
日本が過去最多の訪日インバウンド客を迎えるなか、セブン-イレブン・ジャパンでは訪日外国人の消費を取り込むための商品開発とマーケティングに力を入れている。どんな商品が注目され、店舗販売ではどのような工夫をおこなっているのか。このほど、同社は記者発表会を開催し、売上が急増している商品例とともにインバウンド対応を発表した。
SNSで、あっという間に売れ筋商品に
日本の日常生活に根差したセブン-イレブンの商品が、世界的な話題になったきっかけは、「たまごサンド」。2020年(2021年開催)の東京オリンピック時に日本を訪れていた海外メディアの記者たちが、そのおいしさをSNSで発信し、世界に知られるようになった。商品本部 地区MD統括部 総括マネジャーの鷲野博昭氏は、「たまごサンドはインバウンド商品の象徴的な商品」と振り返る。訪日客のことは意識せずに開発した、この商品の人気は今も衰えず、さらに付加価値を高めた商品作りも計画している。
フルーツでは、イチゴを使った商品の人気が高いという。2024年度までは期間限定の扱いだったが、地域のネットワークから協力体制を構築した結果、2025年度は年間を通してイチゴ商品が供給できる見込みがたっている。
フルーツと抹茶、わさびの商品も人気。手前2点は商品名にアルファベット表記を採用。「チョコっとグミ シャインマスカット」は最近の大ヒット商品同社では、日本語が読めない外国人に向けて、どんな商品であるかがひと目でわかるよう、パッケージの変更もおこなっているという。原材料や味などの情報については、英語表記を2018年から開始。2025年から、外国人にもローマ字読みで通じる人気商品を「わさび→WASABI」「抹茶→Matcha」というように、日本語表記のみだった名称からアルファベットに変更する。
オペレーション本部 オペレーションサポート部 オペレーション情報 副総括マネジャーの吉村浩司氏は、「若年層を起点に話題になると、客層が拡大し、販売が伸長してきた」という事実を重視している。そして、日本の若年層と訪日外国人が着目する商品は似通っており、彼らの消費傾向が大きな影響度をもっているという。
それまでの経験で得られた思い込みや決めつけを排除して、外国人や若者に売れるモノ・コト・仮説・発想・陳列位置・売り方・商品開発など、さまざまな要素を見直している。
オペレーション本部 オペレーションサポート部 オペレーション情報 副総括マネジャーの吉村浩司氏
インバウンドへの取り組みが、日本人の需要拡大にもつながる
訪日客の消費傾向は、国籍によって異なる。店舗でのヒアリング調査に加え、周辺エリアの環境変化もとらえ、売り上げを拡大する販売方法を考えているという。
最近のヒット商品「チョコっとグミ シャインマスカット」は、店舗での売り方を情報共有することで、大阪のある地区ではわずか3カ月後に売り上げが10倍以上に増加した。訪日客は、一度、SNSなどでヒットすると常に旅行者が入れ替わり購入するので、既存商品もしばらく右肩上がりの売り上げを維持できるという。
インバウンド客が訪れる店舗は、日本各地に広がっている。2024年はセブン-イレブン全店舗の99.4%で訪日客の決済が確認された。大阪の店舗からは、「売り場・品揃えにこだわった結果、商品認知が爆発的に広がり、訪日客だけでなく日本人にも、より多く売れるようになった」という報告が上がっている。吉村氏は「インバウンドへの取り組みは、結果として日本人の需要拡大にもつながる」と話し、今後も訪日客向けの販売・商品開発をおこなうことに意欲を示した。