消費者に選ばれるサステナブル消費とは? 関心高まる3つのトレンド、アルファ世代から広がる日本の市場

国際的な市場調査会社のユーロモニターインターナショナル社はこのほど、「データと事例から見るサステナビリティの注目テーマと世界の企業動向」と題したオンラインセミナーを実施した。同社が定点的に実施している「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ヘルスアンドニュートリションサーベイ(2021年)」を紐解いたもの。

これによると、コロナ禍をきっかけに消費者のサステナビリティへの関心は一層高まっており、特に「脱プラスチック」「食品ロス」「持続可能な調達」の3つがトレンドになっている。また、日本人のサステナビリティへの関心は、世界と比べると依然として低いものの、若年層はSNSなどを通じて当事者意識を感じていることから、中長期的には、日本でも企業によるサステナビリティへの投資が不可欠になると分析している。ウェビナーのポイントをまとめた。

増えるコンシャス・コンシューマー

まず、近年、増えているのが、「コンシャス・コンシューマー(課題意識の高い消費者)」だ。同社の調査によると、2021年、世界40カ国で「自分の選択や行動によって世界を良くすることができると思う」と回答したのは全体の57.1%に上り、2015年の45.1%に比べ、12ポイント増加した。また、有識者への調査でも、新型コロナウイルスによって今後消費者のサステナビリティへの関心が高まると考えている人が約7割に上った。

同社のシニアアナリスト・針谷望氏は、「現在は衛生対策といった目下の課題が優先され、サステナブル商品の開発遅延、使い捨てプラスチックの増加など、特に環境面での動きが鈍化している一方、一人ひとりの小さな行動が感染防止につながるとの意識も高まっている。この意識変化が今後、環境や社会問題といった世界が共有する問題に向かうことで、消費者のサステナビリティへの関心につながる」と分析する。

消費者意識の高まりは、企業活動にも影響をもたらしている。世界のESG投資残高、すなわち財務情報だけでなく、環境、社会、ガバナンスも考慮した投資残高は、2012年の13.3兆ドルから2017年は30.7兆ドルと、約2.3倍に伸びた。日本でもGPIS(年金積立管理運用独立法人)が2017年にESG投資を始めたことをきっかけに、ここ数年で大きく伸びている。サステナビリティへの取り組みは、海外だけでなく、国内における資金調達についても、一層重要なファクターとなってくる。

アルファ世代から広がる日本のサステナブル市場

もっとも、前述のように、世界の消費者の57.1%が「自分の選択や行動によって世界を良くすることができると思う」と回答したのに対し、日本は25.3%にとどまり、調査対象40カ国中、最下位だった。ただ、日本人のサステナビリティへの関心は、世界と比べると依然として低いものの、2016年の12.6%に比べると、大きく高まりつつある。

けん引しているのは、ミレニアル世代やZ世代だ。デジタルネイティブな彼らは、SNSなどを通じて世の中で起きている環境問題や社会問題に対する当事者意識が芽生えやすく、同設問に対する回答率もそれぞれ34.9%、30.2%と、ベビーブーマーら他の世代を上回った。

針谷氏は、2010年代序盤以降に生まれたアルファ世代のポテンシャルの高さに着目する。2020年度から始まった新学習指導要領前文には、将来的に持続可能な社会の創り手となることを求めるESD(Education for Sustainable Development)が明記されており、各学校で組織的、具体的に教育が取り入れられている。「アルファ世代を起点に日本のサステナブル市場は今後さらに拡大する可能性が高い」(針谷氏)。

世界の23%が肉の摂取を制限か

また、サステナビリティのなかでも特に、消費者の関心が高いのが、「脱プラスチック」、「食品ロス」、「持続可能な調達」である。OECD(経済協力開発機構)によると、世界のプラスチックごみ発生量は、1980年の5000トンから2015年は3億トンと約6倍に増加。このまま推移すれば、2050年には120億トンと、2015年の約40倍に増加するといわれている。もちろん、企業も手をこまぬいているわけではない。一例を挙げると、アメリカではプラスチック容器を回収・再利用する循環型宅配サービスが開発され、2021年には日本でもサービスが始まった。環境に優しいのはもちろん、デザイン性と利便性でも人気を集めている。

脱プラスチックに次いで関心が高いのが食品ロス。コロナ禍で外食を避ける内食、中食が増えており、外食・小売りとの協業によるフードシェアリング、捨てられるはずのものに付加価値を与えるアップサイクル商品、次世代垂直型農法などのテクノロジーの活用が進みつつある。

興味深いのは、環境意識、健康意識の高まりを背景に、プラントベース(動物由来の原材料を配合せず、植物由来の原材料を使用した食品全般)やオーガニック市場が拡大していること。同社の調査結果の一例では、世界の消費者の23%が肉の摂取量を制限しており、最大の理由は「より健康であると感じるため」だった。

こうした3つのトレンドから針谷氏は、「自分を犠牲にしてまでサステナブル消費をする人は少数」と指摘し、「今後、消費者に選ばれるためには、サステナブルなだけでなく、健康や価格面でのベネフィットを提供する必要がある。さらに、テクノロジーの活用や、業界や国を超えたパートナーシップで取り組んでいくことも、サステナビリティを推進していくうえで非常に重要になる」とまとめた。

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