サウジアラビア政府、観光産業の未来を再定義する国際イベント「TOURISE(トライズ)」設立、11月にリヤドで始動

サウジアラビア政府は、世界的な観光プラットフォーム「TOURISE(トライズ)」の設立を発表した。TOURISEは単なる国際イベントにとどまらず、観光産業の未来を再定義し、具体的な行動に結びつけるための取り組みを進める。今後、年次サミットやアワードを軸に、グローバルな観光産業の政策形成・投資・イノベーションのハブとして機能する予定だ。2025年11月11日から13日には、リヤドで初のTOURISEサミットが開催される。

写真:発表会見の様子。140カ国から約200人がオンラインで参加した。

産業の課題解決と未来の創造を目指す

観光産業は、成長分野でありながらも、経済不安や気候変動など、多くの課題にも直面している。TOURISEの会長となるサウジアラビアのアーメド・アル・カティーブ観光大臣は会見で、観光産業における創造性や革新が十分に活かされていなかったことや、コロナ禍では世界的な対応に一貫性が欠け、各国政府と民間との協議も十分でなかった点を指摘した。こうした現状を打開するためには、「対話」と「連携」が不可欠だと述べ、観光関係者が一堂に会し、課題や未来について議論し、政策を策定する場が必要だとしてTOURISEを創設した意図を示した。

TOURISEは単発のイベントではなく、通年にわたる包括的なプラットフォームとして機能する。具体的には、デジタル協働やワーキンググループ、国際機関との報告書発表などを展開。アル・カティーブ観光大臣によると、政策立案者や政府、民間セクター、NGOが一堂に会し、DMC、航空会社、空港、ホテル、モビリティ、テクノロジーまで旅行プロセス全体を網羅する。単なる議論や商談会などの取引にとどまらず、政策合意や策定を行う「グローバルサミットやシンクタンク的な対話の場」を創出し、産業を支える新たな政策作りに取り組む。

TOURISEの会長となるアル・カティブ観光大臣

観光産業のリーダーから成るTOURISEのアドバイザリーボードメンバーのひとり、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)のジュリア・シンプソン会長兼CEOは、「観光産業の進化と成功には官民が密接に連携し、共通のビジョンを持つことが不可欠」と述べ、TOURISEが観光産業の持続的発展に寄与することに期待を寄せた。

なお、会見では日本の観光産業にも言及。「訪問者数で爆発的な成長を遂げている」と評価する一方で、オフシーズンや他地域への分散が課題だと指摘。例えば、京都のオーバーツーリズムのような課題も、シンガポールのようにデジタルツインやデータ管理を活用することで混雑をコントロールし、持続可能な観光地運営が可能になると提案した。

WTTCのシンプソン会長兼CEO

TOURISEのジャン・フィリップ・コスCEOは、観光産業が成長している一方で、課題に向けた調整がなければ分断化のリスクがあると指摘。旅行者の期待や技術の進化に対応できる共通のアジェンダが欠如している現状を踏まえ、TOURISEは業界の未来のために運営方法を再構築し、新しい方向性を提案するとの意向を示した。特に、AIやスマートソリューションを活用した投資や革新的なパートナーシップを通じて、旅行体験におけるつながりや意味を生み出す新しい枠組みを提供したいと強調した。

TOURISEのジャン・フィリップ・コスCEO

11月には初のTOURISEサミット、アワード創設

2025年11月11日から13日、リヤドで初のTOURISEサミットが開催される。直前には、UNツーリズムの総会も行われ、100人以上の観光大臣級の政府関係者が参加すると見込まれている。また、会場には「イノベーションゾーン」が設けられる予定だ。このゾーンでは、AIや最先端技術、革新的なソリューションが体験型で紹介され、大企業からスタートアップまで、さまざまな規模・分野の企業が参加する。商談や情報交換の場にとどまらず、次世代の技術やサービスを「体感」できる場となることが期待されている。

さらに、TOURISEアワードも創設される。このアワードは従来の施設評価型の表彰とは異なり、持続可能性、テクノロジー、人材育成といった観点から、産業横断的に優れた取り組みを表彰する。例えば、自然や人への配慮、コロナ禍での雇用維持など、持続可能な取り組みを行った都市や観光地、AIや最新技術を活用して旅行体験を向上させた企業や団体が対象となる。

各国の観光・旅行業界とのパートナーシップ

各国の観光・旅行業界とのパートナーシップの可能性について、アル・カティーブ観光大臣は、TOURISEがグローバルなプラットフォームであり、世界各国との協力を歓迎する姿勢を示した。観光分野でも、既に国際的な影響力を持つサウジアラビア主催のLEAPテックイベントやFII(未来投資イニシアチブ)のようにあるべきとの考え。コスCEOは、「観光産業の課題は一国だけの問題ではなく、国ごとに違いはあるものの、グローバルな課題。各国との連携や多様なパートナーシップが不可欠だ」と述べた。

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