日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)は2025年6月4日、第34回通常総会を開催し、2024年度事業報告、収支決算、2025年度事業計画、収支予算が承認された。
会長の大畑貴彦氏は冒頭挨拶で「OTOAの存在意義は『安心・安全の旅』と『良質なサービスの提供』」と述べ、「世界のビジネスパートナーとの協調や理解促進は一朝一夕にはいかない」と、OTOAの役割を強調。日本人の海外旅行の回復が遅れているが「日本のプレゼンスが低下する中にあっても、安心・安全な海外旅行を安定的に提供し続け、旅行業界が健全に発展するための活動を継続していく」と話した。
さらに、観光庁等による海外旅行の促進については「何年も前からこの話をしている」と言い添えながら、「より即効性のある施策の検討と、それを実現するマイルストーン等の提示が必要」とし、「スピード感を持って取り組むことを強くお願いしたい」と述べた。
来賓挨拶では公務の都合で欠席となった観光庁観光産業課の羽矢憲史氏のメッセージを貴田晋氏(旅行業務適正化指導室長)が代読。「日本人の海外旅行がコロナ前の水準に回復するには、取り組みの強化が必要」との認識とともに、外務省や日本旅行業協会(JATA)と海外旅行促進策である「もっと!海外へ 宣言」を発出したことを紹介し、「関係者と連携して海外旅行の促進をしていく」と述べた。
OTOAではこれまで、事業者間取引の適正化・グローバルスタンダード化に取り組んできた。OTOA会員に対する状況把握を目的としたアンケートを継続して実施し、都度、JATAにその結果とともに支払い早期化の要請を続けたところ、3年目の2024年度はJATAが結果を踏まえ、会員企業に対して、JATA会長名で対応改善を促す要請文を添えてOTOAからの要望書を紹介するといった、一歩踏み込んだ形での対応がされた。
さらに2024年度は、海外バス会社に対する安全運行調査の共通フォーマットを作成し、JATAに導入を要請。これは、海外でのツアーバス事故を機に、大手旅行会社から安全調査の実施要請が増えたことを受けたもの。各社独自の調査票への対応が海外バス会社の負担となるため、日本マーケットを敬遠する動きにつながらないよう、共通フォーマットでの対応を提案しているという。
これからのツアーオペレーターへ転換
2025年度は、これらの取り組みを継続するとともに、ツアーオペレーターの将来像を示し、その実現に向けた施策を検討・実行していく。具体的には、テクノロジーの進化への適応、顧客ニーズの多様化への対応等で、AIや自動化技術などのデジタルスキルやデータ分析能力の向上や、旅行の個別化傾向に対応したよりパーソナライズされたサービスの提供に向けた対応力の向上などに取り組む。
一方、総会では2026年度からの年会費の引き上げが承認された。OTOAの財務状況は厳しく、4年連続赤字計上となっていることから、財政基盤の強化を図る。あわせて2025年度の事業計画では、インバウンドの好調な推移を踏まえ、全国の旅行サービス手配業者にインバウンド団体保険制度を訴求して賛助会員への加入促進を図り、財政基盤の安定化につなげる考え。OTOAがインバウンド業界に果たす役割も、具体的に検討するとしている。
なお、2025年度は役員改選期で、12名の理事・2名の幹事全員が再任された。会長の大畑氏と副会長の荒金孝光氏(メープルファンエンタープライズ代表取締役)、専務理事の遠藤洋二氏も再任。もう1人の副会長には、ミキ・ツーリストの櫻井隆文氏(取締役執行役員営業本部長)が選任された。
新たに副会長となった櫻井氏は「10年、20年先にツアーオペレーターがどういう業態になっているか。次の世代に向け、何をしなければならないか」と述べ、意気込みを示した。
大畑氏も「10年、20年後、事業を継続するために今が一番大切な時期」と話した。国の海外旅行促進の施策にも期待したいところだが、大畑氏は、観光庁から「2024年の出国者数1300万人のうち、どれくらいが旅行会社経由でツアーオペレーターの仕事か」と聞かれたことも明かした。「厳しい話だが、議論の中にOTOAも入れてほしいと話した。OTOAはJATA以上に海外旅行を担っていると自負している」と話し、アピールしていく考えを明かした。