英トーマスクック破綻から、ホテルが学ぶべき4つのポイントをまとめてみた【外電】

世界で最も歴史ある旅行会社の一つ、トーマスクックが去る2019年9月に経営破綻した。同社との取引が多かったスペインでは、何百軒ものホテルがクローズの危機に直面していると報じられている。トルコやチュニジアでも、厳しい影響が出ているという。

これが引き金になり、閉鎖するホテルもあり得るが、多くのホテルにとって、今回の一件は、目を覚ますよい機会とも言える。急激に変化する時代を直視し、新しい商機に目を向けるきっかけになるはずだ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

旅行販売代理店とツアー催行会社は、長い間、ホテルの運命を左右する重要な取引相手だった。だがオンライン旅行会社、予約エンジン、チャネルマネジャー、メタサーチなどが登場し、多くのホテルで取引先の「ビジネスミックス」が多様化する動きが進んだ。

トーマスクック破綻の嵐に巻き込まれてしまったホテルでも、流通チャネル戦略を立て直すことで、状況はよくなるはずだ。

一つの事例が、パラディウム・ホテル・グループだ。同社では旗艦ホテルの多くで、流通の多様化を積極的に進めてきた。

同社の最高営業マーケティング責任者、セルジオ・ジアツェク氏によると、今では5つ星クラスに格付けされているウシュアイア・イビザ・ビーチホテルも、かつてはツアー客が多く利用するホテルだった。

「当時、このホテルの予約の90%はツアー催行会社からだった。ピークシーズンの宿泊料金は一人50ユーロ。だがホテル名に“ウシュアイア”のブランドを冠し、改装工事を施して、今では1泊500ユーロのホテルに生まれ変わった。それから予約の90%を、ちゃんと収益が出る流通経路に変えた。eコマース、OTA各社などもあるが、予約の多くは、自社ウェブページからになっている」と同氏は話した。

パラディウム・ホテルでは、運営する全ホテルについて、同じようにまず物件のアップグレードを行い、それからデジタルを活用して、流通経路を広げた。

同社の法人レベニュー担当ディレクター、ディエゴ・フェルナンデス氏は、「ホスピタリティ産業で成功するには、すべてにおいてバランスを重視することがカギになる。よく言われることだが、卵を全部、同じバスケットに入れるのはよくない」。

「もし、そのバスケットが壊れたら、すべての卵が割れてしまう。ホテルの流通戦略でも、同じように考えている。あるマーケットがうまくいかなくなっても、他に移しかえればよい」。

トーマスクック破綻で打撃を受け、業績回復に悩んでいるホテルは、至急、流通経路の多様化を検討すべきだ。

今すぐやるべき4つのこと

1. 自社の流通チャネルを知る

トーマスクックとの契約に送客を頼り切っていたホテルよりも、流通経路を多様化していたホテルの方が、これからのビジネスは安定する。

なかには、宿泊客の100%がトーマスクック経由というホテルもあったようだが、まさに「全部の卵を同じバスケットに入れていた」ケースだ。

すでに複数の流通経路を使って集客しているホテルは、次の段階として、どの流通チャネルがベストな収益を生んでいるのか、どんな客層を送ってくれているのか、きちんと分析することに着手しよう。適切な価格で、適切な顧客セグメント向けに商品を提供できるよう、戦略的に行動しよう。

2. 値下げの誘惑に負けないで

トーマスクック・エアラインズが運航停止した結果、航空運賃は急上昇し、ホテル料金は急降下した。カナリア諸島はちょうどハイシーズンに入ったところだが、現地ホテルでは、契約ビジネスの大半を失い、対応に苦戦している。

こういう時、手っ取り早いのが価格を下げること、あるいは他のツアー催行会社と契約することだが、そうした誘惑に負けないでほしい。今後のビジネスが苦しくなるからだ。

すでにデジタル流通への対応ができているホテルならば、そこまで状況は悪くないはずだ。インフラが整備され、取引関係もあるからだ。

契約ビジネスについても、こうしたホテルの方が有利になる可能性が高い。これまで流通戦略をたてていなかったホテルは、ビジネスの再構築が急務だ。時間は刻刻と過ぎていく。

3. ロイヤルティ会員組織を活用しよう

宿泊客向けのロイヤリティ・プログラムを運営しているホテルなら、今こそ、会員向けによく練った内容の特典を提供するべきだ。顧客にとって価値があり、同時にホテルにも利益をもたらす内容を熟考しよう。

自社のターゲット顧客に狙いを定め、パーソナライズしたパッケージ商品を企画したり、追加販売のチャンスをうまく活用すること。ゲストがホテルに到着した後は、宿泊以外の各種サービスの利用を促す手法も考えよう。

4. 2021年より先のことをプランしよう

ツアー催行会社との契約は、だいたい12~18カ月前に交渉が行われるので、トーマスクック破綻の影響は、2020年いっぱい、あちこちの市場に残るだろう。

この期間は、2021年以降、自社がどんな目標を達成したいのかを考える時期と位置づけ、ツアー催行会社との契約交渉や、新しい流通チャネルとの取引に臨むべきだ。2020年も厳しい一年になるかもしれない。しっかりと備えよう。多様化と、クリエイティブであることが重要になる。

経営破綻したのはトーマスクックだけではない。8月にはLateRooms とSuperBreakの2社が倒産し、9月にはアモーマが営業停止した。

欧州市場は、ブレグジットを巡る不透明な情勢が続いており、米国ではエコノミストたちが不況について話している。ホテルも情報収集を怠ってはいけない。

ホテルも、データと分析をベースに、何層ものレベニュー戦略を組み立てておくべきだ。次に何が起きようとも、それに対処しつつ、前へと進んでいくことができる。問題は、備えはあるのかだ。では、読むのはここまでにして、戦略にとりかかろう。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Surviving Thomas Cook: Damage to hotel ecosystem shows distribution mix is vital anywhere

著者:ダグラス・グリーン氏 Duetto社

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