いま、観光地域づくり法人(DMO)が取り組むべき10項目、世界の事例から考えてみた【外電コラム】

デスティネーションマーケティングに携わる人々が、パンデミック下で自信をもって提案したり、タイムリーに情報を出すことは、なかなか難しい。私たちDestination Thinkがフェイスブックに開設しているDMOサポートグループでも、クライアント企業との会話でも、こうした意見を多く耳にする。

人々の感情も、様々な規制も、目まぐるしく変わる今のような状況では、これまでお手本だった成功の定義すら、少々の修正が必要かもしれない。コンテンツマーケティングは、長い時間をかけて進めていくプロジェクトであり、過去に実証済みの原理原則は、もちろん今も変わらない。デスティネーションの人気ネタは、どんどん打ち出していくべきだし、地元コミュニティには、時代や状況に即したサポートが必要だ。やるべきことは、常にいくらでもある。

そこで私たちは、「次フェーズの」コンテンツについて考えるブレインストーミングを、活気ある議論で始めたい人のために、コミュニケーションを成功へ導くのに役立つ取り組みを選び出し、以下の10項目にまとめた。不透明な状況下で、何をどのように発信するべきかのヒントになれば幸いだ。気になる項目だけ、読んでいただいてもよい。

  • 1:「安全だ」というメッセージは何度でも繰り返す
  • 2:ガイドライン遵守は、むしろポジティブなアピールポイントである
  • 3:正しい模範行動を画像で示す
  • 4:新型コロナウイルスに関するインスタグラム・ストーリーズ作成
  • 5:最重要メッセージはインフォグラフィックで視覚に訴える
  • 6:SNS戦略は、遠い先のことまで計画しても無駄
  • 7:ローカルビジネスをサポートする方法を紹介する(観光から周辺産業まで)
  • 8:デスティネーションを他と差別化する魅力や体験のPRは継続する
  • 9:文化体験をソーシャルメディアでも楽しめるように工夫してみる 
  • 10:ネガティブなコメントへの返信は、相手に寄り添う気持ちで

1:「安全だ」というメッセージは何度でも繰り返す

繰り返し伝えることが効果的だ。当面の間は、安全や健康に関する内容を分かりやすく明確に打ち出すことが、旅行のプロモーションよりも優先される。マーケティング担当者の多くにとって、今まで未経験の分野かもしれない。

担当者やコンテンツチームは、限られた時間の枠内で、複雑な内容を自ら理解し、きちんと相手に伝えるという難しい課題を突き付けられている。簡単なことではない。相手に響く言葉が見つかったら、何度も繰り返し発信しよう。

例えばカナダ太平洋岸沖の群島、ハイダ・グワイ観光局(Go Haida Gwaii)では、ここ2カ月間、ハイダの法律を守り、緊急事態の制限が解除されるまでは島を訪れないでと繰り返し発信してきた。同観光局のツイート内容のコピーは常に同じ文言だが、一緒に添える画像は様々なものを使い、将来の訪問客に向けて、デスティネーションの魅力をPRする出来栄えになっている。


同じメッセージを繰り返すことで、伝えたい内容が明確になり、雑多な内容が並んだタイムライン上でも分かりやすい。同時に、パンデミック下でのツイート内容について、必要以上に悩む手間も省ける。

2:ガイドライン遵守は、むしろポジティブなアピールポイントである

パンデミック対策の基本ルールは周知の通り。手を洗い、人との物理的な距離を保ち、マスクを着用する。でもルールを押し付けるのではなく、他者へのリスペクトや気遣い、責任ある行動の形として掲げることもできる。いくつか例を挙げてみよう。

カリフォルニア観光局(Visit California)は、「#RespectCalifornia(リスペクト・カリフォルニア)」というタグを使ったメッセージで、このアプローチを取り入れた。インスタグラムに掲載したキャプションの一つにはこうだ。

“自分の行動に責任を持ち、それぞれのやり方で、夢をかなえる地カリフォルニアでの日々を過ごす地域のみなさんに感謝。住民たちは、行動規約「#リスペクト・カリフォルニア・コード」を守りながら、色々な過ごし方を楽しんでいます。ここを訪れる予定の方は、「#RespectCalifornia」をタグ付けして、安全で責任ある旅行の楽しみ方がより広く周知徹底されるように、我々を助けてください”。

アルーバ観光局(Aruba Tourism Authority)がビーチでの安全な過ごし方を紹介したビデオでも、現地のルールについて、リゾートホテルが提供するサービスの一環として紹介している。責任ある顧客サービスを行うことで、安心して滞在を楽しんでもらえる上、旅行者の側も、訪問先に対するリスペクトを示しやすくなる。

