OYOホテルの今の取り組みを聞いてきた、日本での拡大方針からコロナ禍の現状まで

フランチャイズ方式で展開するインド発のホテルチェーンOYO Hotels & Homesが(オヨホテル/OYO)2019年4月に日本法人を設立し、日本での事業を開始してから1年を超えた。その間、グローバルでは世界第2位のホテルチェーンへと規模を拡大し、日本では200軒・約6000室と契約。しかし、昨年末には宿泊施設との契約トラブルがメディアに報じられた。

今後は、今年3月に発表した日本の旅館が対象の新ブランド「OYO Ryokan」を加え、ホテルと旅館の両輪で拡大を図っていく方針だ。日本でどのような成長を目指すのか。オヨホテルの現状から今後の営業方針を、OYO Hotels Japanの事業開発を統括するバイスプレジデント ヘッド・オブ・サプライの崎島淳一氏に聞いてきた。

※編集部より:本記事の取材は2020年3月中旬に行ないました。記事の最後には、その後の状況を改めて質問し、書面で得た回答を踏まえて追記をしています。

-ご略歴とOYOでの担当職務、日本の宿泊業界に対する印象をお聞かせください

崎島氏 新卒後は三井物産で海外駐在やテクノロジー企業の投資事業に従事し、直近ではファーストリテーリングで、M&Aや提携による事業開発やグローバルのサプライチェーンマネジメントに携わっていた。新規事業の創出や多拠点にわたる事業の経営、テクノロジーで世の中を変える事業の経験があり、そういう意味でOYOでのポジションは非常にフィットすると思っている。

日本は魅力的な国で、海外からの観光ニーズがあるが、人口減や市場縮小の課題を抱えている。特にホスピタリティ業界は中小事業者が多く、新しいビジネスの仕方に対応しきれていない。そこに対し、テクノロジーを使って宿泊施設の改革をサポートし、グローバルのプラットフォームによる集客を提供する。ポテンシャルのある日本のマーケットに対して、OYOには解決策を提供できる力があると思っている。

担当職務は、事業開発、サプライ(加盟宿泊施設の新規開拓)。契約施設の開拓だけではなく、日本はOYOにとって新しい市場なので、何が求められているのかを考えることもサプライの仕事だ。今回、新たに旅館ブランドを立ち上げたが、ほかの宿泊施設の形態もある。こうした施設をどう取り込めるのか、考えることも私の仕事になる。

-昨年来、発生している宿泊施設との契約問題の現状は?

崎島氏 様々な課題を抱えていたが、一つ一つ解決をしてきており、現在は新たな問題は発生していない。問題が発生した当初は、我々のプロダクトやサービスのすべてが、日本で求められる水準で対応できていなかったのだと思う。また、日本の商習慣、商談のニュアンスがきちんと汲み取れていなかったために、お客様を怒らせてしまったことがあった。

ただ、この(3月までの)数か月の間に私を含め、経営陣に日本人が加わった。お客様一人一人の困りごとをつぶさに見て話を聞いて対応し、解決に向かっている状況だ。サービス、プロダクト面も改善している。

課題があったのは事実だが、一つ一つ解決できると思っているし、私が参画した数か月前と今を比べると、非常に進んでいる。厳しい声を頂くことは今後もあると思うが、加盟施設に「OYOに入って本当によかった」と言っていただける成功体験を積み重ね、宿泊施設数の拡大との両方をかじ取りして、成長に繋げていく。

-現在の組織体制は?

崎島氏 社員数は500名強(3月時点)。代表のプラスン・チョードリーを筆頭に、サプライとマーケティング等を行なうデマンド、レベニューマネジメント、オペレーションやPGX(パートナー・ゲスト・エクスペリエンス)、プロダクト(テックチーム)があり、すべての部門にテックチームが関わっている。

例えば、予約やオペレーション管理をするシステム「OYO OS」を作るのはテックチームだが、それを使って宿泊施設をサポートするのがPGXチーム。また、サプライ部門でも、宿泊施設に応じた解決策をデータを見ながら提案しており、どの部門でもテクノロジーが重要な要素になっている。

-新たに旅館ブランドが発足した。ホテルと旅館のブランド体制での営業方針は?

