訪日客の「ナイトタイムエコノミー」は消費拡大の切り札か? 国も本腰をあげた施策と渋谷の実例を聞いてきた

インバウンド市場と地方創生を目的とした商材とサービスが集まる展示会「インバウンドマーケットEXPO2019」で、訪日外国人旅行者の消費額を増やすうえで注目されている「ナイトタイムエコノミー」についてのセミナーが開催された。そこでは、自民党時間市場創出推進議連の会長を務める衆議院議員河村建夫氏が「日本経済におけるナイトタイムエコノミーの重要性、緊急性」をテーマに講演したほか、ジェイノベーションズ代表取締役の大森峻太氏が「渋谷ナイトツアーの実例にみるナイトタイムエコノミー成功の秘訣」を紹介した。

訪日外国人の消費行動は「モノ」から「コト」に移行しているなか、観光庁によると娯楽サービス費購入率も2012年の21.5%から2017年は35.7%に上昇している。一方で、消費支出に占める割合は2017年で3.3%、アメリカの12.2%、フランスの11.1%(2015年データ)と比較すると低い水準に留まっている。また、2018年の訪日外国人による現地消費額は4兆5000億円と過去最高を記録したが、2020年に8兆円という目標には程遠い。

河村氏は、この現状を踏まえ、「非消費時間と言われているナイトタイムでのコンテンツを充実させるとともに、深夜の交通アクセスの検討も含めて、ナイトタイムエコノミーを推進する仕組みづくりが大切」と強調した。そのうえで、ロンドンの事例を紹介。24時間運行の地下鉄や「ナイトメイヤー(夜の市長)」制度を導入するなどの施策により、ナイトエコノミーだけでその経済効果は263億ポンド(約4兆円)に達し、2029年には283億ポンドに増加すると見込まれているという。

自民党時間市場創出推進議連では昨年12月、アドバイザリーボード会議メンバーからのヒアリングを受けて中間提言を取りまとめた。そのなかで、コンテンツの拡充や場の整備、安全安心の確保、情報発信の一元管理などに加えて、交通アクセスの向上として、鉄道やバスの営業時間延長、週末の終夜運行、相乗りタクシーの解禁なども盛り込んだ。

そのうえで、政策KPIとしてナイトタイムGDP5兆円を設定。河村氏は「今年1月から始まった国際観光旅客税などを活用しながら、ナイトタイムエコノミーの活性化のために必要な予算を確保していきたい」と意欲を示した。

ナイトタイムエコノミーの重要性を強調する河村氏

渋谷のナイトタイムツアー、再訪や滞留時間延長にも貢献

訪日外国人旅行者向けのガイドツアーを提供しているジェイノベーションズでは現在、ナイトタイムツアーとして渋谷と原宿でそれぞれ3つのコースを用意している。代表取締役の大森氏によると、一番人気は渋谷のメインエリア、つまりセンター街のツアーだという。「リピーターでもガイドの案内によって新たな発見がある」ことが理由のようだ。

現在のところ英語のみのツアーのため、参加国ではアメリカが一番多く、次いでオーストラリア、フィリピン、ドイツ、イギリス、フランスの順。時間帯別販売数では18時台が最も多く、予約はAirbnbやViator などのOTA、渋谷区の観光案内所、自社ウェブサイトからだという。

大森氏は「ツアーは街と旅行者をつなぐきっかけづくり。ツアー終了後に再度訪問する旅行者も多く、それによって滞在時間が伸び、消費額も増える」と説明。そのうえで、大切なのはガイドに対する信用だとし、「信用があれば、再訪し経済効果が生まれる」と話した。

また、大森氏はナイトタイムエコノミーの成功事例として渋谷のドン・キホーテを挙げた。外国人の免税販売のピークは21時〜24時。「旅行者は日中、お土産を持ちながら観光はしたくない。お土産だけを購入して、そのままホテルに戻りたい」(大森氏)。ドン・キホーテはその消費行動にうまく対応しているという。

このほか、大森氏は初の試みとして渋谷区と新宿区がタッグを組んだ「Tokyo Night Time Passport」を紹介。両区の指定50店舗で使用できる食事クーポンは、ぼったくり対策になるほか、メニューが指定されているためお通し代金のトラブルもないことから利用者に好評だという。

ジェイノベーションズでは、ツアーに加えて、外国人が集まる交流イベントをホステルなどで企画。ホステルでの飲食売上も伸びたことから、他の場所での開催も検討しているという。

大森氏は、ツアーやイベントの実例から、ナイトタイムエコノミーの成功のカギとして、「地元の人達を巻き込むこと」「まず地元の人たちが楽しみ、楽しませること」「外国人目線で考えること」を挙げるとともに、今後の取り組みとしては「夕食の後にやることがない」という声が多いことから、「終電から始発までの時間帯や早朝のツアーも実験的に造成したい」と、より広範なナイトタイムエコノミーに意欲を示した。

ナイトタイムツアーの経済効果を強調する大森氏

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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