当社のチームは、サスカチュワン観光局(Tourism Saskatchewan)が「旅行者へ約束」をビデオにまとめるお手伝いをした。地元住民が健康と安全のルールを守るために、どのように協力しているのかを紹介する内容で、今夏、外部から旅行者を受け入れられるよう、態勢を整えることが狙いだった。


3:正しい模範行動を画像で示す

シートベルトを締める。ヘルメットとライフジャケットの着用。許可されたトレイルを歩く。野生動植物に関するエチケット。こうした決まりを守り、安全かつ責任ある行動をとる旅行者の望ましい姿をイメージして投稿することは、これまでも重要だった。同じように、健康管理に関する地域の規則をきちんと守る旅行者の姿を、モデルとして示していくべきだ。例えば、広々とした野外スペースで、マスクを着けた人々が、お互いの距離を保ちながら過ごす様子、といった具合だ。

油断できない情勢が続く昨今だからこそ、より安全な旅行中の過ごし方を示すことで、デスティネーション側が、住民や訪れる旅行者の健康や安心について、真剣に考えていることが伝わる。こうした姿勢は、相手の不安をさらに和らげ、長期的な信頼感にもつながっていく。

以下は、ブリティッシュコロンビア州観光局(Destination British Columbia)が掲載している画像だ。


アドバイスをもう一つ。コンテンツ作成時は、いつも以上に細かい配慮が必要だ。同僚の中で、コロナ禍での旅行を誰よりも不安視している人に、コンテンツを見せて感想を聞いてみよう。特に、コロナ以前に撮影したイベントや屋内スペース、混雑したストリートなどの画像は、大丈夫だと確信がある場合を除いて、投稿を控えたい。

4:新型コロナウイルスに関するインスタグラム・ストーリーズ作成

インスタグラムのプロフィールで、強くアピールしたい情報がある時は、ストーリー機能を使ってアップするマーケティング担当者は少なくない。コロナ関連情報も、タイミング良くアップデートしたい時には同機能が役立つ。2つの事例を紹介しよう。

キャプション:キャンベルリバー観光局(Destination Campbell River)では、「旅行のアドバイス」として、自治体が不要不急の旅行者向けに出している最新ガイドラインを紹介している。

画像やイラストを使って、現地の事業者が導入している健康と安全のためのマナーについて周知徹底している。また旅行の計画段階から、現地の環境保全に留意して準備すること、いつも以上に慎重に下調べすることを促している。


コロナ関連の健康ガイドラインは頻繁に変わるが、オレゴン州観光局(Travel Oregon)は、これに即、対応できているDMOの一つだ。人気のアウトドア観光地が閉鎖や、段階的な再オープンについて、最新情報をアップデートしている。おかげで住民も観光客も、州政府の保健当局が発出している最新ガイドラインがすぐに分かる。画像情報には(作成・更新日時を記録した)タイムスタンプが付いているので、正確で信頼性の高い情報源として、多くの人がシェアしている。


5:最重要メッセージはインフォグラフィックで視覚に訴える

人間の脳は、膨大な情報を処理しているが、その多くは視覚情報だ。インフォグラフィック(視覚情報)などの画像を使うと、学習や記憶力が400%アップするとの報告もある。記憶に残るメッセージを作るなら、視覚に訴えることが重要なのだ。

ベリーズ観光局(Belize Tourism Board)では、到着時の複雑な手続きについて、文字だけでなくビジュアル情報も加えて、4段階にまとめて分かりやすく説明している。


6:SNS戦略は、遠い先のことまで計画しても無駄

色々な規制から世論まで、急に変わることがめずらしくないのが昨今の状況だ。今日は効果的だったメッセージが、明日もそうとは限らない。投稿についてのスケジュール策定では、十分な注意が必要だ。

もう少し穏やかに時間が流れていた頃、当社のチームでは、毎日のモニタリング結果をもとに、事前に投稿スケジュールを決めていた。このやり方は時間を効率的に使える。もちろん時間はこれまで以上に大切だが、「すべて整えて、後は放ったらかし」では、リスクが大きすぎるのが今の状況だ。オンラインでのコミュニケーションが、相手にどのように受け取られているのか確認しながら、投稿しよう。

7:ローカルビジネスをサポートする方法を紹介する(観光から周辺産業まで)

DMOがプロモーションしている地域を、人々が直接、手軽に支援できるような枠組みを作ろう。旅行には慎重にならざるを得ない状況が続き、積極的に地域をPRすることが難しいなかでも、デスティネーションへの興味や理解を深めてもらう方法として有効だ。