崎島氏 ホテルや旅館によって抱える課題の傾向はあるが、それぞれ多くの課題を抱えており、それが施設ごとに違う。ただ、大きく言えば、テクノロジーを活用しておもてなしに集中できる体制を提案していく。

これまで宿泊施設は、集客や人手不足、価格の最適化、ハードの老朽化対策などそれぞれの課題に対し、その専門事業者と契約して、それぞれの課題に個別に対応する必要があった。中小事業者である独立系施設が一つひとつ対応していくのは費用と労力の両面で難しいが、OYOのプラットフォームは一括で提供できる。どの部分を使っていただくのか、我々の解決策を示しながら、提案していく。宿泊施設にはおもてなしに集中していただき、それ以外の部分を我々が行なう。それが今の時代の流れだと思う。

-新型コロナウイルスの影響は?

崎島氏 新型コロナウイルス影響で、世の中全体でみても売上が下がる傾向にあるが、OYOの日本のポートフォリオ全体では、2020年1月と2月を比べると、2月の方が改善しており、持ちこたえている。テクノロジーの活用による適切なマーケティングと値付け、OTA対応による流通管理で宿泊客に選ばれる体制にすることが比較的うまくいっているのではないか。今後は状況が変わるかもしれないが、世の中全般よりも影響を小さくすることができていると思っている。

[追記] 3月以降の業況と今後の展望

この取材は2020年3月中旬に開催された、OYO Ryokanのブランド発表会当日に実施したもの。この頃は、新型コロナウイルス感染拡大防止への意識は強まっていたものの、政府や自治体による強い「外出自粛要請」は出ていなかった。インタビュー実施後から緊急事態宣言が全面解除となった現在までの状況について問い合わせをし、崎島氏からの書面の回答内容を以下にまとめた。

-2月、3月の稼働率は?

崎島氏 OYO Hotels Japanに加盟するホテル・旅館の平均稼働率は、1月が59%、2月が62%、3月が51%だった。新型コロナウイルスの影響を感じ始めたのは、中国の訪日旅行客が大幅に減少した2月以降で、4月の緊急事態宣言を境に、当社でもキャンセルが多く発生するようになった。

ただし、加盟ホテルの稼働率が国内ホテルの平均値(1月54%、2月53%、3月32%:観光庁発表)に比べて高い数値を維持できたのは、当社が行なっている国内と海外の需要と販売チャネルの分散とAI活用の価格最適化による予約獲得、マーケティング戦略の3点が奏功したと思う。

特にマーケティングでは、新規ユーザー獲得施策やキャンペーンを随時実施しており、4月中旬から5月にかけてはアプリの新規ダウンロード者を対象に500円で宿泊できるワンコインキャンペーンを実施。法人対象にリモートワーク支援とする平日5日間の宿泊プランを用意した。

また、新規加盟のホテルや旅館も随時募集している。3月には、返済不要の一時支援金を提供するサポートプログラムを開始したところ、同月の新規ホテルの契約数が前月に比べ、3倍以上増加した。

-緊急事態宣言が全面解除となり、需要喚起キャンペーンも予定されている。今後の展望は?

崎島氏 完全に回復するには相当に時間がかかると思うが、比較的早期に回復傾向になると考えている。ビジネス需要は徐々に回復するだろう。レジャー需要は、緊急事態宣言が39県で解除となった5月17日以降、動き始めており、夏休みの予約が増加した。5月18日には全国紙で宿泊プレゼントを提供したところ、計2万件以上の応募があった。

応募には、収束後の旅行を楽しみにしているというコメントが多く、外出自粛が不要になった際には、安全面に万全を期した上での宿泊旅行のニーズが増加すると期待している。

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