日本旅行業協会、新体制で双方向交流を再構築へ、海外旅行2000万人超や国内旅行平準化を推進

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日本旅行業協会(JATA)は、このほど記者懇談会を実施し、第5次観光立国推進基本計画の実現に向けた旅行業界の取り組みを説明した。JATAは、2026年6月に新役員体制をスタートしたところ。新たに会長に就任した原優二会長(風の旅行社)は、コロナ禍を経て旅行会社の店舗網や商品造成のあり方が見直されるなか、業界全体の収益構造や生産性は改善しているとの見方を示し、「この局面を旅行産業の高付加価値化へ転換する好機と捉えるべきだ」と強調した。

原会長は、インターネットの普及や海外OTAの参入によって旅行販売の構造が大きく変化したことを振り返り、業界として変革の速度に課題があったとの認識も示した。そのうえで、今後は「再び過度な価格競争に戻るのではなく、お客様にしっかり価値を提供し、その価値にふさわしい対価をいただく産業へ進化しなければならない」との考えを示した。

第5次観光立国推進基本計画では、国内交流とアウトバウンドの拡大が基本方針の一つに明記された。アウトバウンドが国の観光政策の重要な柱に位置づけられたことについて、原会長は「画期的」と評価。2030年の海外渡航者数について、2019年を上回る水準を政府目標として示したことに触れ、「長年、ツーウェイツーリズムの大切さを主張してきたが、ようやくそれがかなった」と語った。

アウトバウンドを政策の柱に、双方向交流を再構築

JATAが重視するのは、インバウンドとアウトバウンドのバランスの回復だ。原会長は、2025年の訪日外国人旅行者数が4268万人、消費額が9.5兆円と過去最高を記録した一方、日本人の海外旅行は円安、物価高、航空運賃の高止まりなどを背景に、コロナ前の7割程度にとどまっている現状について、「インとアウトの比率が3対1と大きくバランスを欠いている。これでは日本の航空ネットワークの維持にも、インバウンドのさらなる拡大にも支障が出る」と危機感を示した。

その対応として、JATAは地方空港を活用した双方向交流の拡大や、教育旅行を通じた若い世代の国際交流を進める。海外旅行拡大プロジェクト「もっと!海外へ」もリニューアルし、航空会社や空港会社と連携したキャンペーン、パスポート取得支援、旅行会社の海外旅行商品の情報発信を強化する。

海外旅行担当の酒井淳副会長(阪急交通社)は、2026年1〜5月の日本人海外渡航者数が585万人となり、前年比では105%と伸びたものの、2019年比では73%にとどまると説明。パスポート保有率も18%弱に低下しているとして、海外旅行2000万人、パスポート保有率20%へのアプローチを掲げる。

一方で、海外旅行の環境には逆風もある。酒井副会長は、航空座席の団体枠減少、変動運賃化、デポジットやキャンセル条件の厳格化に加え、円安、現地費用の上昇、燃油サーチャージの負担増を指摘。中東情勢の影響で欧州方面などに一定程度のキャンセルが出ていることにも触れた。そのうえで、海外旅行の安全・安心を確保するため、外務省の「旅レジ」登録と海外旅行保険加入の啓発を強化する考えを示した。酒井副会長は「海外旅行に行くときには必ず旅レジに登録した方がいいということを、ぜひ伝えてほしい」と呼びかけた。

国内は休み方改革、訪日は地方誘客と品質向上へ

国内旅行では、インバウンドを含む宿泊需要が回復する一方、日本人の国内宿泊は横ばいから減少に転じている。国内旅行担当の吉田圭吾副会長(日本旅行)は、日本人の国内旅行消費額が2025年度に26.8兆円となり、2019年の21.9兆円を上回った一方で、主要旅行会社44社の国内旅行取扱額は2019年度比で89%にとどまっていることを説明。OTAの伸長や宿泊・交通などの事業者の直販化が進んだ影響を指摘した。

吉田副会長は、国内旅行の課題として週末、ゴールデンウィーク、夏休みなどへの需要集中を挙げた。2030年に訪日客6000万人を目指すなか、日本人の国内旅行が特定日に集中したままでは、長期滞在を希望する訪日客の需要を取り込めなくなるとの認識だ。「休み方改革による日本人の国内旅行需要の平準化、平日へのシフトは喫緊の課題」と述べ、ラーケーションの導入加速や企業の休暇取得促進、平日旅行を促す「平日に泊まろう」キャンペーンを進める方針を示した。

訪日旅行では、山北栄二郎副会長(JTB)が地方誘客と高付加価値化を重点に挙げた。2025年の訪日客数は4000万人を突破し、訪日消費額も9兆4549億円に拡大した一方、2026年1〜5月累計は前年比1.1%減となり、中国市場の落ち込みが影響している。ただし、米国、欧州、豪州などは2019年比で大きく伸びており、中国市場に特化した事業者には影響があるものの、全体では他市場が補っているとの見方を示した。

課題は地域の偏りだ。東京、京都では外国人宿泊者の比率が50%を超え、大阪も40%を超える一方、20県では10%未満にとどまる。山北副会長は、地方への誘客促進と広域連携強化が重要だとして、農泊事業者と旅行会社の商談会、国立公園での高付加価値体験の開発、北陸新幹線延伸を機に設定した広域ルートなどの取り組みを紹介した。

また、ツアーオペレーター品質認証制度の認知拡大も重視する。コンプライアンス、品質管理、安心安全、サステナブルツーリズムなどを基準に事業者を認証し、国際的な旅行商談会への出展も通じて、高品質な訪日旅行商品の提供を後押しする。

原会長は最後に、旅行産業を若い世代に引き継ぐためには、市場の実態、生産性、賃金水準、労働環境、働く人の満足度などを数字で示し、社会に産業価値を発信する必要があると述べた。そのうえで、「バランスの取れた双方向交流の促進、地方分散、平日の需要平準化の3つを実現させるために全力を尽くす」と力を込めた。

質疑では、沖縄・辺野古で起きた研修旅行中のボート事故を踏まえ、教育旅行における旅行会社の安全管理の役割についても質問が出た。原会長は個別事案への断定は避けつつ、旅行会社が関与することで、実施事業者の法的な登録状況や安全面を確認し、学校側に助言できると説明。「旅行会社としてはそれなりにいろいろな情報を持っている。何らかの形で助言をしていくのは当然」と述べたうえで、「旅行会社を使っていただければ、法的に登録をしていない運送機関などは使えない」と指摘した。自然体験や教育旅行では、プログラム設計、習熟したスタッフの配置、保険加入などを含め、事故を起こさないための事前対応が基本になるとの考えを示した。

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