ビッグデータ活用で変わる旅行マーケティング、カギは若者の「三種の神器」

ツーリズムEXPOジャパン2014では、トラベル・プロデューサー江藤誠晃氏による「ビッグデータ時代のツーリズムマーケティング」と題するセミナーが行われた。ソーシャルメディア(SNS)の登場でますます重視されるビッグデータ。あらゆる業界で、このビックデータを駆使しながら、インプットを抑え、アウトプットを増やす取り組みが行われている。旅行業界では、どのような活用術があるのかーー。

江藤氏は、自身の取り組みを紹介しながら、将来に向けた旅行マーケティングについて議論を進めた。


▼ビッグデータで、一人ひとりの属性の把握を

若者の三種の神器は「SNS」「スマートフォン」「GIS(地理情報システム)」

「国家プロジェクトとして、訪日外国人2000万人、3000万人が推進されているが、アウトバウンドも同様に2000万人、3000万人に増やしていくのが理想」————江藤氏は、そう提言し、セミナーを始めた。そのためには、従来の仕組みを変えて、新しいシナリオをつくっていく必要があるとし、そのカギは「10代、20代から生まれるビッグデータにある」と話した。

江藤氏は「現在、SNS、スマートフォン、GIS(地理情報システム)は若者の三種の神器になっている」と指摘。マクドナルトがスマホクーポンから得られるビッグデータを活用してマーケティングを行っている例を挙げ、「旅行でも、セグメントではなく、一人ひとりの属性に応じて、戦略を立てるべき」と主張した。


▼顧客視点のGGH: ゲスト(G)、ガイド(G)、旅行会社や観光局などのホスト(H)

未来に思いを馳せるPPF:過去(Past)、現在(Present)、未来(Future)

江藤氏はマーケティングの概念の変化にについて言及。「これまでは、顧客と企業の関係性をつくっていくものだったが、最近では顧客との距離を縮めていくものに変わってきている」と話した。さらに、旅行マーケティングの普遍的な枠組みであるゲスト(G)、ガイド(G)、旅行会社や観光局などのホスト(H)の関係性も変化。従来は、HからGへの「顧客志向」が重視されてきたが、ネットで情報が溢れている現在、それは、GからHへの「顧客視点」に移ってきた。

そのうえで、「顧客志向」は量、「顧客視点」は質をともなった量が必要と指摘。「これからは、旅行会社の社員も一旅人である視点から、旅行会社から“旅情会社”に変わっていく必要があるのではないか」と主張した。

江藤氏はPPFというキーワードも提示。旅人一人ひとりの過去(Past)、現在(Present)、未来(Future)を見つめるべきだとした。「従来は、旅人の現在を売っていた。これからは、旅人の過去を知り、その人の未来に思いを馳せるアプローチが大切になってくる」という考えだ。ビッグデータを活用して行うコンサルティングで、「顧客の探索」ではなく「顧客の創造」につなげていく。


▼マーケティングの罠に大胆に切り込む

商品数や手段の目的化に警鐘

1一方、江藤氏はマーケティングで陥る二つの罠についても言及した。ひとつはロングテールの罠。販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えることで、顧客の総数を増やすという手法に対して問題提起、「現在の旅行商品は多すぎるのではないか」と指摘した。

選択肢が多いと顧客にストレスを与え、逆に購買力が下がることから、「ビッグデータを使って、商品を絞り込むこみ、質と量のバランスをとることが求められる」と提案。希少商品の販売にはロングテールは有効だが、「思い切ったトカゲの尻尾切りが必要だろう」と強調した。

もうひとつは手段目的化の罠。マーケティングという手段が目的化してしまう恐れを指摘し、マーケティングが顧客との距離を縮めることに重きが置かれている現在、物理的距離、経済的距離は動かせないものの、SNSでの顧客視点のBuzzを利用した戦略的PRでその心理的距離は操作することができると主張した。

こうした考え方で、江藤氏は一例として自身が試験的にリリースとしている「Buzz Port Japan」アプリを紹介。これは、旅人自身の旅の履歴や興味のある国のリストをつくるアプリだ。

「このアプリを通して、SNSでつながり、同じ興味を持つ旅人同士で情報交換ができるようになる。旅行会社が利用すれば、ビッグデータ作りにも役立つ」という考え。旅行団体の参加などを促せば、100万人のネットワークをつくることも可能で、そうなれば大きなビックデータとなっていく構想だ。

旅行の企画や販売に重要とされてきた「経験」と「勘」。そこに、こうしたビックデータを活用することで、より消費者に近づくことができる一例を紹介したセミナーとなった。

(トラベルボイス編集部)

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