
エアビーアンドビー(Airbnb)が立ち上げた非営利団体Airbnb.orgは、日本で全国的な災害対策プログラムを創設した。同組織はこれまでも、災害時にエアビーのリスティングを避難先として提供する支援を行ってきたが、将来の災害に備えて事前に体制を整える取り組みは世界初の取り組みとなる。
プログラムパートナーとして、「ピースボート災害支援センター」「ジャパン・プラットフォーム」「ピースウィンズ・ジャパン」の災害支援団体が参画する。
メディア向け説明会で、Airbnb.orgエクセゼクティブ・ディレクターのクリストフ・ゴーダー氏は、世界初のプログラムを日本で立ち上げた理由を「日本は自然災害が多い一方で、防災対策プログラムが進んでいる国」と説明。また、能登半島地震で被災者支援を行った際に、事前の体制づくりの重要性を認識したという。今後、日本での取り組みを先例として、オーストラリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ブラジル、メキシコ、米国で同様のスキームを立ち上げる計画だ。
Airbnb.orgは4年前に設立された。エアビーなどからの寄付金で運営されているが、エアビーとは完全に独立した組織となっている。これまで、エアビーのプラットフォームを活用し、自然災害など困難な状況に陥った人の一時的な緊急避難先としてホストをつなぎ、全世界で25万人以上に対し160万泊分を無償で提供してきた。今年1月のカリフォルニアでの山火事や今年2月の岩手県大船渡市での山火事でも支援を行った。
プログラム活用の仕組みは、まずAirbnb.orgと連携支援団体が平時から連携。Airbnb.orgはAirbnbホストに対して被災者受入協力を呼びかけ、連携支援団体は災害発生時に避難場所が必要な被災者を特定する。特定した避難者情報を共有するAirbnb.orgが、避難者に対して滞在先を予約できるクレジットを付与。避難者はそれを活用して、エアビーのプラットフォームで宿泊先を予約する。滞在費は、Airbnb.orgが寄付金を基に支払う。この際、仲介料は免除される。
Airbnb.orgでは、この仕組みを災害が発生し、支援の必要性が確定した後24時間以内に緊急避難先となる宿泊施設を提供していく。対象は47都道府県の選定地域。
なお、この仕組みは、被災者だけでなく、被災者の支援者も利用することができるという。
世界初となる災害対策プログラムの意義を強調するゴーダー氏。空き家対策が支援者支援にも
この新しいプログラムについて、ピースボート災害支援センター事務局長の上島安裕氏は、「避難所のキャパシティ問題を解決する一つになる。また、災害関連死を避けることにもつながる」と期待を寄せた。また、ジャパン・プラットフォーム事務局長の亀田和明氏は、能登半島地震での経験に触れながら、「被害者の支援者にも宿泊施設の提供が可能なことは大変ありがたい」と話した。
さらに、ピースウィンズ・ジャパン「空飛ぶ創作医療団”ARROWS”」プロジェクトリーダーの稲葉基高氏は、地方で増加している空き家について触れ、「空き家を利活用すれば、災害時には被災者支援として役立つ。それは地方創生にもつながる」と続けた。
ゴーダー氏は、エアビーでは一般家庭が宿泊先となることから、「通常の生活のような避難生活が可能になる」と話す。滞在期間は最長30日間。日本の住宅宿泊事業法では年間180日ルールがあるが、避難生活が長期に及ぶ場合について、ゴーダー氏は、「その時の状況によって、自治体などの対応で長期的な滞在ができる環境が整うことを願う」と話した。また、「これはスタートにしか過ぎない」としたうえで、将来的には「ボランティアや自治体職員の受け入れもあり得る」との考えを示した。