アマゾンも参入した「バーチャルツアー」はコロナ後も流行るか? 世界の旅行各社の見立てと取り組みを整理した【外電】

「Ken’s Tour Kyoto」より

アマゾン(Amazon)が、バーチャルツアー体験のプラットフォーム「アマゾン・エクスプローラー(Amazon Explore)」を立ち上げてから7か月ほど経った。このサービスは、世界各地の様々な分野に詳しい人たちとユーザーが、双方向に会話をしながら仮想旅行を体験できるものだ。

多くの国で、数か月間続くロックダウンが実施されことが契機となり、コロナ禍で空いた穴を埋めるべく、アマゾンが同事業に大急ぎで参入したように見える。エアビーアンドビーやトリップアドバイザー傘下のビアターは、2020年4月からこうしたオンライン体験事業を始めていたし、タビナカ事業のクルックやゲットユアガイドも動いている。

だがアマゾンによると、実際にはパンデミック以前からプロダクト開発を進めていたという。同社を含むバーチャル体験を提供している各社とも、国境が開き、世界各地で旅行者の受け入れが再開した後も、この新商品の取扱いは継続する方針。これが世界各地を体験する新しい手法であり、実際の旅行体験を補完するのにも役立つと考えている。

現在、アマゾン・エクスプローラーでは250以上の様々な体験を扱い、料金は10ドルから。世界20都市で7つのカテゴリー(文化&ランドマーク、飲食、健康&美、自然&アウトドアなど。もちろん自分だけのショッピング体験も)を展開している。パートナーは、日本のサカタ・ケン氏のような個人ホストが案内する現地ツアー「Ken’s Tour Kyoto」のようなものから、イントレピッド・グループなどの企業が手掛けるアドベンチャー(Intrepid Urban Adventures)まで様々だ。

今のところ、利用できるのは米国内のユーザーのみだが、アマゾン広報に問い合わせたところ、「開始当初からの反応を分析した上で、展開地域を拡大するかどうかを検討していく」計画だ。

アマゾンはこれまでの予約状況を明らかにしていないが、戦略上で重要になるのは、ショッピングが楽しめるかどうかのようだ。予約状況について同広報では「アマゾンでは常にユーザーの視点から、購買体験を向上させるイノベーションに取り組んでいる。アマゾン・エクスプローラーでは、新しい人や場所と出会い、ユニークな商品を購入したり、新しいスキルや物事の捉え方を身に着けられる場を盛り上げていく」。

再び旅行できるようになり、バーチャル体験のホストが、リアルの体験も提供するようになったら、アマゾンではこれも取り扱うのだろうか。「アマゾン・エクスプローラーはバーチャルサービスに特化したブランドとして発足しており、旅行再開後も引き続きバーチャルサービスとして存続する。バケーションでの滞在先やデスティネーションのお試し体験など、バーチャルだからこその需要はある」(同広報)との考えだ。

パンデミック収束後も衰えない

ウォークス(Walks)社のCEO、ステファン・オドー氏が、いま最も注力していることも、リアルな実体験を補完するものとして、バーチャル体験の提供をどう継続していくかの戦略だ。

同社は過去10年ほど、様々な形でバーチャル体験を提供してきた。だが2020年3月、最大のマーケットであるイタリアが事実上、鎖国状態に陥ったことで、バーチャルはなくてはならない最重要の手法となった。

そこで4月までに12種類以上の「自宅でツアー(Tours from Home)」商品を用意してローンチした。いずれも実際に現地を歩いていたウォーキングツアーをオンライン仕様に作りかえたもので、同社が抱える800人のガイドの何人かがナレーションを担当。さらに色々なビデオ、写真、ストーリーを組み合わせた。

以降、同社では「スポットライト・シリーズ」と銘打ち、オンライン商品を追加していった。内容は、タイムリーなトピックスを意識しており、例えば中国の武漢の封鎖が解除されると、武漢でのウォーキングツアーを提供。夏には、ブラック・ライブズ・マター運動を意識し、ニューヨークの街角を取り上げた。こうしたライブでのオンライン体験シリーズは、ガイド付きで世界6都市で企画。いずれも15分ほどのツアーと質疑応答で構成されている。

