世界に選ばれる空港へ、新東京航空局長に聞いた航空行政の最前線、グリーン空港から先進テクノロジーの導入まで

国土交通省航空局は8月末、2022年度予算の概算要求を行った。その柱は、コロナ禍からの回復に向けた安心安全な航空輸送の実現と需要回復に向けた対応、航空分野のグリーン施策の推進、航空イノベーションの推進。いずれも時代の要請に応じた航空行政だ。羽田や成田を含めて、静岡から東日本を管轄する東京航空局は、ポストコロナに向けてどのように日本の空を支えていくのか。元国際観光振興機構(JNTO)企画総室長で、今年7月に東京航空局長に就任した藤田礼子氏に聞いてみた。

東京航空局の主な6つ施策とは

東京航空局が監督する対象は、東日本36空港、100人以下の航空事業者、ビジネスジェット、使用事業者、ドローンなどの無人航空機などと幅広い。その業務は騒音対策、施設の維持管理、保守点検、空港整備計画の設計から、管制、運航情報の提供まで航空全般。レギュレーターとして、航空保安分野や航空運送事業、航空管制などに対する監査・指導も行う。

そのなかで、東京航空局として取り組む主な施策は6つ。まず、航空分野特有の施策として、東京オリパラの出入国を成功させること。プレイブックのもとでバブル形成が求められ、これまでにない難しい対応が求められたが、藤田氏は「概ねうまくいった」と評価する。

次に、首都圏空港の機能強化。羽田空港では、昨年3月から開始された新飛行経路の円滑な運用や将来的なJR東日本の乗り入れ、成田空港では2028年度末までに新設予定の3本目の滑走路の整備、B滑走路の3500メートルの延伸、それに合わせた新管制塔の整備などがある。現在は、コロナ禍で国際往来が事実上停止している状況だが、藤田氏は「将来を見据えたとき、必要になってくる整備」と位置づける。

時代の要請として実施する施策として、空港と航空機の双方での脱炭素化を進めていく。今年3月には「空港分野におけるCO2削減に関する検討会」が始まり、重点調査空港として、東京航空局管内では、北海道7空港、羽田、成田、静岡が選定された。また、2022年度概算要求では、航空分野のグリーン施策の推進として、機材・装備品などへの新技術の導入、管制の高度化による運航方式の改善、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進も盛り込まれた。

藤田氏は「空港からのCO2排出量は、全体から見れば大きくないが、海外からの玄関口として、世界水準をクリアすることで、選ばれる空港になる必要がある」との考えを示す。特に、羽田空港での先進的な取り組みへの期待は大きい。

また、自然災害への対応力強化も大きな施策のひとつだ、現在、空港全体としての機能保持および早期復旧に向けた目標時間や関係機関の役割分担などを明確化する「A2(Advanced/Airport)-BCP」の取り組みを進めているが、今後はさらにその中身を高度化し、空港のリスク対応力を高めていく。

このほか、東京航空局約1700人の職員の働き方改革も挙げた。「航空局での意識は以前から高いと思うが、リモートワークやテレワークも増やしていきたい」と明かした。

藤田氏はJNTOの前には成田市副市長にも就いたことがある先進技術で空港機能を高度化

新しいテクノロジーが次々と登場するなか、空港機能向上に向けた先進的な取り組みも積極的に推進している。そのひとつが、RNAV(アールナブ)ルートの設定。RNAVとは「aRea NAVigation」の略。航法精度の高度化によって、最短経路の飛行路を設定することで、航空量の増加に対応し、航空会社にとっては時間や燃料の節約などコスト削減につながるだけでなく、航空機からのCO2排出量削減にも貢献する。

昨年度は、函館、奥尻、利尻、丘珠の北海道4空港で導入。今年も8月12日に花巻で導入した。

また、東京オリパラに向けて、テロに強い空港整備として、保安検査機の高度化も進めてきた。具体的にはCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影型)の機内持込手荷物X線検査装置を導入。すでに主要国際空港では設置が進んでいる。

さらに、パラリンピックに向けて、空港のバリアフリー化を推進。藤田氏は「これもオリパラのレガシーになるだろう」と、その意義を強調した。

このほか、羽田と成田では、顔認証による搭乗手続き「Face Express」の運用も始まった。航空機に搭乗する旅客が所定の手続きで顔写真を登録すると、チェックイン、手荷物預け、保安検査、搭乗ゲートなど空港での手続きで、「顔パス」で通過または手続きが可能。スムーズな出国を促すだけでなく、すべて非接触で手続きが行われるため、ウィズコロナ時代の安心安全の空港機能として期待は大きい。

足元の支援と将来の需要拡大に備える施策を

昨年来、日本の航空事業者や空港は、新型コロナウイルスの影響による人流の激減で大きな打撃を受けている。藤田氏は「今年度に入り、厳しさは増している。昨年度からいろいろな対策を打っているが、来年度に向けてもしっかり対応していく必要がある」と危機感を表す。

政府は昨年10月、航空会社や空港ビルなどへ支援策として「コロナ時代の航空・空港の経営基盤強化に向けた支援施策パッケージ」を打ち出した。本局である航空局は、ネットワークの維持・確保として、着陸料などの空港使用料や燃料費の減免を実施し、資金需要の対応ではコンセッション空港に空港施設整備費用の無利子貸付、運営権対価分割金の年度超えの猶予、空港運営事業期間の延長など、次々と施策を展開した。

東京航空局としては、国有財産使用料の支払い猶予などを実施し、管轄空港などを支援している。

感染の長期化やデルタ株の蔓延などによって、航空分野に与える影響も変化している。そのなかで、東京航空局としては「その変化する影響に耳を傾けながら、次の政策を打っていく」考えだ。

国際線については、まだ先が見通せない状況が続いているが、藤田氏は、今後の復活に向けて「空港では検疫体制がカギになる」と話す。そのなでも、「ワクチンパスポートがとのように普及していくか。それが大きく影響してくるのではないか。現在は、自治体による書面での発行だが、デジタル化が進めば、さらに利便性は高まるだろう」との考えを示した。

国内線については、昨年の「GoToトラベル」事業の効果について触れ、「政府としては需要回復の手段は持っている。ワクチン接種が進むなか、感染を抑えながら、上手に需要を回復させていく方法を考えていく必要がある」との考え。空港会社などもPCR検査機関と連携して、検査環境を整えていることから、「PCR検査付きのツアーなども一案」と話した。

「人間は旅する生き物なので、いつまでも移動しないことはありえない」。ウィズコロナはしばらく続くと予想されるが、将来的には航空による人の往来は拡大していく。東京航空局としては「それを見据えて、必要な準備を続けていく」考えだ。

取材・記事:トラベルボイス編集部 山岡薫/トラベルジャーナリスト 山田友樹

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