総務省の「ふるさと住民登録制度」とは? 関係人口創出へ「観光事業者が活躍する場」、その仕組みと効果を審議官に聞いてきた

総務省は、関係人口の創出を支援する「ふるさと住民登録制度」の構築を進めている。2025年度補正予算では「ふるさと住民登録制度モデル事業」の実施に向けて3.5億円を確保。現在、モデル事業の対象自治体の選定を進めている。今後、実証する共通システム「ふるさと住民アプリ(仮)」の開発にも着手する。地域への継続的な関わりを後押しする総務省の狙いと、「ふるさと住民登録制度」で描く未来の姿とは? 同省地域力創造審議官の恩田馨氏に聞いてきた。

地域経済の活性化と地域の担い手確保が狙い

「ふるさと住民登録制度」とは、実際に特定地域に居住していなくても「ふるさと住民」として登録ができる仕組みだ。居住地以外の自治体に「ふるさと住民」として登録すると、その自治体が登録証を発行。地域からの情報提供や行政サービスなどのほか、関わりの深度にしたがって、自治体独自の特典も受けられる制度の設計を進めている。

恩田氏は、制度立ち上げの狙いとして、地域経済の活性化と地域の担い手の確保を挙げ、人口減少が進むなか、「東京圏の一極集中を是正するとともに、地方への人の流れを創出し、地域での経済を循環させる環境を整える。地域の暮らしを守る取り組みだ」と説明した。

総務省はこれまでも「地域おこし協力隊」など地域への貢献や移住・定住を促す取り組みを進めてきた。地域おこし協力隊は、住民票を対象の自治体に移したうえで活動するが、「ふるさと住民登録制度」では、その必要はなく、あくまで関係人口の枠組みで地域とのつながりを支援していく。

恩田氏は、「少子高齢化のなかで、関係人口の創出・拡大は、地方創生の大きな力になる」との認識を示す。そのうえで、「もっと深く地域に貢献したいと思うきっかけは観光だろう。関係人口・交流人口は観光を含めて捉えるべきで、その入口となる観光の役割は大きい」と強調した。

「総務省の一番の目標は持続可能な地域社会をつくること」と恩田氏

「ふるさと住民登録制度」の制度設計は?

「ふるさと住民登録制度」では、誰もがアプリで簡単に登録でき、担い手活動などを通じて地域との関わりを深めることができるプラットフォームを構築する。国費で「ふるさと住民アプリ」を開発する方針だ。

現在進めている制度設計では、住民登録について「ベーシック登録」と「プレミアム登録」に分けることを想定している。登録すれば、いずれも登録証を発行する。

「ベーシック登録」は、誰でも、どの地域でも登録することが可能で、登録数の制限は設けない。総務省としては、観光リピーターやふるさと納税などを入口とした地域との関わりを持つ人を対象として、その人たちによる地域経済の活性化を期待する。

「プレミアム登録」は、年間3回以上特定地域に赴き、ボランティア活動やプロボノとして地域に貢献するなど地域との関わりがより深い人たちが対象。具体的な要件は各自治体が設定する。自治体からは、地元住民と同様のサービスやサポートを受けられるようにするほか、「地域商店街のクーポン、地域通貨などを発行して、地域内での消費を促すことも考えられる」(恩田氏)という。

また、恩田氏は、プレミアム登録では、都市圏の人材と地域の人材との交流にも期待をかける。地域の課題解決だけでなく、プレミアム登録者にとっては現場を知ることで新たなビジネス創出の機会が生まれると見込む。

さらに、プレミアム登録には、二地域居住者も想定。現在「二地域居住先導的プロジェクト実装事業」を推進している国土交通省との連携も検討していく考えだ。

登録に際しての本人確認では、マイナンバーカードを利用する。ベーシック登録は任意、プレミアム登録ではマイナンバーとの紐付けを必須とする。住民票とは別次元とすることで、地域生活での利便性を高めていきたい考えだ。

恩田氏は、「まずは自分の好きな地域を応援してもらう。その活動が高じてプレミアム登録をする。そのような流れにしていきたい」と話すとともに、「この制度を契機に、副業的に地域に入り、地域のために仕事をしていただけるような人たちを増やしていきたい」と意欲を示した。

ふるさと住民登録制度の概念図(総務省資料より)

本格運用は2027年3月中を想定

総務省では、「ふるさと住民登録制度」の本格運用に向けて、2026年3月中にガイドラインを発表する。また、2026年度からは「ふるさと住民登録制度モデル事業」を開始。人口規模や地域のバランスに配慮し、10~20団体を選定する方針だ。モデル地域でふるさと住民アプリでの実証を行い、取組み内容やアプリの機能などの効果検証をおこなう。

恩田氏は、ふるさと住民アプリについて、「ふるさと住民と地域住民とがコミュニケーションできるような場を設定するのがカギ。それがなければ、長続きしない」と話す。アプリでは、自治体から登録者に向けて、観光情報などさまざまな発信とともに、地域との関係性についてのアンケートをおこなう機能やオンラインコミュニティ、活動履歴の記録もできる機能を検討している。

2026年春頃には、アプリ開発を始め、開発状況に合わせてモデル事業を展開。その後、2027年3月中に本格的な運用を開始する計画だ。

関係人口の創出・拡大のネックと目されるのが交通費と宿泊費。ただ、恩田氏は「アプリの活用が進み、移動や消費などデータが蓄積されていけば、(関係人口や二地域居住のための)さまざまな民間サービスも出てくるのではないか」と話し、「そこは、交通を含めた観光事業者が活躍する場になる」と期待を込めた。

人口減少や高齢化が進み、日々の暮らしに欠かせない機能の維持も困難な地域もあるなか、「総務省の一番の目標は、一人一人がしっかりと暮らせるような持続可能な地域社会をつくっていくこと」と恩田氏。

総務省は、ふるさと住民登録制度を、地域、ふるさと住民、事業者がウィンウィンの関係になるような仕組みに育て、ふるさと納税者と同等の約1000万人の利用者を目指す。

聞き手:トラベルボイス編集長 山岡薫

記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹

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