【年頭所感】観光庁長官 田村明比古氏 ―2017年は「正念場」、観光の国際競争力の強化へ

観光庁の田村明比古長官が2017年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

田村長官は所感のなかで、昨年の観光業界は訪日需要が引き続き堅調に拡大し、日本人の国内・海外旅行需要にも明るい兆しが見えていることを振返り。2017年は、先に策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」実現に向け、民泊に関する新法や通訳案内士法、旅行業法の改正法などの改正法案提出を進めるほか、観光MBAの創設、観光経営人材の育成・強化など複数の施策を推進。古い規制・制度を抜本的に見直すとともに観光産業の国際競争力を一層高める取り組みについて、政府全体としてやれることを何でもやる"正念場"の一年になるとしている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。

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2017年 年頭所感 ―観光先進国に向けて、2017年は正念場の年―

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

2016年を振り返りますと、訪日外国人旅行者数は、暦年で初めて2000万人を超え、2400万人前後となったほか、その消費額も、過去最高であった2015年を上回り、4兆円が視野に入る勢いで増加し、訪日観光需要が引き続き堅調に拡大した一年となりました。

また、日本人の観光については、国内旅行、海外旅行ともに2015年に比べ増加するなど、明るい兆しが見えた一年となりました。

一方、2016年は、災害の年であったとも言えます。4月に熊本地震、8月に北海道で台風、10月にも鳥取中部地震が起きるなど、観光に大きな影響を及ぼす災害が続きました。観光庁では、東日本大震災で得られた教訓をもとに、それぞれの事情に応じた支援を迅速に行いました。

例えば、熊本地震においては、観光庁が中心となり「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」を策定し、「ふっこう割」による旅行費用の助成や九州への集中的な訪日プロモーションなどを実施し、旅行需要の早期回復に努めて参りました。これも奏功し、九州の日本人延べ宿泊者数は他地域並みに回復してきています。また、外国人の延べ宿泊者数についても、対前年比で増加する月もあり、全体としては回復の明るい兆しが出てきています。北海道および鳥取においても、風評被害対策等を進め、旅行需要の回復に取り組んで参ります。

昨年3月、政府は今後の観光政策の中長期的な方針となる「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。

この観光ビジョンでは、訪日外国人旅行者数2020年4000万人、訪日外国人旅行消費額2020年8兆円等の新たな目標を掲げ、わが国が世界に誇る「自然」、「文化」、「食」、「気候」という観光振興に必要な4条件をフルに活用し、「観光先進国」の実現に政府一丸となって取り組むこととされました。(詳細は、観光庁HP参照)

その取組みは既に始まっていますが、2017年は、本格的にこの観光ビジョンをかたちにしていく一年になると考えております。

観光ビジョンでは、観光産業の国際競争力を高め、我が国の基幹産業とするため、60年以上経過した観光に関わる古い規制・制度を抜本的に見直すこととしております。この具体化として、2017年の通常国会に民泊に関する新法、また、通訳案内士法及び旅行業法の改正法案を提出することを予定しております。また、観光MBAの創設など、観光経営人材の育成・強化に取り組んでいきます。

さらに、農山漁村をはじめ各地に存在する古民家等の歴史的資源を活用した観光まちづくりを全国に広げるため、意欲ある地域の取組みを官民一体となってワンストップで積極的に支援していくほか、世界水準のDMOの形成、広域観光周遊ルートの向上など、観光資源の魅力を高めていく取組みを実行します。あわせて、欧米豪や富裕層等への戦略的なプロモーションの展開等により、長期滞在による消費拡大を進めて参ります。

そして、すべての人に快適な旅行を楽しんでもらうため、CIQ、通信、交通、キャッシュレスなど、入国から出国までのあらゆる場面における受入環境を関係省庁と連携し、整えて参ります。

観光ビジョンに掲げられたこれらすべての事業を着実かつ早期に実行することにより、「世界が訪れたくなる日本」という国の姿に近づけることができると考えております。

そのためには、一般の国民の皆様のご理解、ご協力やご活躍が不可欠になります。なぜなら、これからの観光は、従来の狭い意味での観光関連事業だけではなく、幅広い産業に波及効果をもたらす基幹産業として、地方創生の実現への貢献が大いに期待されており、また、一握りの人材だけではなく老若男女を問わず地域で生活する様々な人々が活躍することのできる場を提供できる点で、一億総活躍社会の実現に欠かせないと考えるためです。

わが国が元々有していたポテンシャルで飛躍してきたここ2、3年と比べ、2017年は、「観光先進国」を実現する上で、目標となる2020年に向けた正念場となる年だと思います。私たち観光庁を含め政府全体で、できることは何でもやるという意気込みで進めて参りますので、観光関係の皆様、国民の皆様のご協力、ご尽力をいただければ幸いです。

観光庁長官 田村明比古

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