果を取り込めることが、最も重要なことだと思っています」。その言葉には、海外企業に勤めながらも日本を応援する気持ちが込められていた。

欧米で急拡大を遂げてきたAirbnb。ネットやSNSの発展とともに新たな潮流となりつつあるシェアリングエコノミーが、日本の市場を活性化する一助となる可能性は高い。一方、日本における法整備や精神的な受入れ体制、トラブル発生時の責任に対しての考え方は欧米とは異なる。欧米で支持されるユニークなプラットフォームの日本での展開、さらに消費者がどう動くのか。今後も注目していきたい。

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(トラベルボイス編集部)

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