地域の物産や事業へのサポートをお願いすることは、コミュニティ・スピリットの醸成につながる。早く旅行できる日がこないかと待ちかねている人にとっては、何か前向きなことに参加する機会にもなる。こうしたメッセージは、地元住民はもちろん、過去に訪れた旅行者やリピーター、熱心なファンを刺激し、地域に対するロイヤリティや親近感を刺激するものだ。

ピーク・ディストリクト観光局(Visit Peak District)では、地元の観光業を手軽に支援できる5つの方法を紹介している。


8:デスティネーションを他と差別化する魅力や体験のPRは継続する

スコットランド観光局(VisitScotland)のインスタグラムには、パンデミックの間もすばらしい画像が常に投稿されている。色々な地域、有名観光地、街角の風景を載せている一方で、渡航制限やガイドラインも掲載。バランスが絶妙で上手い。

あたたかく楽しい雰囲気の同局アカウントには、人気者の牛「ハイランド・クー」を始め、チャーミングなコンテンツが満載だ。2020年はソーシャルメディアも暗い内容に傾きがちだったが、こうした内容があると、気分を明るくしてくれる。

スコットランドは、象徴的な動物の画像などを用いて地元の魅力を伝えることに成功している。


9:文化体験をソーシャルメディアでも楽しめるように工夫してみる

現地で体験できることの中で、オンラインでも楽しめるものを探してみよう。ご存じの方もいると思うが、フェロー諸島観光局(Visit Faroe Islands)が取り組む「リモート・ツーリズム」プロジェクトは、リモート視聴者が、バーチャルで現地散策を楽しめるようにしたもの。現地にいる人が、実際に動いたり体験する動きとビデオを連動させてコントロールする。

同様に、シアトルの高級レストラン「キャンリス(Canlis)」もコロナ禍に対応して業態を変えた代表例の一つだ。バーチャルのビンゴゲーム、ピアノ・ラウンジ、オンラインでの注文などは非常に革新的な取り組みと言える。

もっと簡単に、人との距離と取りながら楽しむ方法もある。今あるものを活用すればよい。米国エルクハート・カウンティにあるルースミア博物館では、フェイスブック・ライブ経由で、スマホと少しの創造力を使い「歴史トリビア・セッション」を開催した。


オハイオ州ダブリンでは今夏、ダブリン・アイリッシュ・フェスティバルをオンラインでバーチャル開催した。今年の早い段階で中止が決まったが、自宅から参加して楽しめる方法を考案した。アイルランド料理のレシピ、赤毛コンテスト(参加者はセルフィ―画像を送付するだけ)、ティックトック・ダンス大会、ライブ・ストリーム配信のコンサートなど。

オーストラリアでは、メルボルン観光局(Visit Melbourne)が、恒例のライブ・パフォーマンスをソーシャルメディア上で開催し、地元のギターデュオの演奏を人々のソーシャルメディア上に届けた。

10:ネガティブなコメントへの返信は、相手に寄り添う気持ちで

不安は怒りのエネルギーになる。地域の住民は、訪れる旅行者がウイルスを運んでくるのではと疑心暗鬼になる。経営者は客が減り、廃業すらしかねないと心配する。感情が高ぶるなかで、旅行業界やデスティネーション、DMOに対して、ネガティブなコメントが噴出する恐れもある。何も悪いことをしていなくても、責められるかもしれない。

「国境は閉鎖されているのでは? それなのにサポートしてとか、旅行してとか、私たちにどうしろっていうの。この投稿、意味不明」

例えばそんなコメントがあれば、返信するべきだ。

その際、腕の見せどころとなるのは、共感を作り出すことだ。相手を否定することなく、公明正大に、自信に満ちた態度で対応することが大切だ。返信がうまくいくために必要な原則は以下の通り。

  1. 穏やかな態度を貫くこと。少なくとも5分ほど置いて、深呼吸してから、返信しよう。
  2. ネット荒らしは無視する。侮辱するコメントを寄せる人は相手せず、ブロックし、管理者に問題を報告する。
  3. 共感を示す。適切である場合は、相手の感情を肯定的にとらえよう。
  4. 事実関係の誤認は訂正する。
  5. 健康、安全、連帯感についてのメッセージを強く打ち出す。

あなたのDMOで、コミュニケーションがうまくいった成功事例には、どんなものがあるだろうか?


※編集部注:この記事は、デスティネーションマーケティング組織(DMO)向けに特化した最新ニュース提供、戦略・ブランディング提案などをおこなう「デスティネーション・シンク(Destination Think)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:SAFETY AND EMPATHY: 10+ DMO COMMUNICATIONS TIPS FOR 2020

著者:デビット・アーチャー&ケリー・カボーン

協力:Destination Thinkコンテンツマーケティング担当チーム

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