沖縄県のインバウンド誘致策を聞いてきた、航空とクルーズのハブ構想から欧米豪市場の取込み、離島誘客まで

「世界水準の観光リゾート地」を目指す沖縄県。その目標に向けて舵取りをするのが広域連携DMOの沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)だ。今年のWiT Japan & North Asia 2019にはインバウンド誘致の実働部隊である誘客事業部海外プロモーション課課長(2019年7月時点)の平川美由紀氏が参加。沖縄県の訪日市場の現状は? 世界水準の観光リゾート地に向けた課題とは? 平川氏に聞いてみた。

航空とクルーズのハブ構想、フライ&クルーズの商品開発も

2018年度の沖縄県への観光入込客数は前年度比4.4%増の999万9000人で、6年連続で過去最高を更新した。そのうち、外国人観光客数は同11.5%増の300万人となり、11年連続で過去最高を更新。当初の目標は、国内700万人、海外300万人の計1000万だったことから、「概ね目標は達成できた」(平川氏)。

沖縄県では観光振興基本計画(第5次)で、2021年度までに観光入込数1200万人、観光収入1兆1000億円を目指す。外国人観光客数の目標値は2019年度で324万人だ。

沖縄県は経済政策としてIT、物流、航空、クルーズの「4つのハブ構想」を掲げているが、そのうち観光施策と関わってくるのが航空とクルーズ。沖縄は東南アジアと東アジアを結ぶ経済圏のなかで最適な位置にあることから、平川氏は「沖縄をファーストポイントとして、アジアからの観光客を日本国内に運ぶ」施策を明かす。物流ではすでにANAが沖縄の地理的利点を生かして貨物拠点を那覇空港に置いている。それを観光客の流動でも進めようという構想だ。

航空の面では、現在那覇空港と直行便でつながっている国・地域は、台湾、韓国、香港、中国、シンガポール、タイ。2019年夏期スケジュールでは20社が国際線で乗り入れ、運航便数も週223便にまで拡大している。アジアでのLCC市場の成長が要因のひとつだが、「今後もLCCに限らず、富裕層の取り込みのためにもフルサービスキャリア(FSC)の誘致にも力を入れていく」考えだ。

クルーズでは、沖縄県への大型クルーズ船の寄港も急増しており、5つの港を合わせると県としては日本では圧倒的なトップ。その成長は航空以上で、那覇港への寄港数は2010年の52回から2018年は243回と拡大。5港合計でも526回と大幅に増加した。

こうしたマーケットの背景から、外国人観光客誘致では「フライ&クルーズの商品開発に注力している」という。沖縄を航空とクルーズのハブとした観光戦略を進めていくうえで、2020年3月末の那覇空港第2滑走路の供用開始や4月の平良港新クルーズ船専用岸壁の運用開始にも期待がかかる。

欧米豪の取り込みと離島への誘客に注力

平川氏は、OCVBが注力するポイントとして、欧米豪の取り込みと離島への誘客を挙げる。現在の地域別のマーケットシェアでは8割が東アジアからだが、欧米豪からの観光客は滞在期間も長いため現地消費額の増加にも期待がかかるマーケットだ。OCVBでは航空会社と協業を重視しており、たとえばANAとのコラボレーションではドイツとオーストラリアで東京経由沖縄のキャンペーンを展開した。また、沖縄の認知度向上を目的として異業種とも協業。オリンパスの世界広告では沖縄を舞台として露出を図った。

その効果は徐々に表れており、平川氏は沖縄に直接乗り入れる入込しか正確なデータは取れないと前置きしたうえで、「個人的な肌感覚やホテルからの情報から、欧米豪からの観光客は確実に増えている」と話す。

離島への誘客も現地消費額を増やす施策のひとつ。インバウンドだけでなく国内旅行でも「本島+1島」を売り出すことで、滞在期間を伸ばしてもらうとともに、観光客の分散化を図る狙いもあるという。

今年4月には下地島空港が開港。7月からはジャットスタージャパンが関西から、香港エクスプレスが香港から乗り入れていることから、「宮古島のプロモーションにも力を入れていきたい」考えだ。

シェアバイクで観光客流動の見える化

マーケティングではデジタルマーケティングチームを新設した。多言語オフィシャルサイトやSNSでのコミュニケーションを通じて各マーケットに情報を発信している。現地での過ごし方はマーケットによって異なるため、情報の内容も変わってくる。たとえば、観光というよりも美容院に行くなど沖縄の日常をそのまま楽しんでいる台湾向けには、日本人と同じレベルの情報を発信しているという。

また、最近ではレンタルシェアバイク「ちゅらチャリ」のサービスを始めた。GPS搭載の自転車を貸し出すことで、観光客の流動を追跡。「まだまだビックデータの活用には遠い」としながらも、観光客の動きを見える化することで、今後のマーケティング施策に生かしていく方針だ。

島民の生活と経済活性化のバランスを

一方で、外国人観光客の急激な増加によって課題も出てきた。特に、一気に数千人が上陸するクルーズ。宮古島の平良港や石垣港にも大型グルーズ船が寄港する。「地元にお金は落ちるものの、島民の生活と経済活性化のバランスをとっていかなければいけない」と平川氏。大量の観光客の一極集中は、環境破壊だけでなく、地元のコミュニティーが疲弊しかねないとの問題意識を持っている。

住民の満足度調査では、観光の恩恵を受けていないと感じている住民も多いという。「実際のところ、そういうことはないが、目に見えないところもあるので、その恩恵をしっかり伝えていく必要もある」と話し、住民に理解を求めていく努力を続けていく考えも示した。

混雑緩和に向けては、二次交通や海上交通の整備も議論に上がり始めているという。「サステナブルツーリズムに向けた具体的な活動はこれから」(平川氏)のようだ。

「JAPANという統一ブランドで沖縄のよさがアピールできれば」

OCVBは広域連携DMO。沖縄というブランドを対外的に売り込んでいくために、各自治体や地域連携DMO、地域DMOと定期的に会合を持っているという。また、「沖縄・奄美」で世界自然遺産を目指していることから、県の枠を超えて奄美を加えた広域連携も強化している。

DMOの役割としては、日本政府観光局(JNTO)との関係も注目さているところだ。政府は、地域は素材の磨き上げを行い、JNTOが海外への発信を一元的に行うことを決めた。平川氏は「地域ごとに特性やターゲット層が異なるため、一元的にまとめることができない部分は出てくるのではないか」と口にする。たとえば、沖縄県の場合、夏に海外で開催される旅行博では、JNTOと同じブースではなく、単独で出展する場合があるという。「夏の旅行博でJNTOは日本の冬を売ろうとする。しかし、沖縄は日本で唯一の亜熱帯気候。事情が違う」からだ。桜も沖縄は1月には咲く。

「JAPANという統一ブランドのなかで、沖縄のよさがアピールできればいいのだが・・・」。多言語サイトで情報を多元的に発信し、SNSでもマーケットに合わせた情報を提供しているOCVB。JNTOは、実績のある地域の取り組みと一元的な情報発信をどのように調整していくのか。その関係性は今後も注目だ。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

※本記事は2019年7月5日に取材したものです。

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