
トリップ・ドットコム(trip.com)は、2025年5月26日に上海でパートナー向けのイベント「ENVISION 2025」を開催した。そこに、スペシャルゲストとしてサステナブル旅行を推進する非営利団体「トラバリスト(Travalyst)」創設者の英ヘンリー王子が登壇。「アジア太平洋は、世界のサステナブル旅行を牽引していくモデルになりうる」と話した。
「トラバリスト」は世界大手OTAを中心に2019年に設立。トリップ・ドットコムはその創立メンバーの一社。サステナブル旅行に関するさまざまなテータを共有している。
ヘンリー王子は、「20年以上前から、ツーリズムは環境と文化の源であり、前向きな変化をもたらす触媒になりうる産業と認識していた」と話し、トラバリスト設立の背景を説明した。当初はトリップ・ドットコムをはじめ、大手OTAなど5社だった参画企業が、現在は13社まで拡大。「トラバリスト参画企業は、旅行の力でより回復力の強い世界をつくるという共通の目標に向けて活動している」と力を込めた。
また、サステナブルはモラルの問題だけでなく、ビジネスにとっても重要と指摘。気候変動は、環境問題だけでなく、その対策に世界で毎年多額の費用がかかっていることから、ビジネス的な危機でもあると警鐘を鳴らした。
そのうえで、アジア太平洋は世界最大の旅行市場で、今後も旅行者が増加していくと予想されていることから、「サステナブル旅行を牽引するモデルになりうる」とした。
サステナブル旅行を呼びかけるヘンリー王子(右)とトリップドットコム・グループのジェーン・サンCEO(報道資料より)ヘンリー王子は、サステナブル旅行について、自然環境への配慮に加えて、地域コミュニティの保護も訴えた。旅行者が地域のユニーク体験を求めるようになった今、「地域コミュニティは、その独自文化の保護に関心があり、地域の人たち自ら観光を取り込んだ新しいスタイルを模索している」と指摘。一方で、38%の旅行者が旅行計画の際に地域の文化への影響を考慮すると回答したトリップ・ドットコムの調査を引き合いに、「旅行者も訪問先を支援する意識が高まっている」と新しい傾向に期待を込めた。
「我々は、我々の生活の基礎である経済とコミュニティを守っていくために、観光をより回復力の強い産業にしていく必要がある」とヘンリー王子。「最も大切なことは、価値観の転換」と呼びかけた。
トラベルジャーナリスト 山田友樹