オドー氏によると、パンデミック以降、同社のこうしたバーチャル体験ツアーに参加した人は1万人以上。料金は個人向け10ドルからグーグルやシスコなど法人向け1000ドルまで様々だ。バーチャルツアーで売上が大幅にアップした訳ではないものの、ガイドの給与の一部をまかなったり、ウォークス社が過去のツアー参加者、さらに未来の潜在顧客とのつながりを維持する上では有益だという。

先ごろ、ツーリズム・マーケティング・エージェンシー(TMA)が2500人を対象に行った調査によると、パンデミック下でバーチャルツアーを実施したツアー会社のうち、「多くの」売上を得たとの回答は、全体の14.8%にとどまった。一方、同39.3%は、バーチャルツアーは売上には貢献しないが、自社ブランドの認知度アップには役立ったと答えた。

「(バーチャルツアー参加者のうち)数パーセントでも戻ってきて、当社ツアーに参加してくれるなら、その分、グーグルなどに支払う広告コストを省いて集客できることになる」とオドー氏は指摘する。

「参加者と良い関係が構築できたのは、満足してもらえたから。将来、その効果が配当をもたらしてくれればと期待している」。

やがて国境が開き、海外旅行者数が再びパンデミック以前のレベルに戻るころ、バーチャルツアーは、旅行前のプランニング、あるいは旅行後の追体験といった商機が拡大しているのではないかと考えている。

「予約を入れる前に、まず当社でバーチャル体験をしてイメージをつかんでもらう。その後、実際に購入へと進んでもらえれば、バーチャル体験分のコストは吸収できるので、実質無料にできる」とオドー氏は話す。

また「当社の場合、バーチャルツアー参加者の多くは、過去に同じガイドと一緒にツアーを歩いたことがあり、みなさんガイドとの再会を喜んでいる。このことから、実際に現地を旅行した後に、バーチャル体験を楽しんでもらう方法もあると思うようになった」(同氏)。

一方、アムステルダムを拠点とするティケッツ(Tiqets)では、同じくオンライン体験ではあるものの、異なるアプローチを試みている。とはいえ、パンデミック収束後も、バーチャルな手法が選択肢の一つとして支持されるとの見方は共通している。

ティケッツでは、パートナー施設の協力を得て、ハロウィーンやバレンタインデーなど、特定のテーマに即した一度限りのバーチャル体験を企画し、博物館やアトラクション施設の内部を案内している。

同社によると、これまでに55か所の施設がイベント会場となり、計2万1000人が参加。いずれも料金は無料だ。

「こうした特別キャンペーンの趣旨は、閉鎖中の施設と、自宅に閉じ込められて、旅行したくてウズウズしているのに家を出られない人々をつなぐためだった。そしていつか旅行できるようになった時のために、インスピレーションを得てもらうこと。またB2Bの観点では、各施設のブランド力を維持する狙いもあった」と同社のアメリカス地区担当ディレクター、ダニエル・ハケット氏は話す。

ハケット氏はバーチャル体験のあり方について、実際に博物館や観光施設を訪れる体験を再現することよりも、ユニークで面白いコンテンツ提供に力を入れるべきだと指摘する。

「バーチャル・プラットフォームだからこそ可能で、実際に体験するのは難しい内容を目指している。その方が、参加してみたいという気持ちになる」と同氏。

「例えば、ニューヨークのメトロポリタン美術館は、まだ一般公開されていない展覧会の一部を少しだけ見せてくれた」。

ティケッツでは、今後もパートナー施設でのバーチャル体験企画を継続する予定で、こうしたイベントのマーケティングに、フェイスブック・ライブやインスタグラム・ライブなどを活用することも検討しているとハケット氏。ただし商品化して売上をたてる計画はない。

「実際に現地を訪れて、人と人が接する体験のかわりになるものは想定していないし、マネタイズも考えていない。旅行前はもちろん、できれば旅行後にも、人々がこうした場所に関心を持ち続けてくれるような仕掛けを、我々なりに工夫している。だが実体験の替わりになるとは思っていない」。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Why virtual tours and activities will stick around after the pandemic

著者:ミトラ・ソレルズ

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