渦中の「てるみくらぶ」が記者会見、約3000名が海外渡航中に破たん、経緯説明と旅行者に渡航中止を呼びかけ

渦中にある旅行会社「てるみくらぶ」が2017年3月27日に記者会見を開いた。代表取締役、山田千賀子氏はトラブルに至ったこれまでの経緯を説明。同社が破綻直前まで新聞広告で現金一括支払いキャンペーンや旅行販売を続けていた点を指摘されると「とにかく生きることしか考えていなかった」と話し、「このような結果を招くことは全く考えていなかった」と資金集めと指摘される疑惑を否定した。

山田氏によると、てるみくらぶが破産を決意したのは会見当日の朝だったという。同社は、同日、東京地裁に自己破産を申請し、破産手続き開始決定を受けた。申請時の負債総額は約151億円。債務の内訳は、一般旅行者の約3万6000件の申込みに対して約99億円、96社の仕入れ先(現地ホテルやランドオペレーターなど)に対して18億円、金融機関などの借り入れが32億円、国際航空運送協会(IATA)に4億円が試算されているという。この規模の破たんは、旅行会社としてリーマン・ショック後の最大規模となる見通しだ。

てるみくらぶ代表の山田氏

現在、同社では旅行代金の支払い済み顧客に対して、現地でのトラブル防止のために渡航中止を呼び掛けている。申し込み者の数では、現在のところ件数で3万6000件、人数で8万から9万人に上ると試算しているという。てるみくらぶの弁済業務保証金限度額は1億2000万円で、日本旅行業協会(JATA)の弁済業務保証金制度(旅行会社の破たんなどで旅行者がおった債権を弁済する制度)を活用しても、ひとりあたりの旅行者に戻る旅行代金はわずかになる計算だ。

また、3月23日の段階で、同社が取り扱った旅行者の約3000名が渡航中。行き先はハワイ、韓国などアジア、ヨーロッパが中心で、すでに現地にいる旅行者に対しては現地オペレーターを介して、ホテルなどに再度代金を支払えば利用できることを連絡している。

帰国のフライトに関しては、顧客に発券済みの航空券が渡っている段階で乗れるのが基本のため、山田氏は「問題はないはず」とした。ただし、現地空港のスタッフが誤って、てるみくらぶ経由の乗客を拒否することがあるかもしれないという。

「てるみくらぶ」破たんまでの経緯

山田氏が説明した破たんまでの経緯はこうだ。

同社は、1998年の創業以来、格安ツアーや格安航空券を販売する会社として成長してきた。格安ツアーを販売できたのは、航空会社やホテルの閑散期の空席や客室を安価で仕入れられた点が大きいという。しかし、近年、仕入れ先の直接販売が増え、航空機材も安い座席の確保は難しくなってきたという。各種仕入れの環境が変わり、大手と同程度の仕入れ価格が増えていった。

そこから経営は悪化。転換を求めて、一昨年からシニア向け商品を新聞広告で販売するようになったが、その媒体コストが高コストになり「見誤った(山田)」。

今回の破たんへの発端は、IATAに対する3月23日の支払い4億円の調達ができなかったこと。山田氏によると、銀行やスポンサーによって調達できる見通しをつけていたが、22日のタイミングでその調達ができないことが判明したという。IATAへの支払いでデフォルトを起こすと、即日、全航空会社の発券ができなくなり、他旅行会社から仕入れることになる。それは資金繰りとして不可能なため、23日の深夜から顧客に旅行中止を求める告知を開始した。山田氏は「自転車操業のつもりはなかった」としたが、実際は自転車操業に近い状況だったことは否めない。

そして、今週末の状況をみて、今朝、破産を決意したという。

会見の最後、山田氏は申込み済みの旅行者に対して陳謝。また「本日以降(破たん以降)、有効な航空券を持っていても、現地でのサービスで再度お金を払うことを保証ができない、何とか、出発をお控えいただき、皆様の安全につなげていただきますようおねがいいたします」と呼びかけた。

これまでパートナーシップを組んできた旅行業界に対しては、「最後までがんばろうとしたことがかえってご迷惑をかけてしまった。長い業界の付き合いのなかで、うちがこけたらどうなるという恐怖があった」と謝罪。記者からの「経営判断のミスが今回のことになったのか?」という質問に「はい、そうなります」と答えた。

国交省で行われた記者会見には多くのメディアが集まった。

トラベルボイス編集部 山岡薫

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