世界中のクチコミを総合評価に変える「トラストユー」、CEOが語るホテルレビュー横断分析の戦略

オンライン上にあふれるホテル関連のレビュー(クチコミ)を横断的に評価する「メタレビュー」をB2Bで展開するトラストユー(TrustYou)。独自開発したアルゴリズムで、旅行者がオンライン上に投稿したレビューを再構成している。

ビックデータに基づく「メタレビュー」は、ホテルや旅行会社のマーケティングに活用できるのか?トラストユーCEOのベンジャミン・ジョスト氏に話を聞いてみた。


セマンティック・テクノロジーでレビューを再構成

「世界中のホテルユーザーからのレビューを総合的に分析する――」。ジョスト氏はトラストユーのビジネスをそう説明する。レビューは、料金とともに消費者がホテルを選ぶ基準となっているが、大部分のテキストが文法通りに書かれているわけではないので、コンピューターが人間の書いた意味を理解するのは困難だ。

そこで、トラストユーではそれを可能な限り理解するアルゴリズムを開発。「セマンティック・テクノロジー(意味を理解する技術)」として活用することでメタレビューを可能にした。

「トラストユー」ウェブサイト

「トラストユーのデータベースには、5億件のレビューが蓄積されている。あるホテルを評価する場合、レストランが素晴らしい、部屋は狭いなど、そのホテルに関するさまざまなレビューを再構成することで総合的なレビューができあがる」とジョスト氏。「3年前まではこうしたテクノロジーはなかった」と胸を張る。


2つのソリューションでホテルと旅行会社の収益性に貢献

ジョスト氏はトラストユーのCEOであると同時に共同設立者。「オンライン上には膨大な量のレビューが流れているが、すべては読まないし、読みたくもない。そんな時間はない。」と、このビジネスの発想の原点を話す。「特にモバイルデイバイスではそうだろう。しかし、何が書いてあるのかは知りたいとは思う。そのホテルの評価を10秒で判断できるようにならないものか」と考えたという。

この発想を実現するソフトフェアを開発した後、ホテルや旅行会社と契約し、マーケティングツールとしてのメタレビューを提供するB2Bモデルを考えた。

現在提供している基本的なソリューションは2種類。ひとつは、旅行会社がAPI(Application Program Interface)を通じて、データにアクセスできるサービス。日本を含め30万件以上のホテルについてのデータがあり、これを利用することで、旅行会社はカテゴリーごとにホテルをランキングでき、販売に活用することができるというものだ。

もうひとつは、ソフトウェア・アズ・サービス(SaaS)と呼ばれるもの。ホテルはこれを利用することで、自社の改善点を見つけることが可能になる。その結果、評価スコアをさらに高め、収益増加にもつながるという好循環が生まれる。「今の時代、評価は収益に直接影響する。評価スコアが高いほど、消費者はもっと料金を払ってもいいというマインドになる。極めて論理的だ」とジョスト氏の説明は明快だ。

ベンジャミン・ジョスト氏

「ホテルにとって重要なテーマのひとつは、どのように直接予約チャンネルを強化するか。そのためには、ウェブコンテンツの充実とともにレビューの透明性を高めていくことが大切」。トラストユーの価値は、その第三者によるレビューの透明性の担保にある。

「私たちのビジネスはインテルのような存在」とジョスト氏は話す。消費者はみんなインテルを知っているが、そのチップは決して買わない。メーカーがそのチップを導入することでインテルは収益を上げている。


「レビュー」というビックデータで旅行産業が発展

世界最大のクチコミサイトであるトリップアドバイザーでも、そこで扱われているレビューは全体の25%ほどだと言われている。世界では、毎日膨大なレビューが書かれ、それがビッグデータとして大きな価値を生み出している。

「ビックデータは、旅行産業の発展に欠かせないものになっている。ホテルはまずホテルを運営するという本業があり、ビックデータを処理する時間はない。その役割をトラストユーが担う」とジョスト氏。

トラストユーは現在、5ヶ国語でサービスを展開しているが、そこに日本語も加える計画だ。来年にはアジアの言語への拡張も視野に入れる。日本語サイトはまだオープンしていないものの、すでに日本のホテルを顧客に持ち、サービスを展開している。

ジョスト氏は「世界のホテル市場は大きい。まだリーチできていないホテルも多い」と、サービス拡大に意欲的だ。


  • 取材・記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹

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